ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「20センチュリー・ウーマン」

 .「20センチュリー・ウーマン」観ました。
f:id:watanabeseijin:20170629074127j:image

1979年。カルフォルニア州。サンタ―バーバラ

15歳の少年ジェイミーと、その母ドロシー55歳。シングルマザーで母子二人。

母親はこれまで割と寛容に、オープンに息子を育ててきた。でも。

難しくなっていく、息子との関係。ある時、母親は息子の幼馴染みの17歳のジェイミーと、下宿人の若い写真家のアビーに「息子の教育を手伝ってほしい」と頼む。

同じく下宿している唯一の成人男性ウイリアムも加え。

歪で。不器用で。そんな彼らの姿を描いた作品。

 

「ああ。この少年はいい男になりますよ」

 

15歳ってこういう感じやったっけ?そう思ってしまうくらいに分かりやすいピュアさを持つ主人公ジェイミー。

15歳は、下手したらもっと尖がって、母親なんて突っぱねて。そんな風でもおかしくないのですが…。

 

兎に角あの母親が素敵過ぎる。「どうして学校を休んではいけないの?」子供の頃。病気でもないのに休みたい、そんな息子の要望に対して、あくまでも明るい雰囲気で休ませた母親。

子供だからといって見くびらない。聞くべき意見はきちんと聞いて。相手の思いを尊重して。でもやっぱりおかしいと思ったら隠さず言う。

「でも忘れない。ユーモア感覚」

がっちがちの価値観で相手をがんじがらめにしないように。年上だと相手がかしこまらないように対応する。ちょっとしたユーモア。柔軟性。

「そしてフランクさ」

ご自慢の車(年代物)がスーパーの駐車場で突然発火。その消火作業に当たってくれた消防士をディナーに招待する。それには思わず息子も突っ込むけれど…結局その消防隊員達はディナーに参加。その窓口の広さ。

「でも。そんな自分が今。息子と上手くいっているのか分からない」

そんなに難しい少年だとも思わないんですがね…迷える母親は、息子にとって身近な同年代な女性二人に「生き方を見せてやって」と持ち掛ける。

 

正直、この話には劇的なハイライトがある訳では無く…いやいや丁寧に観ていけば常に色んな事象と感情は渦巻いているのですが。如何せん、お疲れボディで鑑賞してしまうといつの間にか眠りに落ちてしまうというという単調さで進行するのですが。

 

…当方は歳を取ってしまい、つまんない大人になってしまいましたんで…この若い女性二人に関して「本当にあんたたちは若いんやなあ~危なっかしい。当方がこの母親の立場ならば、一体彼女達から何を学べというやろう」と思ってしまいましたが。

 

取りあえず。写真家アビー。

子宮頸がん?を患うアビー。ロック?だかパンク?だか。兎に角刹那的なファッション、思想を持ちつつ。女性解放的な事を声だかに唱えすぎて、逆に女を強調してしまう。

「大体、15歳の少年に『オーガズム云々』という本を読ませる趣味の悪さよ」

 

そして、17歳のジュリー。

「禍々しい。こういう、ファニーフェイスの悪魔は10代の宮崎あおいはお手の物でしたよ!」

『害虫』『初恋』『好きだ』あの頃の宮崎あおいを彷彿とさせる、白い悪魔エル・ファニング

 

「15歳のジェイミーの部屋の窓から侵入。勝手にベットに入ってきて添い寝。でもエロ的な事は一切させない」

 

「舐めているのかー!!!!」(太文字ゴシック体)

 

なのに自称ビッチ。聞きたくもないセックス体験、エロ的なエピソード。でも「あんたとはそういうんじゃない」「やったら終わり」「あんたがエロに目覚めて面倒」

当方なら…自室の窓にトラでも仕留められるような罠でも仕掛けますよ。馬鹿にするなと。

 

「でもなあ。手に入らないモノを欲しがる、10代の愚かさよ」

アイツはただの顔が良いだけのかまってちゃん。都合よく甘えているだけ。傷付かない相手を見定めているだけ。

誰も私の孤独な心は満たせないといきまいて。「私はセックスで感じた事なんて無いわ」案の定風を纏いながら。…くだらねえ!ジェイミーよ!あんたこの時にこんな奴と上手くいかなくて結構!もっとまともで良い女が現れるよ!!…確かにジュリーは顔面偏差値は最高ランクやけれども。ただただ振り回されるだけやで。

 

お口が汚くなってしまいました…汚れた大人になってしまいました。

 

思わず心配になってしまう位、周囲の環境に染まってしまうジェイミー。40歳で出産したという事はいまは55歳の母親。自分では役不足ではないかと不安な母親。でも。

 

「自分が母親を大好きである事は変わらない。ずっと二人で良いのに(細かい言い回しうろ覚え)」

 

55歳。人生経験も積んで。でもどっしり構えられない。未だに揺れている自身がある事の不安。何もかもを格好良くはこなせない。というより寧ろ、もがいてばかり。

だからこそ。小娘二人(悪い言い方)に指南役を少し任せた。でも楽にはならない。それよりも、彼女達も含め、心配は広がるばかりで。

 

「どうしてそういう考え方をするの?僕はちゃんと母さんを認めているのに(細かい言い回しうろ覚え)

 

そういうやり取りに至るまでの。非常に丁寧な、視点を交互にラリーして紡いだ作品。

 

丁寧。かつ柔らかな光を纏った映像で終始お届け。

 

そんな夢みたいな青春を送った彼らの「そして私はこうなった」という未来の姿がまた一々リアル。

 

何だかノスタルジックで。甘くてだるくて。

昼間に観に行って、気だるく誘われる。まどろみに落ちる。でもそれもある意味ささやかな幸せ…そんな白昼夢のような作品でした。