映画部活動報告「アド・アストラ」
「アド・アストラ」観ました。
「地球から遥か32億キロ離れた、太陽系の彼方で消息を絶った父。だが、父は生きていたー人類を滅ぼす脅威として。人類の未来を掛けた"救出”ミッションの行き先はー」
(公開前に入手したチラシからそのまま抜粋)
ジェームズ・グレイ監督作品。ブラッド・ピット主演&プロデュース作品。
宇宙旅行が身近な存在になっている近未来。宇宙飛行士+宇宙工学エンジニアのロイ(ブラッド・ピット)。危険な任務に従事しながらも、その精神は常に冷静沈着。
ある日軍上層部より呼び出されたロイは「君の父親は生きている。」と告げられる。
ロイの父親クリフォード(トミー・リー・ジョーンズ)。偉大な研究者として活動していた父は、約20年前地球外生命体の調査の為に宇宙に向かって出発し、そのまま帰ってこなかった。
最近宇宙から不定期に届く、主に電気系統に影響を及ぼす危険な波動=『サージ』と呼ばれる衝撃波。それは危険物質の実験『リマ計画』を主導していた、遥か彼方に生存している父の仕業であり、宇宙から地球を攻撃していると。
宇宙から父を連れ戻してこいという指令。
宇宙で働く父の背中を見て育ち。その憧れから自身も宇宙に関わる仕事を選択した。
父を失った痛み。それをそっと胸に収めてきた。尊敬していた父が実は人類にとって脅威となる存在になっているとは。
地球から月。火星。そして遂には冥王星まで。ロイの父を探す旅が始まる。
『ゼロ・グラビティ』『インターステラ―』近年の宇宙を題材にした作品の映像の美しさ。「映像技術ってここまで来ているのか…。」しかもそれは新しい作品が生まれる度に塗り替えられる。そう思うと「最早こういう宇宙の映像は当たり前になってきているんだな。」というクオリティ。(美しい…けれど目新しい表現は無し。)
予告編と、事前に何となく想像していたストーリー。
「地球外生命体探索の為宇宙に飛び出したクリフォード。そこで危険物質の実験『リマ計画』を陣頭指揮していた彼は精神を病み。マッドサイエンティストと化した彼は地球への攻撃を仕掛ける。」または「地球外生命体と遭遇したクリフォードは人体を改造され。人格も崩壊。最早生ける狂気となった彼は地球外生命体代表として地球へ攻撃を始める。」そこへ父を訪ねて三千里(里という単位がどんなもんかとっさに分かりませんが。多分もっともっと距離がある)、はるばる地球からやって来た息子のロイと対面。
どんちゃん騒ぎの死闘を繰り広げた結果、宇宙の藻屑となった父クリフォード。そしてそんな藻屑に背を向け、地球に帰るロイ…。
~みたいなのを想像していたんですが。まあ遠からずみたいな部分も無くはないですが…違いました。
「内向的な作品だな。」「宇宙という壮大なスケールの舞台を選択した割には、一個人の心理描写を延々と描くという…マクロでミクロな作品。」
「内向き過ぎる。暗い。鬱映画。」「っていうかこれ、宇宙でやる必要…。」思わず溢れ出した映画部部長と当方の感想。
冒頭。「ここどこ?」みたいな大気圏外にある、長~い鉄塔みたいなところで修理?作業をしていてサージを食らったロイ。
一気に急降下する中でも冷静に救命パラシュートを開き、無事地面にたどり着いた。(大気圏外から体一つで落下したら死ぬと思う。体がバラバラになるか発火するかとかで…)
地球から宇宙に向かうにあたってまず向かった月。月は太陽系の他の惑星に向かう為のターミナル駅のような存在になっていて。けれど月は治安が悪く。移動する間、暴漢に襲われるロイと同行者トム(クリフォードの友人。ここであっさり死亡)。ここでの月面カーチェイス。
月から火星に向かう途中。危険信号を流していた他国の宇宙船があって。救出しようと船内に入ったロイ達が遭遇した脅威。
~位ですか。アクションやびっくりするような衝撃があったのって。後はひたすら物憂げなブラピの表情アップ。そして執拗なカウンセリングシーン。
常に冷静沈着なロイは心拍すらもコントロール。脈が80?より上がった事がないと。「それは徐脈なだけやろう。心臓の刺激伝導系の病気かもしれんし、24時間ホルター心電図検査をお勧めする。兎に角精神力で脈を制御する等不可能。」真顔で否定する当方。
精神が安定しているからこそ、過酷で孤独な宇宙空間で過ごす事が出来る。日中何度も繰り返されるカウンセリング(生体モニター?でバイタルを測定しながら、スピーカーの前で機械音声と単純そうな会話をする)。「あなたは正常です(言い回しうろ覚え)」みたいな太鼓判を押してもらいながら宇宙生活を継続させる。これまでカウンセリングを難なく通過してきたロイ。
けれど。決してロイに心が無い訳ではない。かつて宇宙へ消えた父。置き去りにされたと心に傷を負った自分自身。愛していた妻イブ(リブ・タイラー)との破局。そういう傷を隠すのが上手かっただけ。
けれど。火星に到着し。火星での任務やリマ計画の実態。父への思い。宇宙軍の思惑などを聞くにつれ、ロイの精神はほころび始める。
公開初日の9月20日。金曜日。
仕事終わりに鑑賞した当方。「はっつ。今意識を失っていた。」余りにもしんみりとした展開を繰り返す静寂の世界。何度も意識を消失。なのでこの作品を語ろうにも全体的にふんわりとした印象が否めなず。レギュレーションが分からない部分が色々あって(言い訳)。
正直、火星のあたりなんて最も夢うつつ。「精神的に不安定と診断された時に入れられる回復室。あれ発狂するやつやな」とぼんやり思ったり。
「危ねえ。ロイの奴、宇宙軍の言う事聞かないぜ。」火星で初めて上層部に楯突いたロイを見限って。とっととクリフォード奪還に向けて冥王星に向かおうとしたロイの仲間。彼らは月から火星まで一緒に行動を共にしてきた仲間なのに。
「ロイよ。わざとじゃないにしてもそれは父親と同じじゃないか。」
ネタバレしますので一体何が起きたのか伏せますが。ここでぐっとテンションが下がった当方。
「この親にしてこの子あり。結局あんたたちは一緒なんやって。自己憐憫が激しくて自己中心的。どんだけ遂行な任務してんだか知りませんけれどさあ。他人を破滅させて。勝手すぎる。」
最終決戦も「それ、宇宙でやる意味ある?」という実も蓋もない突っ込みを入れる当方。
「そもそもほぼ物資のない宇宙空間でどうやって20年以上も生きてきたの?『オデッセイ』案件?それでもこの期間は無理。地球から何らかのアシストが無いと生存維持出来ないやろう。それを打ち切ればよかったんじゃないの、宇宙軍よ。具体的にはクリフォードの宇宙船やラボの動力を遠隔で強制終了させるとか。」「前人未踏の遥か彼方の宇宙空間に身を於いた中年は、地球を攻撃するパワーよりも先に体力を奪われて死ぬやろう。」ぶつぶつ文句が止まらず。
結局「おうちへ帰ろう」という着地。「一人はよくない。仲間って大切だぜ(言い回しうろ覚え)。」としたり顔で語るロイに「どの口が言うか!」と脳内でチョップ食らわせる当方。
ああ多分。体調が万全でしっかり睡眠を取って。そういう状況でしっかり鑑賞すれば。違う感想にたどり着くのかもしれませんが。
ところが。全く再挑戦しようと思わない。そんな『アド・アストラ』でした。