ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「いちごの唄」

「いちごの唄」観ました。
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岡田恵和監督+峯田和伸コラボ作品。

 

「7月7日。愛し合う二人が、一年でたった一日逢瀬が許される。そんな日に僕たちは再会した。」

 

田舎町に住む中学生。コウタと信二、そしてあーちゃんこと天野千日。

三人に起きた他愛もない、けれど取返しの付かない出来事。埋められない傷。

数年後。再会した事で明かされた、信二とあーちゃんの絆。

果たして。一度死んでしまった心はどうやって生きていけばいいのか。

 

最近、個人的にあまり触れなくなってしまった『邦画』というジャンル。

ちょっとでも気を抜けば幾らでも公開される映画作品に於いて。『邦画』『オリジナル脚本』という作品の少なさ。若手監督はなおの事。故に、少しでも「あ。これは。」と見掛ければ積極的に観ていきたい。そう思って。鑑賞しましたが。

 

「ああ。なんかこれ…。」

はっきり言うと「銀杏BOYファンとか。そういう人たちには受け入れられるのだろうけれど…。」「甘い。甘ちゃんすぎる。」「そういう甘さを好む人たちが居るには居るのだろう。」

おでこにこぶしを当てながら、非常に歯切れの悪い言い回しをする当方…だって。だってツッコミどころが多すぎて。

 

「何て言うか…演技指導?なのか。主人公コウタを筆頭に、全体的に皆『舞台演技』過ぎる。」

主人公笹川コウタを演じた古館雄太郎。本職の俳優ではないと見ましたが…それにしても演技がアレ過ぎる。

「えっ?コウタって何かあるの?」そんな邪推までしてしまった、コウタの演技のわざとらしさ。そして彼の両親と弟の、コウタに対する気の使い方。(そりゃあまあ、中学生という多感な時期に起きたあの事件を以って精神的に不安定な部分を持った…ってありそうですけれど。そんなんじゃなさそうなんですよね。コウタはただただ天真爛漫なだけ。)

 

「こんな大御所俳優までもが…過剰な演技をしている中で、あくまでも自然に役を全うしようとしている。」当方がそう思ったのが、ヒロインの天野千日を演じた石橋静河と主人公コウタと同じアパートに住むアケミこと岸井ゆきの

 

幾ら何でも不親切なんで。ざっくりあらすじを書いていきますが。

 

田舎の中学生だったコウタ。ある日。通学路の坂道をブレーキを掛けずに自転車で掛け降りる同級生信二と出会う。信二の翻弄さに惹かれるコウタ。急速に距離の縮まる二人。

しかし。七夕の日。二人が慕っていた同級生の女子、あーちゃんを守って命を落とした信二。

数年後。東京で暮らしていたコウタは、偶然七夕の日にあーちゃんと再会する。

 

東京っていう砂漠は、突然アスファルトの上で思ってもみない相手と引きあわせるもんなんですね。ってそんな奇跡もさながら。一体どういう時間の使い方なのか。「先ず近くのラーメン屋に入ってボロクソ言ってからどこかに繰り出す。というルーチンワーク。」(このコメディパートもそこそこ寒いコント仕様。)どうやらひたすら喋りながらそこいらを歩き回るという安価なお散歩デートを繰り広げ。「じゃあまた来年。この時間、この場所で。」というローコストかつ不確かな次回公約で解散。

 

「うわああ。よくこんな気の長い約束で精神を保てるな。」

 

電話を携帯する世界線で。こんな不安定な口約束によく一年も待てるな…そう思う当方は汚れた大人なのか。

 

あーちゃんとの逢瀬を心待ちにする一年の中で。否応なく大人にならざるを得なかった案件。

「いやいやいや。童貞喪失のパターンの中で一番いいやつやないか。それは…アケミさんのスペックの高さ故やけれど。」

それとは別に。大地震が発生、心の拠り所を失った女子学生に音楽を渡した事。

 

一年に一回。かつての同級生コウタと会う事で、自身の深い傷を癒してきたあーちゃんこと千日。

「ずっと変わらないね。」何年の月日を経ても尚。どこか中学生の面影を残していたコウタに。安心しながら。けれどコウタの「変わらない」優しさを見逃す事が出来なかった。

一緒に居たら落ち着く。だってコウタは私に憧れを抱いているから。

「あーちゃんは素敵。」そういう好意の気持ち良さ。けれど。

何回かの逢瀬で。次第にごまかせなくなってくる。「どうして?」

「どうして私にそんな感情を抱いているの?」「私はそんな人間じゃない。」

私はつまんない人間なのよ。私は愛される価値なんてないのよ。そう思うと遂に耐えられなくなった。「もう。会うのを辞めよう。」

 

けれど。突然千日に幕を下ろされたコウタはたまったもんじゃない。

あーちゃんは天使。あーちゃんを命を掛けて守った親友を知っているコウタにとって、あーちゃんが誰かにないがしろにされる現状なんて想像もつかない。

 

ねえ。あーちゃん。もっともっと。あの時の話をしない?

あの時だって。そして今だって十分素敵なあなたと。これまでとこれからの話をしよう。

哀しい出来事を忘れる事なんて出来ないけれど。それに押しつぶされてはいけないんだ。

もう幸せになっていいんだ。一緒に前を向いて生きて行かないか。

 

~という、当方最大級のポエミー要素を動員。そういう話だと思っているのですが。

(現在自家中毒で瀕死状態です)

 

「そもそもさあ。車道をブレーキ無しで降下って。で畑にダイブって。いつ事故にあってもおかしく無い。同情出来ない。」(実際事故に遭ったのは違う要因でしたが)

「同じ地域に越してきて、流石に誰にも気づかないっていうのは無いよ。」

「トラウマ克服に、同じ道路を降下する下り。いくら何でもいい年した大人がさあ。車道使ってって。あかんやろ。」

「ほんま。名だたる脇役俳優達が出ているんやけれどなあ。なんか…勿体ない。」

「…良い事言おうとし過ぎているんかなあ。」

おいおいおかしくないか。口を開いてしまえばあれこれ言いたい事は止められないけれど。

 

「ただ。一つだけ言える。当方は石橋静河さんが好きなんだということ。」

決して綺麗だけでは納まらないのに…彼女の透明感。堪らない。

 

アンバランスな邦画作品。正直ベタ過ぎて乗れない所もあるけれど。それでも憎めない。嫌いじゃない。不格好で…愛おしい。

 

兎も角。これから二人はもっと会える。新しい時を紡ぐ。それが続きますように。あれこれ言う前に、そう思ってそっと後押ししたい作品でした。