映画部活動報告「笑う招き猫」
「笑う招き猫」観ました。
互いに27歳。かつて同じ大学に在籍し。22歳でコンビを組んで早5年。未だに若手。いまいち売れない女漫才師の「アカコとヒトミ」
家が金持ちのアカコ(松井玲奈)
売れない芸人とはいえ、働く必要は無く。「家事手伝い」としてふらふらして。破天荒で回りを振り回すけれど「売れてテレビに出たい訳じゃ無い。あくまでも舞台で漫才をしたい。自分達の漫才で武道館を一杯にしたい」と語気は熱い。そして義理堅く、自分の周りの人間を(時には過剰に)大切にする。
あくまでも普通の人。ヒトミ。(清水富美加)
OLをしていたけれど。アカコに誘われて、社会人からドロップアウト。コンビを組んで。普段は街の個人弁当屋でアルバイトに精を出し。
結婚寸前まで行った彼氏が居たけれど。浮気をされて破局。今は一人。
27歳。女性としても崖っぷちの二人。これまでも「解散だ」「漫才辞める」と何回も喧嘩して。結局「漫才しかない」「二人じゃ無いと駄目」と離れたりくっついたりを繰り返してきた。そんな二人の…また同じ流れをお見せします…という感じの作品。
「やっぱり清水富美加さんはな…勿体無い…」暗黒女子でもちらっと語りましたので。だらだら惜しむのはいい加減にしようと思いますが…ますが。
「彼女のこの勘の良さ。センス。演技力。やっぱ好きやねん」ともすればふんわりした纏まりの無い話になる所でしたが。彼女が居るとびしっと引き締まる。
閑話休題。
「27歳かあ。今の当方から見たら十分若いと思うけれど…でも確かに何をしても許される歳では無いな」
平均初婚年齢が夫30.7歳。妻29.0歳。(少子化対策白書2011年度調べ)第一子出産平均年齢は30.6歳。(2014年厚生労働省発表)結婚、出産の高齢化が叫ばれる昨今。(この文章を打つ事により、当方は謎の頭痛を発症しています)
27歳という妙齢。今すぐ結婚して子供が欲しいとは思っていない。でも、いつまでもこういう生活をしていて大丈夫なのか。
楽しかった大学生活。いつもふざけて。馬鹿ばっかりやって。そんな仲間達とつるんでいた。いわば今の自分はその延長。でもそれで良いのか。
あの頃と同じでぶれないアカコ。好きなもの。やりたい事がはっきりしていて。曲がった事は大嫌い。相手がおかしいと思ったら、たとえ先輩でも事務所社長でも喰ってかかって。でも悪いと思ったら謝れる。
アカコは永遠の(精神的な意味で)大学生。働く必要も無くいから、世間ずれも無い。でもそれは致命的な欠点でもある。アカコの放つ言葉は真っすぐだけれど…苦労を知らない(社会人的な意味で)アカコの言葉は時に説得力を失う。「お嬢様の戯言だろう」と。
そんなアカコを時には苦々しく思いながらも。結局は切り捨てられないヒトミ。(その煮え切らなさは「昔浮気されて別れたはずの彼氏」を切れない姿にも通じる)
二人を軸に置きながら。
大学の同級生達。(見事に男ばかり。あんたら同性の友達他に居らんやろう…それあかんで)近所に住むいじめられっ子の中学生。弁当屋の店主。事務所先輩。マネージャー。社長。ヒトミの両親。
「ちょっと…エピソード多すぎるかなあ~」
一緒に馬鹿ばっかりやっていた仲間達。きちんと稼業を継いだ者。何だかんだ今の仕事にやりがいを見出した者。社会人になって潰れそうになっている者。
いじめがローテーション制になっていた中学生。なのに自分の所でその流れはストップし。言いたいことが言えずにもがいていた彼の突破口。(あんた!『14の夜』のジャルジャル顔少年やんか‼)
弁当屋の店主。そのナイスすぎるキャラクターと危ない恋。(諏訪太郎氏と岩井堂聖子って。当方得としか言いようの無い絶妙なキャスティング。至福)
ちょっと売れてきた事で調子に乗った先輩。彼らとのひと悶着のせいで二人はまた解散の危機に合い。かと思えば彼らのお蔭で売れていく。そしてアカコとヒトミを見出して、ずっと支えてくれたマネージャー。
「どれもこれも気になるエピソードやねんけれど…多すぎるんよなあ~。お蔭でメインの二人が浅くなってしまう」
漫才監修「なすなかにし」ベテランの作った漫才ネタ。
主役二人の息もきっちり合って。最後の漫才なんてそれなりに面白かったし、舞台での二人のやり取りも凄くそれっぽかった。でも。
「川原で練習する姿もあったけれど。それでもこの二人は漫才に向き合う時間が少なすぎる」
当方はお笑い芸人ではありません。ですが。
昔々。今とは違う所で独居生活をしていた時。そこがたまたま「某お笑い養成所」の近くで。仕事からてくてく歩いて帰宅する途中の公園で。よく芸人の卵の人達が練習をしていました。
「お前それ…仏像やなくて太陽の塔やんか」どういう流れなのか、耳に飛び込んできたそんなセリフ。
映画で語られない所で。アカコとヒトミは必死に練習している…んでしょうが。
「崖っぷち女芸人。でも漫才で生きていきたい。舞台で頑張りたい。そう思うなら。喧嘩しても何でも、もっと頻繁にネタ持ち寄って、喧々諤々しながら練って練って練習するもんなんじゃないの?」結句どちらも漫才に対してそこまでの本気が見えない。小器用にネタをこなしている様に見える。何が何でも売れてやろうという勢いも感じない。
「所詮お嬢様じゃん」「男の事とかさあ」そんなので喧嘩している余裕なんて無い。本気で自分たちの漫才を聴かせたいのであれば、もっとどっぷり漫才に浸かれよと。
(後、これは完全に当方の耳の癖なんですが。声の高い女性がハイテンションで声張り上げていると…聞き取れなくなる時があるんですよ。なのであの『ハイライトとしか思えない雨のバッティングセンターのシーン』正直…アカコの声が全然判別出来なくて…あれは不本意でした)
何となく紆余曲折しながらも、収まるべき所に話は着地しましたが。
「練習らしい練習もせずに対バンライブとか。舞台に穴開けかねんとか。あり得へんけれどな…」
最後。彼女たちの漫才を見ながら。急な説教爺の出現と、そいつに取り込まれた、お笑いの国に住む当方。