ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ロブスター」

「ロブスター」観ました。


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独身者が迫害される世界。パートナーが居ない者は、刑務官にあるホテル(矯正施設)に連れていかれる。そこでカップル成立しなければ「望んだ動物に変えられる」
猶予は45日。

独特な設定。映画館のチラシで見掛けた時から気になっていた作品。それが。

「『籠の中の乙女』の監督か!」
俄然テンションが上がる当方。

籠の中の乙女
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自宅敷地から、生まれてから一度も出た事のない、兄。姉。妹。
父親のみが社会と繋がっていて。
両親が教える、独特の言語ルール。世間とは全く異なる、彼等だけの常識。認識。外の世界は危険に満ちていると、子供達は信じたまま成人になり。
でも。姉は映画を知ってしまい。
完全な閉鎖世界の外側を知ってしまった彼女は?

文章化したら、暗い話ですが。ですが、これが終始乾いた雰囲気で。暗くない。そしてこれ、全く説明無しで進むんですね。

「これぞ変態映画だ…。」

観客達を無理矢理その世界に引きずり込んで、そして不親切に置き去りにする。
人によっては訳がわからんと言う、好き嫌いのある話ですが。…当方は大好きでしたね。

どんなシュール世界を今回は見せるのかと、わくわくして行った訳ですが。

「全てに於てスケールが上がった。」

キャスト。分かり易さ。そして世界観。

前と比べて、説明とかもしちゃってますからね。

結婚生活の唐突な終焉。主人公はまさかの近眼の間男に妻を奪われ。
即座に彼は矯正施設に送られる。唯一彼が持つ事を許されたのは犬。
しかもそれは数年前には兄であった犬。

コリン・ファレル!」セクシー路線である男優とは思えない、下腹しっかり系の主役。…でもねぇ…正直、当方は今回のコリン・ファレル、大好きです。しっかりエロくもあると思いますよ。


施設で知り合う男たち。
ここでは私物は一切取り上げられ(犬は除く)男女共同じ服を着せられる。

つまりそれは「あのスニーカーを穿く彼…好き」という「センス云々では異性に惹かれない」世界で。

期限をはっきり決められた婚活。しかも命がけ。

カップル成立したとて、その後「二人部屋で生活」「その後二人でヨットで生活」「二人の間に何かあれば子供が提供される」といつまでも逃げられず。その過程を経てやっと娑婆に出られる。…そのカップリングで。

性衝動を高められ。カップルのメリットを散々刷り込まれ。その場から絶対に選ばなければいけない相手。

またね…。その矯正施設でつるむ、愛すべきボンクラ3人組。


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こんな閉鎖空間の抜け道。「一日一回の狩り」


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矯正施設に併設された?森。そこに生息する「独身者」。
彼らを麻酔銃で撃つ。彼らを生け捕りにすれば、一体につき一日動物になるリミットが延びる。

そんな極限状態でパートナーを見つけるには?

正直、主人公。そんなにせっぱ詰まっては見えなかったですけれども。
彼の希望する「ロブスター」も「品がある。100年は生きる。落ち着いているし。性生活も出来る」という。
…選ぶ動物。当方なら「トキ」なんですが。(その理由は驚くほど同じ様なもの。)

そうやって無理矢理誰かを見つけようとして。大切なものを失って。そして逃げ込んだ森。

(あの「感情が無い女」が「籠の中の乙女」の長女の役者さんと知った時の胸熱)

そこに潜む。かつては狩っていた相手。「独身者」

おそらく彼らも同じ。同じく社会のシステムから零れ落ちた。そして集まった彼らもまた、彼らのルールを作った。

「一生独身で良い。だから恋をするな。」

あの矯正施設と同じ。一切の個性を無くし。ただ集団で動くだけ。そこに特別な繋がりを持つなと。
何てことはないと承諾した主人公。なのに。

皮肉にも、そこで見つけた「運命の人」


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レア・セドゥ。近年売れまくってきていますがね。この「ドSで見下ろす視線」「血も涙もない冷酷な口調」分かっている。分かっていますな。この監督。これが今の彼女の正しい使い方ですよ。


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独身者を率いるレア・セドゥと矯正施設の、表裏一体に繋がっている様。

レア・セドゥが街に住む両親に会う為に連れられる、主人公とその想い人。

両親が自宅で楽器演奏し。そのムードに酔ったと見せかけて(ある意味酔って)いちゃつく二人。その曲「禁じられた遊び」ベタ。究極のベタ曲。そしてキレるレア・セドゥ。笑う当方。

淡々としながらも、分かりやすい。随分と分かりやすくなったブラックコメディ。

「もし。もしあの施設で出会っていたら。というより、街で普通に出会っていたら。」

でも。カップルであるべきとされた世の中で。必死に誰かを見つけようとする時。そんな時に、都合良く運命の人なんて見つけられない。…でも。

「運命の人はいつ現れるか分からない」

幸せなはずなのに。今度は世間とは全く逆のレギュレーションが自分たちを苦しめる。


さあ。ここからは「籠の中の乙女」と同じ。また「我々を連れまわして、気づいたら一人になっている」ラストなんですがね。

映画のラストシーンからのエンドロール。暗転からの劇場。

皆さまのリアクションに、満面の笑みがこぼれた当方。


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この世界に。囚われるがいい。この世界に。ご一緒に。