ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ストリート・オブ・ファイヤー」

ストリート・オブ・ファイヤー」観ました。
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『ロックンロールの寓話』

 

米1894年公開。ウォルター・ヒル監督作品。

互いに未練を残す元恋人。流れ者トム・コーディをマイケル・パレ、ロック歌手エレンをダイアン・エレン。

陸軍上がりの元女軍人マッコイをエイミー・マディガン。ギャング集団のボスをウィレム・デフォーが演じた。

 

ギャングが闊歩する、治安の悪い街。けばけばしいイルミネーションが瞬くこの街の若者の娯楽は劇場で聞く音楽。ロック歌手エレンは皆の憧れであり劇薬。この夜もエレンのコンサートに劇場は最高潮に盛り上がっていた。

そんな中。ギャング集団『ボンバーズ』がコンサートに乱入。大暴れした挙句、エレンを奪い去っていく。

同じ頃。姉からの電報を受け、街に帰ってきた流れ者トム・コーディ。そして知らされた、かつての恋人エレンの誘拐。

エレンを救い出すため、ボンバーズの本拠地に挑む。

 

「カッコいいとは、こういうことさ。」

 

当方の脳内に住む紅の豚が。こちらに向けて終始親指立ててキメてくる、そんな映画。

「男って奴は。(違う、この場合は漢っていう漢字やな)こういう愚かな生き物なんだぜえ~。」「漢は惚れた女の為には命だって惜しくないぜえ~。」「漢は誰しも戦わなければならない時がある。」歯が浮き過ぎて自然に抜歯してしまいそうな。そんな映画。

 

1984年。当方もこの世に生は受けていましたが。如何せん読み書きすらも未就学状態。当然リアルタイムでは鑑賞しておらず。よく行く映画館の予告を観て「面白そう~。」と思って見に行った次第でしたが。

 

「一言で言うと、最高でした。」

 

多感でこじらせまくっていた10代。スカしていたり、甘ちゃんだった20代。そんな時にこの作品に出会わなくて良かった。すっかりくたびれてしまった今。今だからこそ当方のやらかい所に沁みに沁みた作品。(80年代に青春真っただ中だったならば話は別ですが)

 

「全力って素晴らしい。」

 

10~20代。そういう背伸びをして虚勢を張っていた。全力を出している奴は何だか恰好悪い。余裕が無い奴は恥ずかしい。そう思っていた時代が当方にもありました。(結局それは同族嫌悪なんですけれど。余裕ぶっこいてる若者なんて本当は居ませんから)

けれど。「な~にスカしてんの。」だらしなく何かにもたれかかる現在の当方からしたら。全力疾走で駆け抜けるこの作品そのものが眩しくて。

 

お話自体は非常に単純。街の歌姫エレンがギャングに誘拐された。彼女を救いに行ったのはエレンの元彼トム。互いに嫌いになった訳では無かったのに、別れてしまった二人。未練を残しながらも強がる二人。

流れ者のトム。俺は根無し草だと。だからエレンを大切に出来ない、人気ロックスターになりつつあるエレンには優しく包む堅実なタイプが似合うからと強がるトム。

実際劇場支配人と今は付き合いながらも。トムが忘れられない、そんなエレン。

街に帰って来た時に知り合った元軍人のマッコイ。エレンの現在の恋人支配人。彼らと共にエレンを奪ったギャング集団『ボンバーズ』(ダセえ‼)の本拠地に乗り込み。そして(結構あっさり)エレンを取り戻し。

しかし。焼き討ちレベルの討ち入りに激上したボンバーズの面々が。大群率いてトム達の住む街にやってきた。

 

~という。『行って。帰って。付いてきて。決闘』という。『マッドマックス怒りのデスロード』みたいな行ったり来たりするお話なんですよ。大枠は。

 

まあ。何から行くべきなんでしょうかね。取りあえず「やっぱり面白かった1980年代ファッション」ですか。

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ウィリム・デフォーが若い!そして「何その恰好」と何度も見てしまう『裸に魚河岸の人が履くサスペンダー一体の撥水加工のズボン』という香ばしさ。

恰好良いの権化であるトムだって。コートを脱いだらいきなりノースリーブのシャツ。

女性陣のファッションは意外と「そういう時代やったんやなあ~。」見れるのですが。男性陣のファッションには笑ってしまう。

 

そして。元軍人マッコイ。

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街に帰ってきたトムとふとした事で知り合って。エレン救出にも関わった。

(変な言い方ですが)女性でありながら。誰よりも男らしかった。トムの右腕。

「女は直ぐに寝すぎなんだよ。」トムと夜の街で知り合って。トムの姉の家に一緒に泊まりながらも。決して色恋沙汰には発展しない。「あんたは好みじゃない。」そう言って。けれど恋を知らない訳じゃ無い。「どうしようもない恋をした事があった。」

「惚れてまうやろ~。」当方の胸をぐんぐん締め付けたマッコイ。登場から幕引きまで全てが完璧な登場人物。

余談ですが。電車通勤の当方。毎朝至近距離で見掛ける、推定~50台のまだら白髪でおかっぱのとある女性に対して「せめて髪を括るとかしてはどうかね」「一切の潤いが無い。獅子舞。又はスーパーハボキ化している」と悶々としていましたが。

「彼女はマッコイだ」と言い聞かせる事で精神の安定を図る日々。

 

そして。劇中歌。
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作中の歌が。音楽が。「これ。ミュージカル映画と言っても差し支えないな」」と思う程のクオリティー。登場人物達の乗り合わせたバスで黒人グループ歌手の歌には思わず当方も登場人物達と同じく笑顔になってしまう。素敵過ぎて。

 

「でも。やっぱりエレン最強。」

 

ダイアン・レインが歌っていなくても。この歌は彼女が歌っていると。今後はそう思うであろう当方。

 

「ていうか。これ『ヤヌスの鏡』の曲じゃ無かったんか。」

ヤヌスの鏡だってリアルタイムではありませんが。子供の時ふと再放送を見て。面白過ぎて釘付けでした。)

 

いきなりトップギア。冒頭のコンサートの時も最後の歌も。エレンの歌は初めから全力疾走。確かに彼女はロックスター。その説得力よ。

 

私は弱弱しく守って貰う女じゃない。そうして欲しい時もあるけれど…ずっとじゃない。

そして。「困った時はいつでも俺を呼べ。直ぐに助けに行く。」と恰好を付けて。実際に馳せ参じるけれど。俺は平凡な日常を共に出来る男じゃない。

だから二人は一緒には居られない。

 

「そして二人は永遠に幸せに暮らしました。」が嵌らない作品。

 

「ロックンロールの寓話…。」何という秀逸なフレーズ。

単純。おかしな所もある。香ばしい所もある。けれど。

それらを完全に飲み込む『THE全力』の力。ねじ伏せられて。

 

1984年から34年の時を経て。今この年齢で映画館でこの作品を観られた。これこそスクリーンで観るべき作品。貴重で幸せな体験でした。