ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「地獄愛」「ハネムーン・キラーズ」

「地獄愛」と「ハネムーン・キラーズ」観ました。
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1940年代。アメリカで起きた『ロンリー・ハーツ・キラー事件』

120キロの巨漢。マーサ・ベックと、結婚詐欺師のレイモンド・フェルナンデス。

「ロンリー・ハーツ・クラブ」という出会いを目的とした文通クラブで出会った二人。

始めこそ色々あったけれど。意気投合。ラブラブカップル。

二人は共謀して、結婚詐欺→金をだまし取り殺人。を繰り返し。その犠牲者数延べ21人。

アメリカ犯罪史に残る連続殺人事件。

 

を、題材に製作。1970年に公開されたのが「ハネムーン・キラーズ」

幻(は言い過ぎか)のカルト映画が。今回同じくこの事件を題材にした「地獄愛」が公開されるに当たって復活。同時期公開となった。

 

基本的には「一作品で一ブログ項目」と考えているのですが。どう考えても同じような話を繰り返しそうなので。今回は纏めて書こうと思います。

(同日、同映画館で。「地獄愛」→「ハネムーン・キラーズ」の順で観ましたので。その順番で行こうと思います)

 

「地獄愛」

ベルギー。「変態村」の監督最新作。

シングルマザーのグロリア。友人が勝手に出会いサイトで見つけてきた男性、ミシェル。

「貴方に会いたいって言ってるわよ」と言われ。友人に対し怒るけれど。「いいじゃないの。会ってみるだけでも」と背中を押され。気乗りせずに食事に行くグロリア。けれど。

瞬く間に恋に落ちる二人…と思いきや。

結構早い時点でミッシェルが結婚詐欺師である事。寂しい女性の心に付け入るのも、性的欲求不満を満たすのもお手の物だという事が発覚する。でも。

「貴方は好きにしたらいいわ」娘を友人に預け、ミッシェルの元に飛び込むグロリア。

「だって私。幸せなの」

ミッシェルの妹だと偽り。一緒に標的の元に転がり込み、行動を共にするグロリア。

しかし。あくまでもミッシェルは結婚詐欺師で。標的とのラブラブな姿を見て、直ぐに嫉妬するグロリア。抑えられず爆発。標的を殺してしまう。

 

まあ、大体上記の「妹と偽って~殺してしまう」の下りを繰り返していましたが。

 

「グロリア怖いよ…」好きの気持ちが強すぎて。嫉妬。止められない自制心。そして感情のままに標的を(主には)撲殺。

「貴方は好きにしたらいいわ」じゃなかったの?!その言葉は何だったんだ。

「だって好きなの!!私以外を抱かないで!!」もう支離滅裂。だってミッシェル結婚詐欺師なんやで。

 

「何故ミッシェルはグロリアを手放さない」

この作品最大の謎。

 

ミッシェルの通常運行なら。寂しい、独身女性はいつでも見つけ出せる。自分一人なら上手く相手を篭絡させ、財産を奪い取れる。でも。グロリアが居るといつも上手くいく前にぶち壊されてしまう。完全に足手まとい。

 

「何ですか。グロリアの異常な(殺人)行動力故ですか。下手したら自分もグロリアに危害を加えられるとか?」

そういう危機感みたいなものはミッシェルからは感じませんでしたがね。

「エロい事も出来ないしな」

女とみれば手を出したい。兎に角やりたい。しかも自分は殆どの女を満足させられると思っている。そんなミッシェルに「自分以外の女は抱くな」と言うグロリア。しかも大抵グロリアがキレて襲い掛かってくるのはミッシェルと標的がいちゃついている時。

終いにはグロリアに睡眠薬を盛って、他の女性とセックスするミッシェル。

 

ミッシェルの精神状態。どうしてそれでもグロリアと一緒に居るのか。観ている者に納得させる材料が無さすぎて。

 

終盤。一人娘を持つシングルマザーを標的にして転がり込んだ二人。自分と同じシングルマザーという対象に、心のバランスを崩していくグロリア。

これまでと違って。標的の娘とも仲良くして。明らかに楽しそうなミッシェル。

 

「私だって娘に会いたい」

グロリアにとって、目の前の光景は自分のものであって欲しかった。

自分と娘。そしてミッシェル。結婚詐欺師なんかじゃないミッシェル。3人で仲良く暮らして。そういう家族になりたかった。でも。自分にはそういう明るい未来は来ない。

 

確かに地獄。愛故の地獄。業。

「どこまでも一緒に墜ちていく」グロリアの気持ちはひしひしと受け取りましたが。

「やっぱりミッシェルの感情が良く分からんのよな」不完全燃焼。くすぶる当方。

 

「ハネムーン・キラーズ」

この大元となった事件。鑑賞後調べましたが。こちらは結構忠実になぞった感じで作られたんだなと思った当方。

「職業看護師長?!マーサ幾つよ!!」(作品では明言していませんでしたが。マーサ26歳だったんですね。病院というより、施設だったようですが)

「恋をしなさいよ」と。友達が勝手に「ロンリー・ハーツ・クラブ(出会い系文通クラブ)」にマーサを登録。ほどなくしてマーサにアタックしてきた男性、レイ。

すぐさま恋に落ちて。看護師の職も、同居していた母親も投げ捨ててレイの元に飛び込むマーサ。そこでレイ自身から「自分は結婚詐欺師なんだ」という告白を受ける。

特に動じる事も無く。レイと共に行動。結婚詐欺、遂には殺人にも手を染めていく。

 

同じ事件を基にしていますので。流れ自体は「地獄愛」と似た感じ。ただ。

 

「レイとマーサの連帯感。共犯っぷりがしっかり伝わってくる」

 

(実際の事件の二人を強く結びつけたもの…調べた記事や文章を総合すると、ぶっちゃけた話「体の相性が良かった」が一番大きかったみたいで。まあ、それはそれでものすごく腑に落ちました)

 

地獄愛と同じく。マーサの嫉妬による番狂わせはあった。「また嫉妬しやがって」とレイが怒るシーンもあった。でも。二人の間に「でもこいつが一番だ」という空気があった。

 

あくまでも標的は標的。金蔓でしかない。どんなに甘い言葉を掛けようとも、実際に標的に心は動かされない。そして二人になった時には標的を笑い。

 

「お前との生活の為だ」「家を買おう」「俺たちの結婚式をしよう」

 

こういう二人の姿と行動は非常に納得出来る。

 

とは言え。結局マーサにとって越えてはいけなかった一線を越えた(と思われた)標的が現れ。感情的になってしまった挙句の自滅。

 

「女って。哀しい生き物よのう」(誰!!)

 

実際の事件をなぞっていながら。最後の閉め方は実に映画らしい終わり方で。

 

1970年公開当時。賛否両論だったようですが。当方はどちらかと言うと『賛』の方ですね。

 

同じ事件を基にして。あっさりなぞった「ハネムーン・キラーズ」色々付け足してちょっと焦点がぼやけた印象を受けた「地獄愛」

 

ところで最後に。どちらにも共通して思った事なんですが。

「そもそも。たとえどんな事情があろうとも。恋愛絶頂期。もうすぐ結婚するような時期に。自分と一緒に女兄妹を住まわせてくれと言う恋人はおかしいで」

 

そうですよね?そう思う当方の感情はおかしいんですかね?