ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「殺人の追憶」

殺人の追憶」観ました。
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2003年公開。ポン・ジュノ監督作品。主演ソン・ガンホ

韓国。1980年代後半に実際に起きた『華城連続殺人事件』。

10~70代の女性10名が強姦殺害された事件。それを基に作られた戯曲。

 

第92回米アカデミー賞で快挙を成したポン・ジュノ監督。『パラサイト 半地下の家族』公開記念としてシネマートで企画・上映された『鬼才 ポン・ジュノの世界!』。

ほえる犬は噛まない』『殺人の追憶』『母なる証明』『スノーピアサー』これら四作品がスクリーンで再上映、というラインナップの中。「有名作品なのに実は観た事が無かった。」という理由から(他は鑑賞済み)。「しかもスクリーンで観られるなんて。」とホクホクしながら映画館へ向かったのですが。

 

「いやあこれ…ポン・ジュノ監督作品全てを観た訳じゃないからアレやけれど…マイベストポン・ジュノ監督作品かな(今までは『母なる証明』やった)。」

「寧ろなんでこれ観てなかったんだ当方よ!」と背中叩きたくなったくらい。このもやあ~っとした感じ、幕の閉じ方。物凄く当方の好み。堪らん。

 

公開から17年。しかも未解決事件のはずが昨年真犯人が特定された。もう星の数ほどこの作品についての紹介、考察はされているはずで。そんな中しれっと知ったような御託を並べるのは恥ずかしい…なので、さらっと感想を書いて収めようという魂胆で進めますが。

 

1980年代。ソウル郊外の農村で女性の変死体が発見された。地元警察のパク刑事(ソン・ガンホ)は弟分のチョ刑事と捜査に当たるが、第二、第三の類似事件が続くばかりで犯人の手がかりは見つからない。焦る中、恋人ソリュンから聞きつけた噂から焼肉屋の息子グァンホが浮上。

同じ頃、ソウル市警からソ刑事(キム・サンギョン)が派遣された。田舎警察の暴力的な取り調べ、犯人を捏造しようとする姿に軽蔑する態度を隠せないソ刑事。

典型的な体育会系、暴力的なパク刑事と知的で冷静なソ刑事。見えない犯人に振り回され、追いつめられ…次第に己の信念をも奪われんとする刑事たちを描いた作品。

 

2003年公開。「ソン・ガンホ若っか!」当時36歳位ですか?もうパツンパツン。加えてあの貫禄。もう見るからに『THE田舎の暴力刑事』。

汚い警察署館内で、散らばった事務机に足乗っけて。直ぐ大声出して。犯人だと思われる人物が現れたら、弟分のチョ刑事に暴力を振るわせて犯人だと自白させようとする。

「ああもうホンマそういう奴、嫌い。」けれど、パク刑事は決して無能では無い。

 

「俺の目を見ろ。」

相手の目をしっかり見る事で真偽が分かる。それは長年の経験から判断できる所もあるとは思うけれど。いわゆる野生の勘というやつを持ち合わせるパク刑事。

 

対するソ刑事。ソウル市警から派遣された『THEまともな刑事』。連続婦女暴行殺人事件に関連する事項はなんだ、そこからあぶりだされる犯人像は?あくまでも真っ当に捜査を進めたい。なのに一緒に組まされている地元警察は馬鹿馬鹿しい体当たり捜査でうんざりする。

けれど。腐っても鯛。地元警察が引っ張ってきた容疑者もあながち無関係では無かった。焼肉屋の息子、グァンホ。知的障害と手指に麻痺がある彼に、犯行は不可能だと判断されたが。あの無理やりな供述には、実は重要な記憶が隠されていた。

 

「犯人は犯行場所に戻ってくる。」そう睨んで張り込んでいた夜。そこにノコノコ現れた男。(ああいう性癖を持つ人って、現実社会で生きづらいですね…。)

地元の女子高生たちが話してくれた噂話。

雨の日にFMラジオでリクエストされる曲。

そして唯一の生きている被害者。

 

先述の、グァンホに対する自白強要が社会的問題となって。上司が交代。パク、チョ刑事の暴力行為が封じられた。そこで脱落していくチョ刑事。

パク刑事とソ刑事のバディモノになっていくにつれ、真実を導きそうなパーツがポロポロと見えてくる。

 

「うわもう絶対こいつが犯人やん。」そういう所まで話は盛り上がっていくけれど。

事件にのめり込むあまり冷静さを失っていくソ刑事と、逆に冴えてくるパク刑事。この二人の持つ素養や信念が交差する下りとか。上手いな~とゾクゾクしてしまう。

 

実際に起きた事件を基にしている。それがどこまでが事実に即していて、どういう配慮がなされたのか当方には分かりませんし…不謹慎ではありますが、単純にお話として面白かった。

 

粗削りな捜査、けれど自身の『野生の勧』は間違いない。そう自信を持っていたパク刑事だったけれど…もう真実は見えなくなった。分からない。もう刑事は続けられない。

 

事件から何十年も経って。全く違う立場になった時、あの場所で思いもよらない言葉を聞いた。そのパクの表情。どれだけの言葉を含んでいる事か。

 

「ああもう!あのソン・ガンホの表情だけでご飯何杯でも食べられるよ!」

「寧ろ何でこれ観てなかったんだよ当方!」

 

背中をバンバン叩きながら己を責めましたが。まあ…そこは今回スクリーンで観る機会をくれたシネマートに感謝するという事で…。

 

「そして。どういう集合写真だこれ。」

たまたま見つけた、当時のポスター写真。「あの人はどうなったんやろう。」「この人の家庭はどうなったのか。」件の事件で人生を狂わされた面々。パク以外の人たちの未来を想像してはモヤモヤと纏まらない。
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ポン・ジュノ監督作品全てを観た訳じゃないからアレやけれど…今のところマイベストポン・ジュノ監督作品。これからも楽しみです(何様だ)。