ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ペット・セメタリー」

「ペット・セメタリー」観ました。
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1983年に発表された、スティーブン・キングの同名小説。1989年に続き、2回目の映画化。

「愛する者を失った。けれどもしも、生き返らせる事が出来るとしたら?」

「娘は生き返ってはいけなかった。」

 

はじめに。今回の感想文はネタバレ&かなり茶化した内容になるであろう事を、先んじてお詫びします。

決してこの作品の事も、キングの事も、嫌いではない(けれど特別好きでもありません)。「出るで出るで~。」系の脅かしにも案の定ビクビクしましたし、それなりに楽しんだ。でも心の中にいる突っ込み担当当方が、ずっと手の甲を当方の胸に叩いてきていたので…そういう視点になる事必須。という前置きをしておいて。

 

「これは…事故物件物語やないか。」

元々はボストンに住んでいた一家。医師であるルイスの心労がたたり、家族でメーン州のルドローという田舎にある一軒家に引っ越してきた。

ルイスと妻のレイチェル。もうすぐ10歳になる娘エリーとまだ小さな息子ゲージ。そして猫のチャーチ。4人と1匹で住むには十分な大きい一軒家。しかも裏にある森もルイス邸の敷地。

…当方は海外の住宅購入事情を知りませんが。ルイスはあの家、一体誰から買ったんですか?

よく映画で見かける、家に看板立てている感じ?元の所有者?不動産屋?まあどちらにしてもいわくつきの物件過ぎるし、事情を教えずに売るなんて悪質すぎる。

 

しかも引っ越し早々、裏山には『ペット・セメタリ―=動物墓地』があると判明。結構年期のある、地元民お手製の墓地には数多くの動物が眠っていて。しかも埋葬儀式がホラーさながら。

悪趣味な動物の仮面をかぶった子供たちが、太鼓を叩きながら死体を搬送し埋葬する。そんな儀式を見てしまった、娘のエリー。

「こんなん、トラウマ案件やないか…。」震える当方。(余談ですが。当方の知る地域には、神社のお祭りの日、未明から太鼓を叩きながら男たちが界隈を練り歩くという風習があって。夜中に法被着て提灯持って、独特の声掛けをしながら太鼓を叩く男たち…初めて見た時は悪夢かと思いました。)太鼓叩いて歩く集団は怖い!禍々しすぎる。

好奇心旺盛なエリーは子供たちの後を付いて行って。その場所にたどり着いたついでに、隣人のジャドと出会う。

 

「生まれた時からここに住んでいる。」初登場時こそ不審者オーラを漂わせていたジャド。けれど以外にも気さくで。妻に先立たれて男やもめのジャドは、ルイス家の食事にも招かれたりとルイス家と親交を深めていく。そしてハロウィンの日。

 

自宅近くの道路わきで、愛猫チャーチが変わり果てた姿で見つかった。おそらく車に轢かれたと思われ、見るも無残な状態。

ルイスはレイチェルに「この機会に子供たちに死について語ろう。」と相談するが、自身の少女時代にトラウマがあるレイチェルは「まだ死について話したくない。」と拒否。結局夜中に、チャーチを見つけてくれたジャドを誘って裏山の『ペット・セメタリー』に埋葬しにいく事になったルイス。

不気味な道を辿って、やっと着いた場所。なのに…「娘にまたチャーチと会わせてやりたいか?」問うてくるジャド。そして、二人は禁断の土地まで進んでしまう。

翌日。両親はエリーに「チャーチが逃げた」と説明したが。「チャーチはずっと居るよ。」

まさか。けれどまさかの…チャーチは生きていた。

 

「あれは一体何なんだ。」「あそこは死者が蘇る土地だよ。」

 

ルイスって。仮にも医者なんですよ。いやまあ、医者がそういうの信じちゃいけない訳じゃないですけれど。現象が非科学的すぎて。

そもそもルイスはボストンでの生活の何に疲れたんですかね?医師としての勤務が忙しすぎて、家族との時間が取れなかったみたいな事は言ってましたけれど。何となく救命救急の医師なのかな~と思って観ていましたが。そりゃあ、都会での仕事は多忙でしょうけれど…田舎町の数少ない病院で救急外来って、下手したらもっと大変かもしれないのに。

実際、地元の学生とかいう青年が事故に遭ったと救急搬送。「脳が見えています!」(脳‼そこ、脳ですか‼)というエマージェンシーに全く対応出来ない医療現場。おいおい…まずは気道確保の大原則が…。後スタッフが少なすぎる。心臓マッサージはそこの嫌な顔した女に任せて、あんたは基本的行動を‼

 

「ここはヤブだ…。」という自己嫌悪的落ち込みではなく、何故かナーバスになるルイス。以降も、何かといわくありげに登場してくるその学生に「祟られているのか?」と思うでもなく、学生の予言めいた言葉に心をざわつかせていくルイス。

 

妻レイチェルの少女時代のトラウマというのもなかなか。ですがこれ、当方に言わせると「レイチェルの両親によるネグレクト案件だろうが!こんなの、児童相談所に通報するレベルやぞ!」

レイチェルよ。精神的に不安定になった時に優しくハグしてくれるその夫に、然るべきクリニックを紹介してもらいなさいよ。お話をきちんと聞いて、必要ならばお薬処方してもらって。こんな田舎の事故物件に引っ越ししてないでさあ。だって案の定、怪奇現象が連発してトラウマをガンガン刺激されてしまっているし…。

 

死んだはずのチャーチが戻って来た。けれど…何だか様子がおかしい。見た目もみすぼらしいし、何より性格が違う。どうして?

「あの土地から帰ってきた者は、狂暴になる。」

 

愛する者を失った痛み。例えば長らく家族として一緒に暮らした白猫を失った事を想うと、今でも胸が締め付けられる当方。(18年も生きて寿命を全うしてくれたので、こういう唐突な別れではありませんでしたが。)

今でもあの時の感情は思い出せる。「どうしてこんなに想っているのに、もう会えないんやろう。」「いつでも帰っておいで。」

夢では時々会える。でも現実では二度と会えない。寂しくて。随分長い間、その感情に折り合いをつける事が出来なかった。

 

「でも。帰ってきてはいけないよな。」

生死を人間がコントロールする。医師であるルイスは病気の患者を救う事は出来る。けれどその対象はあくまでも『生きている者』であるはずで『死んだ者』に手を出す事は、件の学生の言葉を借りると「境界線を越えるな(言い回しうろ覚え)。」という事になってしまう。

 

「ああもう~。キングは本当にメインまでの道のりが長い。」

(あくまでも精神的に!)早漏な当方はいつもキングの焦らしには苛々してしまう。

「娘が不慮の事故で亡くなって、いわく付きの土地に埋めたら…化け物になって帰ってきた。というネタバレはもう事前に分かっているんだよ!そこまでの下りが長い!もっと頂戴!早く頂戴!」

 

随分と丁寧にネタバレを積み重ねてきましたので。帰ってきたエリーのどんちゃん騒ぎは、サクサクすっ飛ばして。思った事(主に突っ込み)を。

「シャベル一つで墓地から棺をほっくり返して、あの土地まで連れて行って…当方なら初めのほっくり返す時点で朝を迎える。ルイスは人間重機か。」

「何故、かのトラウマの地(実家)に戻るんだレイチェル!。」

「何故自宅に手術用メスを持っているんだルイス。(そんな奴おらん)そして…そんな円刃刀(先が尖っていない)(しかも錆びていそう)で踵が切れるか!そして人をメッタ刺しなんか出来るか!あんたどんな怪力だ!」

 

おいおいおい。怒涛の畳みかけで風呂敷を閉じていく様に「どうやらこの田舎町には病院だけでなく、まともな警察も居ないらしい。」段々笑うしかなくなってきた当方。

そして…最終的にはまさかの「幸せに暮らしましたとさ」。

 

最後に言いたい。この事故物件を取り壊さずに放置して。挙句何も知らない家族に売りつけた。何よりその相手こそが一番の元凶。そいつの顔が見てみたいです。