ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ハウス・オブ・グッチ」

「ハウス・オブ・グッチ」観ました。
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リドリー・スコット監督の最新作は1990年代に起きた『華麗なるグッチ一族のお家騒動』。

1995年3月27日。イタリアミラノで起きた衝撃の事件(ネタバレしない方針です)。

果たしてグッチ一族に何が起きていたのか。

 

ブランドモノなどほとんど所持しておらず。そしてそれらの歴史にもとんと疎い当方。「え。グッチって」「そんなことがあったの」豪華キャストと面白そうな予告編につられて、完全に予備知識なしで鑑賞したら…「こんな昼ドラあれへんでえ~」の連続。

 

「こんな事件がおきたら、さすがに気づいた気がするのに」そう思ったのもつかの間。事件発生は1995年。しかも3月。

1995年の日本は、年明け早々阪神淡路大震災が発生。そして3月には地下鉄サリン事件が起きた。天災と人災で、海外のお家騒動には目が向かなかった。

 

閑話休題

つまりは、家族経営だったグッチの経営主導権が三代目のマウリッツオ・グッチ(アダム・ドライバー)に移ったところで、一族が空中分解し破綻した。そういうお話。

 

中盤までは、マウリッツオと妻・パトリッツア・レジャー二(レディー・ガガ)のなれそめから結婚、そしてグッチ一族の中でのし上がっていくさまを追い。夫婦仲が破綻して以降は「悪い虫を排除しながら」グッチがどう立て直されていったのかを描いていく。さすが早撮りのリドスコ。どこか一点にとどまることなく、初めから最後までサクサクドライに展開していく。

 

この作品は、イタリアの方たちはどう見たんですかね?まあ…グッチが一切コメントを寄せていないところで何となくお察ししますけれど。

だってこれ…コメディ映画やもの。

 

中流家庭出身のパトリッツア。パーティで出会ったマウリッツオがグッチ一族の御曹司だと知った途端に猛アタック。女性慣れしていないマウリッツオなんて赤子の手をひねるがごとく篭絡したけれど、彼の父親であるロドルフォ(ジェレミー・アイアンズ)には「金目当てだ」と見抜かれていた。

晴れてマウリッツオと結婚したパトリッツア。はじめこそ父親に絶縁されていたけど、ロマンチストなところをくすぐったら心を開いてくれた。やっとグッチ一族の仲間に入れてもらえたところで父親の死去。経営権をなんとか譲り受けた。

残る家族は叔父のアルド(アル・パチーノ)とボンクラ息子のパオロ(ジャレッド・レト)。パオロが親を潰すのをそそのかしたり、残されたパオロの自尊心を持ち上げてからたたき落としたりと、自分たち夫婦だけが経営陣に残れるように画策した。

 

「私たち二人なら何でもできる」けれど次第にマウリッツオは妻パトリッツアが疎ましくなってくる。ヒステリックで恩着せがましい「私がいないと何もできないくせに」とののしってくる。あおもうっとうしい。偉そうに。

 

レディー・ガガの演技。ややオーバーなくらいでしたが、わかりやすくはまっていた。パトリッツアの、絶対にのし上がってやろうというガツガツした熱量。そしてマウリッツオに捨てられてから、愛憎が極端なベクトルに向かう暴走っぷり。とにかく終始燃えている。

そしてアダム・ドライバー。ふにゃっと顔を崩して笑うアダム・ドライバーをここ一年分は見た気がしましたが…父親に絶縁されて、パトリッツアが働く運送会社に転がり込んでいた時の彼が一番楽しそうだった。

アル・パチーノはやはり貫禄があって楽しい。後、ジャレッド・レトはやりすぎ。

 

父親のロドルフ。叔父のアルド。いとこのパオロ。そしてマウリッツオ。結局、グッチ一族の男たちは誰一人経営もデザインもできない…けれど彼らを取りまとめようとするパトリッツアはいささか欲が深すぎて下品。一族の誰がグッチを牛耳っても食いつぶすのは時間の問題。ふさわしくない。

そう思うと、ロドルフォが信頼していた人物が、虎視眈々とグッチというブランドを守る行動を進めていたんだなと思った当方。

 

まさかの「この事件の裏には占い師が…」という背景。パトリッツアと、彼女のお抱え占い師、ピーナ・アウリエンマ(サルマ・ハエ”ク)とのやり取りなんて「安野モヨコの漫画世界」みたいなノリ。

 

結局、豪華キャストと大御所監督による壮大な昼ドラコメディ映画。

実話ベースだし、起きたことは何一つ笑えないのだろうけれど…随分コミカルに仕上げたなという印象。

(当方は英語もイタリア語もリスニングできないので「おかしなイタリアなまりで英語を話す違和感」についてはわかりませんでした)

 

事実は小説よりも奇なり。この作品をきっかけに実際の出来事を少し調べてみたら「こんなことがあったなんて…」と驚くばかり。今現在のパトリッツアにも思わず苦笑い。

 

ところで。当方がやや気になるのは「マウリッツオとパトリッツアの間に生まれた娘」。実際には二人存在していて、一人は親と和解していると。

 

「ではもう一人は…?」

また蒸し返された、両親の話題。面白おかしく描かれた家庭の事情。もう一人の娘の気持ち…察することはできませんが…気になっています。