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ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「帰ってきたヒトラー」

「帰ってきたヒトラー」観ました。


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「イギリスがEU離脱を表明」そんな夜に観た作品。
(まあまあ日にちが経っている。知っていますよ。知っています。色々あったんですよ。引っ越してからインターネット環境が整わないままスマートフォンを使い続けた結果、食らった初めての「通信制限」そしてやっとの文明開化。今まで「自宅で出来ない事は直ぐに家族に泣きついて解決」してきた当方のツケ。独居。…からの。「立った!立ったよクララが!」と言わんばかりのインターネット小鹿の当方の立ち上がる様。そしてやっと軌道を見つけた今…とかいうプライベートライアンはいいんですよ。くどいから)

「まさかドイツがヒトラーを題材に出来るとは。」

2014年。ドイツ。
1945年に自殺したはずのヒトラー…目を覚ました先は現代のドイツ。

そこでヒトラーを見出す、しがないフリーのテレビマン。

彼らはタッグを組み、ドイツ全土を旅する。そしてそこで出会う人々。そのリアクション。

その姿はネット上を駆け巡り。そこで満を持して売り出される「ヒトラー芸人」としてのヒトラ―。

テレビというメディアを通してドイツ国民に再度現れたヒトラー。テレビ側にしても、どう振り切れるのかは大きな賭けで。


「いやあ~上手い。上手いな~。ドイツ人って、何故かお堅いイメージがあったけれど。こんなシュールなウィットが効かせられるなんて。」
当方大満足。だって大好きやもの。こういうの。

物語の始め。単純に現代に突如として現れた「総統様」の姿に笑い。だって今はもう西暦2000年を超えている。戦争が愚かな歴史であるという認識は共通で、そこに現れたかつての独裁者のないがしろにされて戸惑う様は笑うしか無くて。でも。

現代に飛んできたヒトラーが、想像以上にすんなり事態を飲み込んだ。ここがまず気持ち悪い所。

そう。作中のヒトラー、順応力が高いんですね。

そしてこの映画の面白い所。(どこまで本物かは分かりませんが)ドキュメンタリーみたいな要素があるんですよ。

ドイツ全土をワゴンで旅する下り。ヒトラーの出で立ちと雰囲気。「大嫌い!」と嫌悪を露わにする人も居るけれども。

「えっ。総統?…ちょっと一緒に写メ撮ってもいい?」

スマートフォン片手にVサイン。ハグして。笑顔で。そんな市井の人々の多い事。
そして、思いがけず語り始める人々。

「やっぱり移民が来て碌な事になっていない」等の、思った以上にrightなご意見。シェパード犬のブリーダーにヒトラーが語った純血論。その引き込みの強さ。

かねてから言われていた。「ヒトラーが一人でドイツをああいう方向に導いたのではない。ドイツ国民の思想の大半がああいう流れに向かう中で、その感情を言語化し、先導する力を持っていたのがヒトラーだ。」(当方訳)

ヒトラーは…って知りませんがね。当方はその時代に生きた訳では無いし、ドイツ人でもないんで。ですが。

「おそらく。そこまで民を引き付けたものは『恐怖』だけではない。何らかの魅力があったんだろう。」

戦争は悪だと。誰かを見下し、傷つける行為は愚だと。我々はそういう教育を受けて育って現在に至る。その倫理観はもう消える事は無いけれど。

でも。その現代の価値観で。その物差しで「昔の人は愚かだ」とは言い切れない。

世代をたかだか2、3くらい遡った位で、人間の本質が変わるものか。

ヒトラーの「昔も悪い事ばかりじゃなかったじゃないか」とテレビを通して民に語る様。そして、あのお婆ちゃんの「始めは皆笑っていた。でもいつのまにかとんでも無い事になっていた。」この同じ時代を語る二人の言葉。
そして「ユダヤ人の事は笑い事じゃないぞ」「勿論笑い事ではない」かつての惨劇を否定する言葉と、元々の差別的な言葉。説明、修飾語も無い時、このやり取りが表すのは、実は何も分かりあえてはいないという恐怖。言葉は全くキャッチボールのていをなしていない。

視点の違い。恐ろしい。

そもそも、あのドイツ全土弾丸ツアー。ホテルでテレビを観たヒトラーの言葉「プロパガンダに最適だ」

あのテレビマンからしたらネタ集めの動画撮影。でも、そこに乗っかりながら同時に現代のドイツ国民の考えを。情報収集に活用していたヒトラー

そして。満を持して民の前に現れるヒトラー

テレビの「面白いものを発信すれば視聴率が取れる」という考えと、ヒトラーの「現在の民にフィットさせた新しい政策(と言う名の後退)の舵取りをしたい」という野望。その利害関係の一致。

まあ、実際に面白くはあるんですがね。コメディアンだとしたら。

でもその薄ら寒さ。段々笑えなくなってくるストーリー展開。


「あのテレビマンの可愛さ。純粋さ。あいつ。ええ奴やのにな。」

ええ歳。マザコンで。好きな女子にも何も言い出せなくて。でもヒトラーを見出した事で、踏み出していく世界。そしてラブ。

「ええ奴やのにな…。」

そんな彼の顛末に思いを馳せながらも。やっぱりドイツがこういう作品を生み出せた事に、驚きと…興味を抱きながら。

「もっと色んな人が観たら良いのに。」

単純にそう思えて仕方ありませんでした。

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