ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ヴェノム」

「ヴェノム」観ました。
f:id:watanabeseijin:20181105190838j:image

『MARVEL史上最凶のダークヒーロー誕生!』『最も残虐な悪』『俺たちは遂に本当の悪を目の当たりにする』等々。煽りにあおっていた予告編。

「MARVELの言うダークねえ~。」そう思いながらも。何となく気になって。公開初日11月2日金曜日がまさかの泊まり勤務明け。初回鑑賞してきました。

 

敏腕記者、エディ(トム・ハーディ)。弁護士の彼女アン(ミシェル・ウイリアムズ)とラブラブな日々。

とあるきっかけから。「ライフ財団が浮浪者をターゲットに非人道的な人体実験を行っている。」という情報を入手。体当たり取材を試みるエディ。結果玉砕。

職も彼女も失ったエディ。数か月後。心身及び経済的にも困窮状態のエディのもと、ライフ財団の女博士ドーラがひっそり近づいてくる。

「数か月前の自社ロケット惑星探査で地球外未確認生物(シンビオート)を入手した。」「ライフ財団はシンビオートと人類を融合させ、宇宙侵略を企んでいる。」「ライフ財団の非人道的人体実験は真実だ。」

ドーラ博士の言葉を信じ。再びライフ財団に忍び込むエディ。そこでシンビオートに寄生されてしまい。

 

「『ヴェノム』観た?」月曜日の昼休憩。職場後輩(B級映画には一切見向きはしないけれど、アベンジャーズを初めとするMARVEL作品やカーチェイス系映画は観に行く後輩男子)におもむろに声を掛けた当方。

「いや。まだっす。っていうかあれってどんな感じなんすか。」コンビニ弁当を食べながら無邪気な声を出す後輩を背に、ゆっくり『徹子の部屋』を眺めながら答える当方。

 

「『ど根性ガエル』…かな。」

 

MARVEL屈指のダークヒーロー。人類に寄生し。人類を食い尽くす。そんな地球外生命体、シンビオート。その名はヴェノム。

バッキバキに動けるトム・ハーディを主役に置いて。極悪非道な所業。人外なアクション!最早人類は捕食されるばかりなのか!…そんな話だと思っていた。そんな時が当方にもありました。

 

なのに。なのに「ピョコン ペタン ピッタンコ! ピョコン ペタン ピッタンコ!』広川進氏の、冒頭から想定外の音程と音階のあの音楽が流れ続けた当方の脳内。

 

まだ公開から日も浅い。あまりあれこれ言うと観る気が失せてしまう。「あ。そうなんすか。ぴょん吉…」と士気を失った、職場後輩の様な被害者をこれ以上出してはいけない。なので。当方の言いたいことは、オブラートに包みながらシュッと今回は締めたいと思います。

 

「正直クールでちょっとホラーなストーリーを想像していた。人類に寄生する地球外生命体…ズバリ寄生獣みたいな。それをMARVELが実写でやるなんて。」「けれど実際に蓋を開けてみればど根性ガエル。」「ヴェノムが想像以上に人情派だった。」「はぐれシンビオート。人情派。」「あのデコ眼鏡ヒロシとTシャツカエルぴょん吉みたく。下手したら軽口叩きながらのラリー。」「コレジャナイ。当方の思っていたヴェノムはコレジャナイ。」

 

敏腕記者エディ。社会に鋭いメスを入れて。お茶の間の皆様に真実をお届け…その知的好奇心と探求心から招いた災難。結果『ヴェノム』との共生を余儀なくされる。

 

「ところでエディは何故ヴェノムとすんなり融合出来たんですか?宇宙から持ち帰ってライフ財団で実験をしていた時。数々の人間をヴェノムと同じ檻に放り込んでいましたが。全然上手く融合出来ていなかったじゃないですか?それとも…場数を踏んで慣れたから融合出来る様になったと?」ヴェノム学級会で。スッと挙手して質問する当方。

 

「後あの。どうしても聞きたいんですけれど。ドーラ博士、どうなったんですか?」当方唯一のネタバレ。エディにライフ財団の実態を暴露した事で、ライフ財団のトップドレイクにお仕置きとしてシンビオートの檻に放り込まれていましたけれど。彼女、どうなったんですか?死んだ?…にしても、一切の描写無し。彼女、モブキャラじゃないはずなんですけれど。

 

人類は飽和状態。いずれ地球は滅びる。ならば人類の進出するべき場所は宇宙。宇宙で適応する肉体を持つためには、宇宙の生命体との融合が必要。ライフ財団のそういう理念。宇宙から持ち帰った『シンビオート』との融合を目論む日々。しかし。

 

人類が彼らを選んだのではない。シンビオートが人類を選んだ。

人類はエサ。地球はシンビオートにとっての楽園。寧ろシンビオートが人類を選んだ。

 

そんな壮大な食物連鎖の話…のはずなんですが。如何せん、話の進行がもったりし過ぎ。

 

112分の全編の内。体感時間ですが前半部分はもたもた。中盤からやっとエディとヴェノムのど根性コンビが動き出すんですが。如何せんそこまでが長い。長い。

 

「そしてねえ。暗い画面で黒い奴らがわちゃわちゃしていても。当方には見えないんよ。」「(後輩の乾いた笑い)」

「ミシェル・ウイリアムズ。可愛いけれど。流石にミニスカはキツイと思う。」

 

気付いたら文句しか言ってなくて。思わず言葉を飲み込んだ当方。

「何て言うかねえ。いっそ初めから『これはブラックスパイダーマンコメディです』って割り切れば愛させたかもしれないのに。変にクールでスタイリッシュな前振りで行ったから…。」もごもごと口ごもる当方。「そして散々言ったけれど。決してど根性ガエルを馬鹿にしている訳じゃ無いんだ。寧ろ好き。」「ど根性ガエルは好き。」

 

「どうも嵌れなかったなあ~。」どう言葉を見繕っても。そう言ってしまう。そんな『ヴェノム』。不完全燃焼。

 

「ところで。いい加減『MARVEL映画のエンドロールは劇場が明るくなるまでは席を立つな』って。認知されていないんですか?」

曲が途切れようとも。本当に灯りが付くまで立ってはならず。エンドロールの内容は言いませんが、こればっかりは大声で言いたい。そして返す刀でMARVELにも言いたい。

「それは本編でやれ!」

本当に…MARVELには一度ガツンと言ってやりたい。そう息巻く当方です。(何様だ)

映画部活動報告「search サーチ」

「search サーチ」観ました。
f:id:watanabeseijin:20181029075558j:image

『全編パソコン画面で展開される、異色のサスペンス作品!』

 

16歳の娘の失踪。

妻を亡くし。父親と娘の二人暮らし。けれどその関係は最近微妙…互いに仕事と学校ですれ違い。親子の会話はメールでのやり取りにとどまっていた。

ある日。「友達と勉強するから」と出かけたまま、帰らなかった娘。

初めこそ「いつもの事か」と高を括っていた父親。しかし夜間睡眠中、三回父親のスマートフォンへの着信を残したきり。ぷっつりと娘からの音信は途絶えてしまう。

娘の友達に聞けばいい?…娘の友達は誰だ?一体誰とどういう付き合いをしている?ー分からない。娘の事が全然分からない。

警察に捜索依頼を出し。それと並行して娘のSNSに片っ端からアクセスしていく父親。

次第に『見た事の無い娘の姿』が明らかになっていく…。

 

まず、冒頭映画館のスクリーン一杯に映し出される『Windows95』の待ち受け画面。その広々とした草原の左端下スタートボタンをクリックする所から物語は始まる。

デヴィットとパメラ。キム夫妻の元に生まれたマーゴット。マーゴットの成長を収めたフォルダー。幸せそのものの家族。なのに…妻パメラに次第に忍び寄る癌の影。一旦は抑え込めたけれど。再発。

キム家に起きた悲しい出来事。それを家族の動画やら、「癌」「克服」等の検索ワード。そして入院したパメラの「一時帰宅」「延期」等スケジュール帳を組み合わせる事で、近づいてきたパメラのお別れを表現する妙。そのうまさに唸る当方。

 

まあ。102分全編パソコン画面と謳っているので。パソコンの前に座る、主人公の父親の映像だけではなく。SNSを初めとする各種サイトのログイン画面やその実際、グーグルアース、スカイプや防犯カメラ等々。ありとあらゆる画面を組み合わせて構成。けれどそれがしっかりサスペンス然としていてハラハラさせてくる。

 

パソコンスキルが皆無の当方は、この『サイバーパパ』のやり方について「もっとこうしたらさあ!」なんて観点では一切語れませんので。今回は感想を二つほど書いて終えたいと思います。

 

『サイバーパパの恐怖』

父親デヴィットのパソコンスキル、怖すぎる。

愛する娘が失踪。もしかしたら危険な事態に巻き込まれているのかもしれない。気が気じゃない。その心中、お察しします…けれど。

この父親は普段何のお仕事をしているんでしたっけ?スカイプか何かで会議しているシーンもありましたし、IT系かなんかなんでしょうけれど。けれど。(当方の偏見ですが。マーゴット16歳って事はデヴィット30台後半~40台位?この年代でここまで柔軟にサイバー出来るもんなんの?)

FacebookTwitterInstagram。大手SNS皆やっているけれど、全てアカウント非公開。」その娘のアカウントを。次々パスワード解除し覗いていく父親。怖すぎる。

あまつさえ娘の動画サイトやチャット。そして電子バンクまで。そんなのも解除。閲覧。

「俺の知らないマーゴットがいる。」居るでしょうよ!16歳の少女が男親に言いたくない様な秘密持って何が悪い。(まあ…マーゴットも実名で害の無いアカウントばかりでしたから。これ、匿名でマニアックな趣味全開のアカウントとかやったら。そして親にそれを知られたら。万死に値する案件。)

そして娘のプライベートを散々見てからの「ちょっと待てよ?」というサイバー探偵っぷり。警察そっちのけでガンガン動きまくり。そして案の定担当ヴィック刑事から怒られ。

 

『携帯電話会社お客様サポート不在問題』

物語の進行中。「無能な警察やなあ。素人のサイバー探偵に出し抜かれまくってるやん。」そう思っていたので。最終の展開に「いやいやいや。それはそれでおかしいやろ。」「ワンマンにも程がある。」とずっこけた当方。とは言え。ネタバレはしたくないのでこの件はこれ以上追及しませんが。

 

「夜中三回父親のスマートフォンにマーゴットからの着信履歴。」「それ以降マーゴットからの音信不通。」

どうして携帯電話会社に連絡しないんですか?いくら何でも刑事事件なんやから、娘の最終場所特定出来るんじゃないんですか?

 

余談ですが。当方は昔酔っぱらって携帯電話を紛失した事があって。結局通勤電車の途中駅のトイレから出てきた事がありました。(一旦下車し、トイレを借りてそのまま弁当袋をトイレに置いてきてしまった。その袋の中に入っていた)

ご機嫌さんな状態でしたが。自宅で携帯電話を紛失したと気付いた時にはショックで酔いも冷め。慌ててパソコンを起動。GPSで携帯電話を探し出せると知り。それで捜索しながら携帯電話お客様サービスにも連絡。結局当該駅から発見に至りました。

 

つまりは。少なくとも娘が行方不明になる寸前、その電話発信をした場所位は特定出来るでしょうと。そして、娘が普段誰と通信していたのか。それ…分かるんじゃないんですか?通信記録や通話記録。話の内容は無理としても、色々分かるんじゃないんですか?(まあ。普通ならマーゴットのパソコン、警察に押収されて分析されるでしょうしね)

 

なんだか。新しい見せ方でしたし、確かに息つく暇もない。「もしかしてもしかして」とハラハラもさせるけれど。ふと立ち止まってみたら。「あれ?」と思う所もある作品。

 

ただ、当方が確実に言える事。

「当方がマーゴットだとしたら。そしてサイバーパパの実態を知ったら。例え父親と再会して親子の絆を取り戻したとしても…どこかで父親への恐怖が拭えないやろう。何しろ、SNSの鍵アカウントを突破する能力を持っているんやからな。」

お父さんは心配性。

マーゴットには真実を伝えないで欲しいです。(あ。でも父親にパスワード変更されているんやった。絶対気付くなこれ。)

映画部活動報告「若おかみは小学生!」

若おかみは小学生!」観ました。
f:id:watanabeseijin:20181029075402j:image

「『若おかみは小学生!』ああ…あの小学校の本棚に大抵あるやつな。」

 

9月。映画新作公開作品を調べていたら見掛けたこの作品。普段からアニメには造詣の無い当方。当方の近しい教育者からは冒頭の回答。当然スルー案件…でしたが。

 

「『若おかみは小学生!』やばい。」「これは持っていかれるやつ。」「観ないのは愚。」公開以降。当方の耳に飛び込む声、声。それも一つや二つでは無くて。

気になる…気になってきている。けれど最早朝イチ一回上映になり始めているし…そうやって二の足を踏んでいましたが。

満を持して。公開より一か月強経った10月終盤。泊り勤務明けで朝イチの回を観に行く事が出来ました。

前日の泊まり勤務は中々の激務。正直殆ど寝ていない状態でもありましたが。

 

「うわああああああ。これはあかんんんん。」

 

元々涙脆い当方。途中から涙が止まらず。最後の辺りなんて、嗚咽が出そうになって口にタオルを押し当てての鑑賞。結果這う這うの体で帰宅。

 

「何やこれ。小学生モノやと思って小学生の子供と観に行こうものなら、親が立てなくなるやつやんか!」「心が!当方の汚れた心が!打たれすぎて心破裂!」

 

若おかみは小学生!令丈ヒロ子著。2003~2013年まで講談社青い鳥文庫より刊行された全20巻の児童文学作品。

12歳の関織子(おっこ)。両親と三人暮らしであったが。交通事故で両親が他界。一人になってしまったおっこは祖母である関峰子に引き取られる。

花の湯温泉という温泉街で『春の屋』という小さな温泉旅館を営む峰子。ホスピタリティの高さから贔屓の客も多い春の屋。けれど。70代と高齢のおかみである峰子、中居一人、料理人一人という少人数体制故、存続について不安があった。

春の屋到着から直ぐ『ウリ坊』と名乗る幽霊と出会ったおっこ。ウリ坊の言葉に乗せられて峰子達の前で「若おかみになる」と言ってしまったおっこ。

かくして、おっこの春の屋若おかみ修行が始まった。

 

全20巻の物語を94分に纏めているので。話に遊びが一切ない。時間を確認する術はありませんでしたのであくまで体感ですが。冒頭10分以内には両親との別れ(しかもその交通事故のシーンが結構怖い)が描かれる。

その後春の屋に到着。ウリ坊との出会い。若おかみへの決心。未知なる力を持つ鈴鬼との出会い。新しい学校。そこで出会った花の湯温泉一帯を取り仕切る老舗旅館の娘秋野真月との出会い。そして新たな幽霊美陽の出現と、息つく間もなく主要人物達の駒が出揃っていく。

 

客寄せ能力も持つ鈴鬼に依って。春の屋に訪れる、個性あふれる客人たち。

彼等をおもてなしすることで、成長していく若おかみおっこ。

 

「~っていう話って知ってたあ?」「いや全然。ホンマに本棚に立っている光景しか知らんかった。」「おいおいアンタ。正直やな。」「知らんのに知ってるふりするのはおかしいやろ。」「おうう。その言い回し…流石血は争えんな…。」興奮して話す当方に件の教育者の悲しいリアクション。

 

流石児童文学と言ってしまってはあれですが。兎に角『悪い人がいない世界』。

そして主人公おっこがどこまでも真面目で一生懸命。

「何て言うか…きちんと大切に育てられた子なんやなあと思う。」

おっこから感じる育ちの良さ。

色んな出会いややり取りで落ち込んだり怒ったりもするけれど、自分に生じた負の感情に長くは囚われない。相手のせいにしない。

寧ろそんな感情を持った相手に「どうしてこんな風に思うのだろう。」「どうしたら相手の役に立てるだろう。」「私は何を出来るだろう。」と気持ちを切り替える。これは接客業、ホスピタリティの要。そんな考え方、大人でもなかなか直ぐには出来ない。

 

母親を亡くして落ち込んでいる、同じ年頃の少年。失恋した占い師。そして最後にやってきた、試練の家族。

 

「花の湯温泉のお湯は誰も拒みません。誰もが癒されるお湯です(言い回しうろ覚え)。」そう言って。湯治を薦め。そしてどうすれば客人が心からくつろげるのかを考え、提供し。そしてまた彼らの住む世界へ送り出していく。

 

「とは言え。貴方だって辛いやないの。」(涙声の当方)

12歳。小学生。両親を突然理不尽に奪われた。ガラッと変わった生活。何が若おかみだ。お手伝いだ。学校だ。そうわがままを言っても全然おかしくないのに…(尺の問題もあるのか)新しい環境で前向きに頑張っている。けれど。

 

そんなおっこが崩れそうになるシーン。先述の少年の前で自分の両親の事を言って飛び出した時。気晴らしにと誘われて、車に乗った時に襲われた恐怖。そして最後の客人。

 

「もっと大人に甘えなさいよ。」どうしても大人になってしまった当方はそう思ってしまう。辛い、苦しい、そう言ってもっと目の前の大人に甘えていいのに。

 

けれどおっこはその手段を選ばなかった。

 

「大切な人を亡くすとはどういう事なのか。」

別れがある程度覚悟出来る場合もある。けれど、おっこのように突然家族を失ったら?

心の痛みは時がいつか解決する。けれどそこまでに何度も押し寄せる感情。それは一体どうしたらいい?

 

おっこが子供で。そしてウリ坊や美陽という幽霊、謎の存在鈴鬼が見えた。彼等との日々を通じておっこが知ったのは、死者もまた大切な人を見守っている事。実際に触れる事は出来なくても傍に居る。けれどそれは永遠では無い。いつかは本当のお別れが来る。

 

「でもまたいつか会えるよ。」

 

花の湯温泉の神社。神楽のシーンで始まったこの物語は、ぐるっと回って神楽で終わる。あの時の両親の会話が全く違う意味で脳内に再生された時。そしてウリ坊と美陽が見せてくれた世界に。タオルを口に当てて泣いた当方。

 

本当は「花の湯温泉の中でも老舗秋好旅館の娘、ピンふり(いつもピンクのフリフリ衣装だからというあだ名)秋野真月は最高のライバル!そしてあのシーンでウォルト・ディズニー氏の格言を以ってくるセンス!」とか「アニメで眼鏡の度をきちんと描いた作品なんてレア!(おっこ父)」とか。語りたい事は幾らでもありましたが。どう考えても話が長くなるので泣く泣く割愛。

 

「これは何曜日かのロードショー待ちじゃなくてねえ。映画館で観た方が良いですよ!」

件の教育者だけでは飽き足らず。遂に職場の『小学生の女児を持つ母』にまで講釈を垂れ始めた当方。

 

「そして今週知ったんですが。何と公開が一日二回に拡大していました!」

映画部活動報告「ここは退屈迎えに来て」

ここは退屈迎えに来て」観ました。
f:id:watanabeseijin:20181029075320j:image

山内マリコの同名小説(デビュー作)の映画化。廣木隆一監督作品。

 

何者かになりたくて。東京に上京して10年。結局何も見つけられなくて地元に帰ってきた『私』を橋本愛が。元カレの『椎名』を忘れられなくて。結局地元で燻る『あたし』を門脇麦が。高校時代。皆の憧れだった『椎名』を成田凌が演じた。

 

2013年。27歳の私。

東京に行けば誰かに見つけられる。何者かになれる。そう思って、高校卒業後上京。

けれど結局何者にもなれなかった。そして地元に帰って。フリーライターとして食レポ記事を書く日々。

最近SNSを通じて再び連絡を取り合うようになった友人『サツキちゃん』。勢いづいた二人は高校時代の人気者、憧れの『椎名君』に会う約束を取り付ける。

 

2008年。22歳のあたし。

高校の時付き合っていた椎名が卒業後突然大阪に行った。一人残され。けれどどこにも行けなくて燻る日々。

椎名の取り巻きの中でも目立たなかった奴と惰性で寝るけれど。当然満たされる訳が無くって。

 

2010年。バイト帰りにファミレスでたむろう、24歳のあかねと南。

あかねは元アイドル。けれど今では『ヤリマン』呼ばわり。芸能界を引退し都落ちして帰ってきた。「今の私、くすんでない?」「もう嫌。早く結婚したい。」一方的に騒ぐあかねに対し「別に結婚とかいいや。」と受け流し続ける南。

 

2004年。高校三年生。

きらきらに輝いていた高校生活。サッカー部の人気者、椎名を皆が愛していた。

他愛もない放課後。椎名が初めて声を掛けてくれた。あの時二人で食べたハンバーガー。椎名と仲間達と。皆で地元のゲームセンターで遊んだ。

休み時間。渡り廊下で。二人で話した。

「椎名先輩に」椎名の妹に渡して欲しいと押し付けたラブレター。

「私は椎名君は苦手」そう言って。背伸びして大人のおじさんと付き合った。これは援助交際じゃない。お金なんてもらってない。私は周りの女の子達とは違う。同じ年の人気者の男の子なんかに騒がない。なのに。まさか。

 

「青春やなああああ~。」悶える当方。

 

最早中年のエリアに属する当方からしたら。18も24も27も。この作品に出てくる彼ら彼女らは総じて淡い青春。青春の権化。

 

学生時代。学年や学校の中。その狭いコミュニティー内で異常にモテる奴。確かに居た。

けれどそれはまあ…今思うと単純な理由で。顔がカッコいい。スタイルが良い。センスが良い。足が速い。大体そんな所。そして奴らは自信に満ち溢れている。

男女を問わず。目立つ奴には人が集まる。そうして満たされる承認欲求。「俺は(私は)イケてる。」おのずと生まれる自信と余裕。

そんなスクールカースト上位であった『椎名』。

椎名の恋人だった『あたし』。椎名に憧れていた『私』とサツキちゃん。椎名とは全然違うカーストに属していたけれど。椎名が気になってずっと見ていた新保。

 

「どれだけ輝いていたんだ。アンタたちの高校生活。」呟く当方。

 

四つの時系列がバラバラに入り乱れるので。暫くは「えっとこれは」と言い聞かせながら観ていた当方。(特に椎名の妹と2010年ファミレスパートは終盤まで「これはいるのか?」と思っていて…だからこそ、最後怒涛の畳みかけが来た時「OHOOO!」となりました)

 

ここは退屈迎えに来て

 

秀逸なタイトル。結局この一文が全てを表していたと思う当方。

 

「ここ」とは何処なのか。

 

つまんない。こんな田舎に居ては誰も自分を見つけてくれない。環境を変えれば誰かが自分を見つけてくれる。だから東京に出た。何かが変わる、そう思った。でも誰かにとっての特別に自分はなれなかった。特別?特別って何?

つまんない。結局この田舎から出られなかった。でも今更ここから出るなんて出来なくて。自分はこのままここで朽ちていく。

2013年。27歳になった『私』とサツキちゃんは『椎名君』に会う為彼の職場へと向かう(真面目な事を言うと大迷惑)。その途中。あの頃通った思い出のゲームセンターや母校に寄って。いやがおうでも蘇る、高校生の頃の記憶。兎に角キラキラしていた日々。その中心に居た『椎名君』。特別な人。自分にとって特別な人。

 

「危ねええ~。それ思い出がプリズム補正掛かっちゃってるやん。今椎名に会うのは危険!絶対18歳の椎名を超える訳が無いんやから!思い出は胸にしまって。その箱は空けん方が良い!これは年長者からの忠告だ!」そう騒ぐ当方。そして…溜息。

 

22歳のあたし。椎名が居ない日々がどうにもならなくて。けれど彼女は迎えを待たなかった。恐らく自分から飛び出していった。

 

24歳の二人。「今の私を救ってくれる人が欲しい!」けれどそれは決してゴールでは無くて。そんな一人をよそに。しっかりと確実なモノを掴んだ一人。

 

「当方の推測ですがねえ。「ここは退屈」と最も強く思ったのは椎名やったと思いますよ。」

無条件にモテていた高校生活。男女問わず常に自分の周りには人が居た。けれど高校を卒業した後。どうしていいのか分からなくなった。

どこに行けば良い?俺は何処に行けば良い?居場所は何処?誰か。誰か来て。俺を見つけて。誰か迎えに来て。

 

スクールカースト。けれどあくまでもそれは学校内でしか無くて。ならばその枠が外れた時。一体自分はどうしたらいい?

 

「結局、都合よく誰かが自分を見つけてくれるなんて殆どない。自分で歩いて行かないと。自分で見つけないと。時が経って振り返って。自分には何も無かったなんて本当は無い。」淡々と語る当方。

「そりゃあ人様に語れるようなドラマは無いかもしれないけれど。結局ここまでの選択は全て自分がしてきたんやから。いつかはそう言えるから。」

 

『茜色の夕日』を歌いながら歩くあたしに。『茜色の夕日』を泣きながら歌う新保に。泣けばいいと思う当方。しんどい。やるせない。切ない。会いたい。

構わないから泣いたら良い。泣いたって誰も迎えに来ないけれど。それが分かるのは当方が歳を取ったから。今はただ泣けばいい。

 

誰もに平等に流れる時間。青春の落としどころを付けていく登場人物達。

 

「ただ…あのプールのシーン。(ポカリスエットCM感!)そりゃああんなの、忘れられんよな。」

 

ところで。全編富山県ロケだったこの作品。思わず職場の富山県出身者に薦めてしまいました。是非とも観て貰いたいです。

 

映画部活動報告「ファイティン!」

「ファイティン!」観ました。
f:id:watanabeseijin:20181024204231j:image

韓国随一のマッチョ俳優、マ・ドンソク主演映画。

 

マ・ドンソク。アジア人とは思えないムッキムキの体。そしてどこか愛嬌ある顔。どう見ても悪役商会枠なのに。

去年日本でも公開された『新感染 ファイナル・エキスプレス』。高速鉄道内でのパンデミックパニック=ゾンビ映画

 

watanabeseijin.hatenablog.com

「まさかのゾンビに対して腕にガムテープを巻いただけで参戦!」けれど圧倒的な強さと正義感を見せた。本国でもこの作品の大ヒットから注目され。先日公開された『犯罪都市』に続き。今作品が製作されたと。

 

曲がった事が大嫌い。マ~サカリ~担いだ金太郎~。

強面なのに可愛らしいマ・ドンソク。ラブリーと掛けて『マブリー』の愛称。韓国ではそうも呼ばれていると。

 

そんなマブリー兄さんの新作は何と『アームレスリング=腕相撲』映画。

 

いやあ~。まだ2018年夏が始まる前。この作品の存在を知った時の当方がどれだけ沸き立ったか。

「上腕50センチのマッチョ俳優の魅せる、家族の絆の話!」

今振り返るとそのまんまでしたが。何だそれはと。もうワクワク感が半端無くて。

 

「韓国が好きで。しょっちゅう買い物に行きます。」職場で。そう言った、この春入職した新卒にも。「この俳優さん知ってる?」「韓国好きなんでしょ?」「知らないの?韓国きっての上腕俳優を?」と散々画像を見せつけ混乱させ。(当方は韓国に行ったこともありません)そんなパワハラを繰り返してきた日々。

 

満を持して。公開翌日の日曜日。朝の10時から。(やるかたない事情にて初日鑑賞ならず)男だらけの劇場で鑑賞してきました。

 

いやあ~。もう清々しい程の直球映画でした。

 

幼少期の頃。親の経済的理由からアメリカに養子に出されたマーク(マ・ドンソク)。けれど義理の両親も早くに他界。ひょろひょろとしたアジア人体型である事をからかわれ。だから体を鍛え。そしてアームレスリングの世界を知った。次第に大活躍。目指すは世界チャンピョン。

しかし。八百長を疑われ除名。…今やクラブの用心棒。

そこに現れたジンギ(クウォン・ユル)。マークを兄貴と慕う彼は、自称スポーツエージェント。

「韓国に来い。もう一回アームレスリングの世界に返り咲こう。」

夢を捨てきれず。アメリカから韓国に渡るマーク。けれど。なかなかすんなり正式な大会にノミネートされない日々。

というのも、ジンギは多額の報酬金目当てにサラ金やスポーツ賭博を営むチャンス社長にマークを売り込もうとしていたから。

ジンギにカモにされた。そうとは露知らず帰国したばかりの時。ジンギから贈られた『実母の家』までのナビ。マークはそれを基に実母に会いに行く。母はもう亡くなっていたが。そこには『シングルマザーとなって二人の子供を育てる妹スジン(ハン・イェリ)』が居た。

 

マブリーの現実の半生。今回初見でしたが。実際に家族の経済的理由からアメリカに移住した経歴があったと。だからか…マークの時折発する英語、いやに流暢。

 

マーク。

ムキムキマッチョボディ。かつてはアームレスリングの世界レベル選手。トップを目指していた。けれど挫折し、今や燻った日々。と思っていたら光を当てられた。見つけてくれた。そしてジンギは言った。「兄貴はまた輝ける。」

何故俺は燻ったのか。それは「八百長をした」と思われたから。八百長?断じてしていない。でも誰にも信じてもらえなくて。そんな時。声を掛けてくれた。

 

そういう「曲がった~事は大嫌い~」という、分かりやす過ぎるキャラクター、マイク。マブリー兄さんの基本設定は一寸の違いも無く最終まで完走。

 

となると他のキャラクターが一癖も二癖もあるのかと言うと、結局固定されたポジションから逸脱する事は無く。

 

ジンギ。

金に直ぐ目がくらむ。マークの弟分でスポーツエージェント。何処までもクリーンなイメージを死守したいマイクに対し、チャンス社長の言う通り「2回戦では負けてくれ」と頼んではみるけれど。結局真剣勝負をされてしまう。結果「まあいいか」。

けれど。決して薄情な訳じゃ無い。寧ろその反対で。幼くして生き別れたマークとその実母をマッチングさせようとしたり、何かとご飯を食べさせたりしている。

実はきちんとマネージメントする能力があるのに。どうしてジンギは金に心が揺らぐのか…その理由。意外でも何でも無い感じ(当方比)でしたが。

 

チャンス社長。

絵に描いた様な『器のちっさい悪党』。成金臭高く、品が無い。二足歩行可にも関わらず、実用性の無いステッキ(恐らく人間を殴打する用)を所持。

若い金ヅルのお坊ちゃんをスポンサーに組み込んでのサラ金・スポーツ賭博業にも参入中。普段は小売業者からの搾取で生活を成り立たせている。

(大阪人ならご存じ、『船場センタービル』みたいな卸専門ファッションビルのオーナー)

余談ですが。彼が作中で言っていた「幸せだから笑うんじゃない。笑うから幸せなんだ。」あれ。シチュエーションさえ違ったら…結構な名言やと思いましたがね。

 

マークの妹、スジンと子供二人(兄、妹=推定小学生。中~小学年)

夫に先立たれ、今は二人の子供を持つシングルマザー。先述のチャンス社長所有のファッションビルで流行っていない店を構えてる。一緒に暮らしていた母親は去年他界した。

 

この四つ巴。どこのどいつが組み立てようがこうなるであろうという展開。

 

チャンス社長の言いなりになれず。滞在場所を追い出され、居場所を失った所を救ってくれたスジン。そして人懐っこいスジンの子供達とマイクの間に生まれていく友情。始めこそぎこちなかった妹スジンとも築かれていく家族愛。

 

あくまでもフェアでありたい。そして見つけた『家族向け腕相撲イベント』をきっかけに。やっと正式なアームレスリング大会参加にこぎつけた。なのに。

 

『韓国アームレスリングNO1』と。『刑務所上がり、ステロイドドーピング万歳。相手の腕を壊しに掛かる』というヒール。その二大ライバルを相手に。果たしてマークはアームレスリング界への復活なるか⁈

 

『アームレスリング映画』と銘打ってはいるけれど。これは同時に『家族の絆映画』で。

 

「本当の家族とは何か。」「血の繋がりが家族の全てか。」という、まさかの万引き家族要素も若干ぶっこんできていたこの作品。

 

生れて間もなく親に捨てられた。そう思っていたけれど。ルーツである韓国に帰ってきて。初めて知った『誰かを大切だと思い、そして思われる事』。母親は自分に対しどう思っていたのか。そして取返しの付かない日々に思う事…。

 

マブリー兄さんが『マブリー』と呼ばれる所以。強面なビジュアルでありながら、どこかはにかみながら女子供に接している姿。その愛らしさ。今回も炸裂。

 

肝心のアームレスリング大会シーン。流石の迫力も感じましたが、どうしても「結局マブリー兄さんが勝つんでしょう?」という思いも否めず。というかアームレスリング界ってドーピングOKなの?そして明らかに腕と手首を痛めるから、予選と決勝は別日に出来ないものなの?選手生命どう考えているの?

 

曲がった事が大嫌い。圧倒的腕力を持った正義の人。けれど笑顔は可愛くて。そんなマブリー兄さんの全ベクトルを正統派に振り切った。これはこれで気持ちいい作品でしたが。

 

このビジュアルを最大限活用した悪人。感情など一切共有出来ない、憎むべきヒール。モンスター。そういうマブリー兄さんも観てみたい。そう思い始めている当方。

 

「この語学力を以ってするなら、意外と韓国では無く英語圏の国での起用はどうだ。『哭声』の時の國村隼みたいに。」

ではどういう役回りで?…想像力膨らむ当方です。

f:id:watanabeseijin:20181024235236j:image

映画部活動報告「バーバラと心の巨人」

バーバラと心の巨人」観ました。
f:id:watanabeseijin:20181018075226j:image

アンダース・ウォルター監督作品。原題『I kill Giants』。ジョー・ケリーの同名小説の映画化。作者が脚本に参加。

主人公バーバラ。ウサギ耳と眼鏡がトレードマーク。けれどそのキュートなファッションとは裏腹に、変わり者でとっつきにくい彼女。

「いつか巨人がこの町を破壊しにやって来る」と、来るべきXデーに向けて研究と対策を講じる日々。当然友達もおらず。

ある日。一人で巨人対策の罠を確認している所をイギリスからやって来た転校生、ソフィアに声を掛けられる。つれない態度を取るバーバラなのに、くっ付いてくるソフィア。

ソフィアに巨人の話をするバーバラ。そして二人は親友になるが。

 

当方の疑問。「『怪獣はささやく』しかり『ルイの9番目の人生』しかり。海外の精神的に追い詰められた少年少女は怪獣とか化け物とか巨人とかを見るもんなんやろうか??」

あんまり日本でこういう話は聞かない。

 

そして。当方も御多分に漏れず思ったのは「邦題のネタバレ感」。そりゃあ『心の巨人』ですけれど。一応「まさかの~本当に進撃の巨人‼」という余地を残しても良かったと思いますよ。(もしそういう話だったとしたら神映画になりますがね)

 

なので。自分の中にある恐怖。受け入れられない現実。けれど時は有限では無い。いつかは必ず現実に飲み込まれる。そんな日が来る。渦巻く混乱した感情を『巨人襲来』に置き換えているのだと。そういう話だろうなという先入観で観ていました。

 

ならば。一体バーバラにとって何が『受け入れられない現実』なのか。

 

最後の最後、勿論明かされるんですが。

正直「それぇ~?」となってしまった当方。いや…分からなくは無いけれど…だとしたらバーバラちょっと幼すぎる。

(ネタバレしないようにすると、ふんわりするしかない。もどかしい。)

 

バーバラちょうど成長期。大人になっていく体に心が付いて行かない。子供でいたい。そして複雑な家庭環境の中でどう甘えたらいいのか、そもそもどうすれば自分の思いを伝えられるのか分からなくて。募り募ったフラストレーション。それが巨人となって…とかいう話じゃない。これは、たけくらべ案件ではない。(『たけくらべ』だってそういう話じゃ無いですけれど。)

 

「町に巨人がやって来る」そう騒いで。クラスでもはみ出し者、けれど構わない。いじめっ子に絡まれるけれど、やられたらやり返す。情緒不安定で。仲良しだと思っていたら直ぐ突き放してくる。結構暴力的。

「もうそんな奴、放っとけば良いのに。」そう思うけれど。スクールカウンセラーのモルもソフィアもバーバラを見放さない。何故?

スクールカウンセラーモルに関しては「まあ…ぶっちゃけた話お仕事やしな」とも思いますが。ソフィアに関しては何故?何故そんなにバーバラに尽くす?

人間関係にギブアンドテイクは無い。「私がこれだけの事をやったんだから貴方も返してよ。」は無い。そうは思いますが…にしてもソフィアとバーバラの関係性、ウエイトがおかしい。

(なので。最後の種明かしでソフィアが「だってバーバラは~!」と言った時。当方の脳裏に浮かんだのは『同情』の二文字でした。)

 

「と言うかねえ!この話の中で一番辛かったのはお姉ちゃんやぞ!」

姉カレン。銀行勤めで出世も見込めそうなのに。今は仕事を休みながら実家で歳の離れた妹弟の面倒を見ている。弟はゲームに夢中。妹はあちこちで問題ばかり起こしてくる。顔を合わせれば喧嘩。家事を誰も手伝わない。ご飯を作っても文句ばかり。挙句ぐちゃぐちゃにされ、食べない。しかもしょっちゅう職場からは嫌味な電話が掛かってくる。

第一子の立場である当方の目に涙。これはひどい。しかもこの一家がどういう状態だったのかが明らかになった時。全当方がカレンに再度涙。

(余談ですが。当方の妹は『となりのトトロ』がテレビ放映される度「最後の辺りで泣くよ~」と言うのですが。完全にさつきちゃん(第一子)視点で観てしまう当方からしたら「メイの奴。我儘が過ぎるやろう」「メイを見つけた時、当方なら殴るかもしれん。だって村人総出で池までさらってくれてるんやぞ」等々。泣くどころか、苛々して冷静に観ておれません)

 

そして。弟に対してバーバラが「ゲームばっかりして。」と馬鹿にしてプレイ中のゲーム機の電源を切る(!!)シーンが初めの方にあったんですが。

「いやいやいや。アンタのその巨人のビジュアルとか。それに対する武器とか。設定とか。ゲーム由来プンプンやぞ!」突っ込む当方。「もうついでに言うけどな!それ、そのビジュアル!女の子が思い付くタイプの巨人じゃないから!」

 

本当にやってきたXデー。巨人と対峙する時が来た。けれどそれがどうバーバラの現実にリンクしたのか…。

「時が有限では無い。ましてお別れがはっきり近づいているのなら尚更。そういう態度を取っていた事は後悔に繋がるよ。」

抗えない現実。それを受け入れて。やっと恐怖の向こうにあったものに向き合えたバーバラ。(バーバラの年齢を考えると幼いなあと思ってしまいますが)

 

「取りあえず神様。カレンを。お姉ちゃんを…。」涙声の当方。

協力者が皆無だった状況で。気丈に振舞って。しっかり下の子達の面倒も見ていた。何だか理解が得られない上司と職場な予感もするけれど。

「お姉ちゃんが幸せになりますように。」

正直バーバラよりカレンの。これらからのご多幸をお祈りしたい当方です。

映画部活動報告「アンダー・ザ・シルバーレイク」

アンダー・ザ・シルバーレイク」観ました。
f:id:watanabeseijin:20181018075139j:image

舞台はLA。無気力な33歳のサム。けれど。同じアパートに住むサラに恋をした。

良い感じに盛り上がった夜。けれど、それもつかの間。邪魔者に依ってお預けになってしまった二人の甘い時間。「また明日来て」そう言われて翌日サラの家を訪れたら家はもぬけの殻。一体サラは何処に行った?

行方不明になったサラを探すうち。サムはこの街に数多転がる不思議に足を踏み入れて行く。

 

『イット・フォローズ』のデヴィット・ロバート・ミッチェル監督作品。主人公サムをアンドリュー・ガーフィールドが演じた。

 

watanabeseijin.hatenablog.com

 結構楽しみにしていた今作。何故なら前作『イット・フォローズ』は当方の中で『シンプルな設定だからこそ勝つ作品』だったから。分かりやすく。そして十分に面白かった。

 

だからこそ…この監督の新作公開と知って。「もう~い~くつね~る~と~」と指折り数えて胸を膨らませていたのですが。

 

「この作品の感想…好みがバッサリ別れる!当方は…否定派!」

f:id:watanabeseijin:20181018233026j:image
越後製菓は一切関係ありません。念のため)

 

「色んな人が交差する街。LA」「そこで出会った俺たち(同じマンション)=サムの奴。昼間っからやる事無いからって、ベランダで一人くつろぎながら他の住民(女)を双眼鏡で観察。サラの事も当然マークしていた。二人の出会いは実際には偶然でも何でもない。サム変態野郎」「距離を縮め。遂に二人っきり。高まる期待。ビバ!エロ!」「そこで唐突に表れる闖入者。帰らされるサム」「翌日サラの言う通りサラ宅を訪れたら。まさかのもぬけの殻。夜逃げ。」「諦めないサム。暇を持て余しているのもあって。加速するサラストーキング」「すると思いがけず…この街は謎で満ち溢れていた。」

 

都市伝説。オカルト。イルミナティ

「犬殺し云々」「楽曲を逆から再生したら現れる、別のメッセージ」「洞窟シェルター」「失踪した大金持ち」「セレブとマニアックなパーティ」「同人ポストカードの男」「ホームレス」「今まで聴いてきたヒット曲たちは」「ファミコン」エトセトラ。エトセトラ。

 

「サラは何処に行った?」それを探っているだけなのに。気付けばどっぷり不思議世界。不条理で不可思議そして不穏。次々現れる謎。答えのない謎。

 

「しゃらくせええええええええ。」(当方の叫び)

 

いやいやいや。当方もねえ。怪談話は苦手ですが、こういったオカルトや都市伝説、イルミナティ。嫌いでは無いですよ。と言うか寧ろ好き。

ですがねえ。この作品に於いては…バランスが悪かったとしか…。

 

「盛り過ぎ。全ての答えを投げ出しすぎ。そして性質の悪い事に…変にビジュアルはお洒落やから鼻についてしまう。」

 

当方の脳内ジャンルにあるんですが。『オサレなバーで無音で流れている映画』。その仲間入り決定。

薄暗い(大体青が基調の照明)、お高くて少ししか入っていないオリジナルカクテルしかないオサレなバーで。(あくまでも大酒呑みな当方から見た景色)視線を上げたら流れている、無音のオサレ雰囲気映画。

 

「何故そんなにボロクソに言われなければいけないんだ!」オサレバーに集う、この作品肯定派の皆さまは気分を害すると思いますが。

 

「サム自体が幻だからだ!」吠える当方。

 

『オタク青年のサム。33歳』その肩書きに似合わぬビジュアル、生活、行動力。謎の財力。そしてセックスライフ。

「そりゃあアンタ。アンドリュー・ガーフィールドやで。」「スパイダーマンやってた奴やぞ。」って違う違う。その役者元々のスペックの話じゃ無い。

主人公のサム。確かに凄く野暮ったい感じにビジュアルにはしていたけれど。全然当方の思う『オタク』じゃない。

別に『オタク』=二次元の異性にしか興味が持てない性癖とかそう括っている訳じゃない…何て言うか…日本人の「一つの事に異常に興味を持っている己に対する恥じらい。人様に見つかったら馬鹿にされたり気持ち悪がられたりするんじゃないかという恐怖からコソコソ追及する」というオタク文化(そこから共通の仲間を見つけてはじけ飛ぶパターンもありますが)がデフォルト過ぎて。そうなるとサムに『オタク』と言う言葉はしっくりこない。

 

「ていうか、サムリアル充実してるやん。どういう相手なんか分からんけれど、昼間ランチ片手にセックスする為に衣装のままやって来る劇団員の彼女とか。トントン拍子に良い感じになるサラとか。最終の人とか。結構サムのセックスライフ有意義やで。」

 

「そして最大の謎。サムは一体何で生計を立てているんだ。」

 

LAで一人暮らし。どれほどの財力がいるのか。全くのハウマッチですが。けれどこれだけは言える。「サムの家。素敵すぎる。」

ああいう集合住宅、何て言うんでしょう?ゆったりとした2LDKが集まって構成される住宅街。その真ん中には共有プール。

職について聞かれると「仕事は今上手くいってない」とか言ってはぐらかし。そして労働実態を見せなかったサム。でもあんな生活、33歳無職では不可能。

自室で任天堂のマリオやって。ゲーム雑誌をコンプリートして。レコード大量に所有して逆再生して一日中遊んでる。何なんですか?サムは大富豪の末裔か何かですか?

「家賃を滞納している」「数日以内には出ていけ」大家から再三の退去命令が出されていたけれど。のらりくらり逃げ回るサム。なのに、LAの街を自由に闊歩。パーティにも潜入。途中まではマイカーまで所持していた。貧乏には見えず。食材も山ほど購入していたし。

 

「サムの肩書を『オカルト作家』とか『街の噂ライター』にすれば万事が収まったのに。」そう思う当方。(いかにもそんな仕事をしてそうでもありましたが)サラ捜索はあくまでも職業病。作家ならではの好奇心から。その方がしっくりくる。

サムは『オタク』ではない。せいぜい『サブカル野郎』。そこ止まり。

 

「主人公サムこそが一番フワフワとしていてとらえどころがない。」「唐突な主張も薄っぺらい。」「観ていて落ち着かない。」

 

「後。真面目に言うと、やっぱり何故そこまでサムがサラに固執したのかが良く分からんかった。」その一言に尽きるかと。

 

サラに惹かれた部分…というより、結局「不思議なあの子の謎を知りたい」「そうすれば全ての謎が解ける」の連鎖。となるとやっぱり…いくら何でも殆どのなぞなぞの答えを投げっぱなしにしたのはどうかと…。

 

「まあ~。出来ればこの作品を先に出してから『イット・フォローズ』が出ていたら。順番が逆なだけにハードルが上がっちゃっていたからなあ~。」

 

こうなると。「デヴィット・ロバート・ミッチェル監督の次回作に期待!」としか言えなくなる当方です。