ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「整形水」

「整形水」観ました。
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ルッキズム(Lookism)とは、「外見に基づく差別」であり、特に「身体的に魅力的でないと考えられる人々を差別的に扱うこと」を指す。外見至上主義という呼称もほぼ同義として扱われる。/Wikipedia

 

あるタレント事務所でメイク担当として働くイェジ。彼女は幼い頃から容姿に強いコンプレックスを抱いていた。

美人だけれど性格は最悪なタレントに馬鹿にされ、挙句たまたま人手が足りないからとテレビ番組に暴飲暴食キャラで参加させられた。

帰宅後。いつものお楽しみ、ネット上にタレントの悪口を書き込もうとしていたら…テレビ番組に出演した自分への辛辣な書き込みを見つけてしまう。

余りのショックに打ちのめされ、引きこもっていたイェジの元に届いた小包。その中身は『整形水』と書かれたボトルと取り扱い説明ビデオだった。

 

LINE漫画で掲載されていたというオムニバス作品『危々怪々』の中から生まれた韓国アニメ。といっても当方はこの原作漫画は全くの未読ですが。

 

主人公のイェジ。お世辞にも綺麗とは言えない容姿。加えてお酒を飲みながらのドカ食いからかなりのだらしなボディ。タレント事務所のメイク係として働き、日々美人タレントの理不尽な八つ当たりに耐えてきた。

理不尽な八つ当たり…これがまた「辛気臭い顔して」とか「豚が」とか「同じ部屋に居るだけで腹立たしい」などのどうにもならんやつ。ヒステリックな言い回し+物を投げつけてくるという「一体お前どうしたんだ」と寧ろタレントの精神を案ずるほど。

とはいえ、イェジも決して耐え忍ぶ品行方正キャラではない。両親と共に暮らす団地に帰宅した後は、酒とジャンクフード片手に自室でネットサーフィン。口汚くタレントの悪口を描き込んで憂さ晴らしをするという行為にふけっていた。

ある日。人が足りないからと嫌々参加したテレビ番組。そこで暴飲暴食する姿がネット上で爆発した。自宅で立ち上げたPC画面に一斉に現れた自身への誹謗中傷。「人じゃない」「醜い」「豚だ」…耐えられなくて、出勤どころか自室からも出られなくなったイェジに届いた小包の中身は「思い通りの姿に自分を変える事が出来る」という『整形水』だった。

手順を示したDVDを基に自分に試してみたら…見違えるような姿へと変身した。

見た目が変わったら周りの自分への扱いも変化した。美しいって気持ちがいい。

「もっと綺麗になりたい」「こんなもんじゃ足りない」「もっと」「もっと」

イェジの欲望は次第にエスカレートしていって…。

 

確かに実写では映像化不可能。元々のイェジと整形水を経て変わったイェジでは絵柄から違う。けれどその見た目の問題だけじゃない。整形水でどうなるのかという過程は実写でやったら映画館では流せなくなってしまう。それくらいにグロテスク。

 

ところで…「整形水の仕組みってどうなっているんですか?」言わない方がいいに決まっているけれど気になって仕方がない。顔なら洗面器、全身ならば浴槽などに水(お湯)を貼り、4分の1の整形水を入れ、顔ないし全身を既定の時間浸す。その後、メスなどの刃物で余計な肉をそぎ落としていく…ってメス?刃物?削ぐって…皮膚はまた生えてくるってこと?でも用法容量を守らなかったら顔や体が溶けるんですよね?一体整形水の成分は何なんだ。(使用後の水…自然に有害そう。排水溝を痛めるか詰まらせそう。)

そして、一体何の目的で生産されてどこが取り扱ってどこが販売元なんだ。途中までは「この女性が整形水のディーラーだな」という人物がいたのですが。彼女が舞台から降りてしまってからはこの製品の出どころも謎。(一応、例のあの人が黒幕って事でいいんですよね?)開発・製造工程や販売ルートなどの実態、知りたいのに〜。

まあ、本編が「そんなガイアの夜明けはやらん!」と謎解きしてくれませんので、整形水の謎については深追いできないのですが。

 

本編85分とコンパクトな尺度なのですが、「どこに連れていかれるのか」「どこでどう落としどころが来るのか」が最後まで分からなかった。

容姿にコンプレックスがある主人公が美しい容姿を手に入れる。新しい自分に酔いしれていたが、欲を出してしまい一旦地に落ちる。また這い上がり…などのありきたり?には収まらない。見た目が変わったからと言って心も美しくなった訳では無い。美しさを武器にのし上がろうとしていたかと思うと急に弱気になる。兎に角主人公イェジのメンタルと行動のアップダウンが激しい事と、立ちはだかる出来事の「毎回ハイライト感」からどこが最終地点なのかが予測できず。

 

なので。最終「こういう落とし方か~」という奇抜さにニヤニヤ笑いが隠せなった。「最早ルッキズムへの警鐘、とかの次元じゃないよ~。」なんていうか…『笑ウせぇるすまん』的な不穏さ。

ネタバレしないでいくつもりなんでこれ以上言えないですが「イェジ、意外と清い交際をしていたんやなあ」という感想。

 

「美容に対する意識が高い韓国における、ルッキズムに対して警鐘を鳴らす作品」なんて先入観で観に行ったら、想像以上の斜め上な展開を繰り広げる。そして「最早何をみせられているのか」という場所まで連れていかれた挙句置き去りにされた。そんな気持ち。此処まで振り切れていると清々しくて笑顔になってしまう。

 

チョ・ギョンフン監督デビュー作。

面白いか面白くないかはその人次第です。