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ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ムーンライト」

「ムーンライト」観ました。

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アメリカ。黒人。貧困層。スラム街。母子家庭。母親の薬物依存。同級生達からの虐め、偏見。

頼りになる、父親的存在を得て。初めて温かさに触れた。そして別れ。
次第に目覚めていく自身のセクシャルティ。ゲイであるという事。たった一度。満たされた夜。
そして大人になって。

シャロンという一人の男性の半生を。リトル(少年期)シャロン(思春期)ブラック(成人期)の3期に分けて。各々を違う役者が演じた。

第89回米アカデミー作品賞受賞作。

「これが今年のアカデミー作品賞なのか」鑑賞直後、なんだかなあという戸惑った気持ちで一杯になった当方。
正直な事を言うと、今でもその気持ちはくすぶっているのですが…ですが。

「一体この作品は何だったんだ」ふと。日常生活の中で過る。何故か何度も反芻してしまう。それがこの作品の持つ力なのかと。

「これはシャロンの愛の話」

家族。唯一の肉親である母親との関係性。
赤の他人なのに、本当の父親の様で。暖かな居場所をくれた人。
自身のセクシャリティに戸惑い。悩み。でも。そこにきちんと向き合ってくれた友人。大切な人。

図らずも波乱万丈の半生を送る羽目になったシャロンの。

彼を傷つけた者達。彼らを憎まざるを得なかった、幼かった日々。強くなるためには己を変えていく努力が必要だった。でも。

見た目には大きく変わったシャロンの。芯として変わらなかったもの。時が流れる事で怒りや憎しみは穏やかになって。いつしか相手を赦す気持ちに変貌して。

そして。あまり自身を語らないシャロンが。初めて口に出した告白。

~という感じの事をやっていたんだろうと。当方なりに受け取った概要をポエムっぽく書いてみましたが。

「あのねえ。やっぱりお話の中に要素を盛り込み過ぎ。そしてその割に各章に飛ぶ時が乱暴過ぎ」

ネットラジオ聴取が趣味の当方。これは映画について語られた回ではないのですが。
最近聞いた「デストロイラジオ」という番組でパーソナリティーが話していて、いたく当方が共感した言葉。(細かい言い回しは割愛)

「観ている相手に考えろっていう作品が多すぎるんだよ」「お前が作った作品なんだから、まずはお前の意見を聞かせろよ」

ムーンライトという作品の個性。ある意味それは「相変わらずあんまり話さないんだな」と言われていたシャロンそのもの。ですが。

話の核となりうるテーマをこれでもかと盛り込んで。でもどこにもウエイトを置かない。なので全体としてひどく単調なダイジェストという印象を受ける。

最終的な流れだけを取り上げてしまったら…「下手したら、高尚なBL映画」とも取られかねない。これは当方が荒んだ心を持つからかもしれませんが。

「色んな事に折り合いを付けて大きくなったシャロンの。唯一折り合いが付けられなかった事(相手)幼馴染のケヴィンへの想い」

うーん…他はともあれ。ファンについては触れるべきやったと思いますけれど。当方は。

肉親からは得られなかった、家族的な愛情を注いでくれたファン。でもそんな彼が、結局自分の母親に薬物を売っていたという事実。そこに対してどう気持ちの整理をしたのか。なのに。あっさりと第2章では既にファン退場後という驚き。そして第3章でシャロン自身がファンそっくりな風貌の売人になっているという変貌。何故?どうなったらそういう流れになるのか。

「少年院で売人と知り合って。のし上がったんだ」アホか。そんなセリフ一つで済まそうとするなよと。地味に腹が立った当方。

どう考えても。これは端折ってはいけない。丁寧に追わないといけなかった案件。

母親だって根っから悪い訳じゃ無い。でも。薬物の前には無力で(本当ならその母親の背景も知りたいですよ)。そんな憎むべき薬物を売る側に回っているとはどういう事なのか。かつて父親のように慕っていた人物。その彼と同じ様な風貌に現在変化したシャロンの。その気持ち。

それが提示されずに。「行間を読んでください」その座りの悪さ。流石に「まずはお前の意見を聞かせろよ」としか言いようがない。

(まあ、言い出したらシャロンが対象達を「赦し」ていくに至った過程だって必要だと思いましたけれど。母親は年老いて弱弱しくなったから?薬物との決別?時が解決したとでも?…雑やなあ)

全てを提示して。「あの問題はこういう過程を経て。解決と相成りました」そんな注釈が、物語に必要だとは当方も思いません。ですが。

「ちょっと観ている側に投げすぎやろう」どうしてもそうとしか思えなくて。

芸術性は非常に高い作品。夜の海に佇むリトル。シャロン。ブラック。どの彼も美しくて哀しくて。その黒い肌に青い色が浮かぶ様。独特の光。
画から彼の気持ちを拾っていく…そんな作品なのでしょうが。

「気持ちが上手く着地しない。ひどくアンバランスなものを観た様な感じがして…結局いつまでもあれは何だったんだという爪痕が残される」

不思議な作品。未だもやもやするばかりです。