ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「君が君で君だ」

君が君で君だ」観ました。
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松居大悟監督オリジナル作品。

 

好きで好きで好きで仕方ない。そんな相手が出来た。だから俺は彼女が好きなモノになる。

 

彼女が好きな音楽は尾崎豊。だから俺は尾崎(池松壮亮)。彼女が好きな俳優はブラッド・ピット。だから俺はブラピ(満島真之助)。彼女が好きな思想家は坂本龍馬。だから俺は坂本(大倉孝二)。

 

ある日。恋人に振られたと落ち込む友達と二人で行ったカラオケボックスで彼女に出会った。

片言の日本語を話す店員。カラオケボックスを出たところで輩な連中に絡まれていた彼女。駄目元で助けに行ったら案の定返り討ち。結局連中は逃げていったけれど…どこまでも格好悪い俺達。でも。

彼女はケガをしている、とハンカチをくれた。

俺達は恋に落ちた。

 

~からの10年。

彼女を『姫』と崇め。姫の住むマンションの部屋が見えるボロアパートの一室を借りて。

俺達は常に姫を見守り。姫の生活の全てを把握し、シンクロする事で精神を保っていた。

 

「怖えええ。完全にストーカー案件やないか…。」

 

互いを『尾崎』『ブラピ』と呼び合い。いつのまにやら増えた『坂本』(姫の元彼)との三人の。気持ち悪い共同生活。

 

盗聴、盗撮は当然。姫の出したゴミを回収しコレクション。姫がいつも食べるカップ麺やジュースを常備し。姫が食べるのに合わせて自分達も食事。

 

そんな生活が。ずっと続くと思っていた(狂気)。けれど。

 

姫の彼氏が作った借金。その取り立て連中が、ふとした拍子に俺達に気付いてしまった。そして俺達の国に乗り込んできた。

 

元々は純粋な恋心だったのに。どうしょうもなく狂っていった俺達と。そして決して踏み込めなかった姫の世界が初めて交わった。そんな数日を描いた作品。

 

「いやあ~。当方はこういう突き抜けた馬鹿は大好きですよ。実際に居たら引きますけれど。」

 

姫が大好き‼とは言っても、彼らは決して姫に手出しはしない。ずっと姫を観察して、そして三人で盛り上がっているだけ。

 

当方はこれまでの人生で『ファンクラブ』に属する程入れ込んだアイドルやら俳優は居ないんですが。何て言うか、そういう人達の中でも一際コアな…熱狂的ファン?彼らを例えるならばそういう感じ。

 

「というか。最早これは恋では無いな…。」

何だか部活みたい。勿論姫に対する好意がベースなんやろうけれど。同じベースを共有する三人が集まってキャッキャ騒いでいる感じ。そりゃあ楽しかろう。(にしても10年は長いけれどな)見ているだけなら傷付きもしないし。

 

けれど。そうやってただただ『姫を見守っていただけ』の彼らの国が打ち破られ。そして崩壊する。

 

「借金取りの女社長がYOUってのも良かったけれど、手下が向井理ってのが良かった。」爽やかキャラの印象がある向井理を。あんな眉毛無しでチンピラファッションて。当方の向井理に対する好感度が上昇。

しかも、誰一人マトモな人間が居ない中で唯一のマトモな人間。ジャストな人選。

 

出会った当初はカラオケボックスの店員だった姫。祖国(韓国)で暮らす母親の為収入の安定した日本語教師になりたいという夢があった。そうやって頑張っていたけれど。坂本と別れた後に出来た彼氏の宗太(高杉真宙)。

元々は夢を持ったバンドマンだった。けれど。「私が働くから。宗太は音楽に集中して」(どこの『南瓜とマヨネーズ』の世界やねん‼)案の定、墜ちていく宗太と姫。

いつのまにやら。宗太の借金返済の為、風俗にまで足を突っ込んでしまった。

 

そして今日。姫の部屋に借金取りがやって来て。斜め向かいに住む俺達に気付いてしまった。

 

だらだら話をなぞっていくのもアレなんで。

当方の感想を書いていきますが。

 

「この支配からの。卒業。」

 

尾崎豊について。当方は全く語る術を持ちませんし、彼の人となりや人生もテレビ等から得た知識程度。歌も全部は知りません。ですが。

この作品を一言で言うならば(何故⁉)これしか無い。

 

彼らが一体何に支配されていたのか。

 

『姫』は確かに彼らにとって、この10年のシンボル。元々は恋心だった。でも。恋を伝える努力はしなかった。関わる事もしなかった。

 

「姫っていうのがまた。滅茶苦茶美人な訳でない。夢があったのに諦めてしまった。駄目な彼氏に貢いで堕ちてしまっている。姫自体もイケてないんよな…。」

 

姫は彼らにとっての自己投影。姫を好きな気持ちもあるけれど。何をやっても駄目な姫と自分が重なって見えて。だからずっと見ていた。姫が好きなモノになって。彼らは見ていた。姫=俺達の構図。

 

「いやいや。お前ら何も知らないじゃん。何もしてねぇじゃん。」

 

クズにしか見えない彼氏の宗太。けれど。三人どころか、誰も知らない。姫と彼氏だけのやりとりがあった。きちんと積み重ねた甘い日々。

 

そして。姫。

「何となく。見ている奴が要るな~。と思っていた日々。でも何かをしてくる訳じゃないし、自分が落ち込んでいるときに励まそうとする気配を感じたりもした。だからあまりどうこう思ってはいなかった。」様に見えましたが。

流石にあの部屋を見たら…そりゃあ発狂しますわ。

 

どんなに純粋な気持ちだ。何もしないだと言っても。あの部屋とあの連中はあかん。絶対あかん。

 

「まあ結局。あの国(部屋)が崩壊した事で。現実に行き詰まっていた姫も解放されたんやな。」

 

夢から覚めた。もう俺止める。

そうやって仲間は去っていった。姫も去って行こうとしている。

 

「でもさあ。やっぱりこれ。元々は恋なんですけれど。」

 

尾崎豊を捨てて走り出す池松壮亮。その姿に気持ち悪さと、やっとなりふり構わず動き出したなと思った当方。

 

正直。辻褄が合わない、強引、どういう事だよと思う所も幾つも有りましたので。腑に落ちない、定まらない気持ちにも所々なりましたが。

 

最後。主要メンバーが楽しそうに歌う『僕が僕であるために』。

聞いていたら何だか急に吹っ切れて…良いエンドロールだなと思いました。