ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ライトハウス」

ライトハウス」観ました。
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ロバート・エガース監督作品。主演、ロバート・パティンソンウィレム・デフォー

 

1890年代。ニューイングランドの孤島にある灯台が舞台。4週間の間、灯台と島の管理を任された二人の灯台守。

年配でベテランのトーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)と若者で新米のイーフレイム・ウィンスロー(ロバート・パティンソン)。

第一印象から最悪。偉そうで意地悪で口煩いトーマスに辟易しつつも、言われる仕事を真面目にこなすイーフレイム。なのにいつまで経ってもトーマスはイーフレイムを灯台の天辺には立ち入らせてくれない。

それでも何とかコミュニケーションを取れるようになったかと思ったのもつかの間。

嵐のせいで、迎えの船が来られなくなった。

 

完全に孤立した環境でたった二人。食料ももうじき尽きる。

天候不順。閉塞感。相手への不信。不安。持て余す精力。壊れていく精神。拠り所が無いフラストレーションは現実を歪めていく。

果たしてこれは夢かまことか。

 

〜という感じの内容だったと当方は解釈。

 

1801年に実際にあった『スモールズ灯台』で出来事を下書きにしている(ざっくり言うと二人の灯台守のうち一人が亡くなったけれど、迎えが来られない状況の中、死体を棄てる訳にもいかず、死体と数か月一緒に過ごす羽目になった…この案件を受けて「灯台守は2人ではなく3人制にする」という決まりが出来たらしい)とか。賢い先人達の感想からの「ギリシャ神話や民話のエッセンスも盛り込まれており云々」等々…「世の中には知見に富んだ人々が居られることよ」と、対する己の知識の浅さに溜息が出ましたが。とはいえ「知らない事を知ったかぶりする」というのはしない主義なんで。率直な感想のみで浅瀬から続けていきたいと思います。

 

全編白黒。画面もほぼ正方形。あまり音楽が流れるず。不気味な灯台の音や、鳥たちの鳴き声、風、海のうねり声。役者もほぼ灯台守二人のみ。このどこまでも窮屈な世界観。なのにその中身はコンパクトに収まらず、混沌としていて何が何だか纏まらない。

若い灯台守・イーフレムの視点で物語は進行していくので、序盤は兎に角ベテラン灯台守のトーマスの態度が腹立たしい。

「元船乗り」の自慢話。先輩だからと大きな顔をして、散々雑用係としてこき使ってくる上に本来の仕事はまともに教えてくれない。直ぐに大声で怒鳴り散らし。いつも酒を飲んでいる。

けれど。次第にイーフレムも一筋縄ではいかない男だと判明。しかも勧められても散々断ってきた酒を飲んだ所から、二人の世界は混沌へと加速していく。

 

「ああ人は酒の前には無力よの。」

当方もしがない酔いどれなので。二人が酒を酌み交わし、次第に壊れていく様には静かに頷くばかり。

楽しい時もあるんですよ。飲むピッチとテンションが合う人と飲むのは。話が盛り上がり、笑い合い、歌って踊って。けれど懺悔タイムやらが始まるともうあかん。しかも翌日に記憶がしっかり残るっているとか…気まずいし忘れて欲しい。いっそ相手もろとも末梢したくなる。

 

4週間の我慢。正直給料も良いし、手に入った金でもっと自由な生活をするんだ。そう思っていたのに。嵐の襲来。そうなると迎えの船は島には辿り着く事が出来ず、しかもトーマスが言うにはこのまま数か月孤立したままになる事もありうるという。

 

当方には神話も民話も語るすべはありませんので。率直な感想を言うと「完全に孤立した閉塞的な環境で解放される目途もない時、人は壊れるよな。」ということ。

ましてや。たった二人なのに、どうしても信頼関係が築けない相手。

 

二人の自慰行為のシーンなんかもありましたし、酔った勢いで「おっと…危ない所だったぞ!」みたいな流れもありましたが。まあ(当方が思うに)結局はあの灯台自体が男性の象徴みたいなもんで。その天辺を独占していたトーマスが一体何を見てエクスタシーを感じていたのか。そしてイーフレムは一体何を見たのか。まあ「よっぽどエエもんん」なんでしょうけれど。

 

見事に取っ散らかった感想文になってしまいました。

トーマスから「カモメをいじめるな」と言われていたイーフレムの顛末。あれを見た時に「結局灯台の天辺にあるエエもんを体感してしまった者にはああいう顛末が下るんだな」と感じた当方。後、巨大海洋生物恐怖症の当方にとって、あの人魚は視覚的にキツかったです。

 

知見が無い当方は浅瀬で鑑賞するのみに終わりましたが。この作品の終始凄い所は「どこを切り取ったとしても画になる」という画力。センスがずば抜けている。

 

なので…当方的には久しぶりの『オサレバー映画』だったという印象(注:『オサレバー映画』オシャレなバーで無音で流れている映画。当方の造語)…いつか堂々と夜間に外でお酒を飲める日が来たら…是非ともオシャレなバーで流して欲しい。無い引き出しから引っ張りだしたうんちく語りながら、ベロンベロンで鑑賞したいです。