ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「くれなずめ」

「くれなずめ」観ました。
f:id:watanabeseijin:20210713180042j:image

ある日突然、友人が死んだ。僕らはそれを認めなかった。

 

松居大悟監督・脚本作品。

心優しい美化委員の吉尾(成田凌)。劇団主宰の鉄一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)。いつの間にやら妻帯者になっていたソース(浜野謙太)。会社員の大成(藤原季節)。地元のネジ工場で働くネジ(目次立樹)。

高校時代に帰宅部繋がりで知り合い。何だかんだ腐れ縁で繋がってきた6人組。

すっかりアラサーになった彼らが久しぶりに再会することになった、友人の結婚式。

披露宴で余興を頼まれた彼らは、かつて文化祭で披露したダンスを披露することで満場一致。それはウルフルズの曲『それが答えだ!』に合わせ、赤ふんどし一丁で踊るというもの。

前もって集まり。かといって大した打ち合わせもせずに、ただただカラオケで盛り上がる。皆が会うのは久しぶり。なのに直ぐに意気投合して盛り上がれる。やっぱりこいつらと一緒に居るのは最高。

「どうする?これもう大爆笑だぜ!」

 

…当日。披露宴終幕の後、式場を後にする6人。

終わった。痛い。ダダすべりし過ぎて居たたまれない…なのに二次会までは3時間ある。

 

「どうしますか?これから。」

二次会なんてバックレたい。でも折角誘ってくれているし…居酒屋で時間を潰すにも昼間すぎて店がやっていない、近くの喫茶店も披露宴帰りの奴らで一杯。

とぼとぼ二次会会場へと歩きながら。各々の頭に浮かぶのは、他愛もない過去の出来事たち。

 

「随分とエモーショナルな作品が公開されるな…。」

劇場予告編で見かけた時から『脳内観たい作品リスト』に挙げていたのに。

公開初日だった4月29日。当方の住む地域では映画館自体が営業休止の事態…でしたが結果的にはジューンブライドの6月に。無事この作品を観る事が出来ました。

 

高校の頃に知り合った6人。帰宅部同士で集まって、文化祭でコントをやった。

卒業して各々の進路は違ったけれど、時々集まった。

歳を重ねるにつれ。大切にするものが変わっていく。一緒に居ると楽しい。けれど楽しいばかりじゃない。互いの価値観が変わる。けれど…お前が信じている道なんだからちゃんとやれ。そういって厳しい言い方をした時もあった。だけど。嫌いになんてならなかった。

 

5年前。決定的な出来事が起きた。どうしようもない…信じられない出来事が。

俺たちは今だにそれを受け入れていない。

 

話がずれますが。当方の実家で18年一緒に暮らした白猫。

当方が高校生の時に、友達が拾ってきた5匹の子猫の内の一匹。もうこれは運命だと、出会ったその日に引き取ってそれから18年。息絶えるまで終始、我々家族を骨抜きにし、目の中に入れても痛くなかった白猫が逝ってしまって直ぐの頃を思い出した当方。

「何故こんなに想っているのに会えないんやろう。」

それが『他界する』ということなんですが。それでもそう思ってしまう位、日常に白猫が居ることが当たり前すぎて…ちゃんと息を引き取る瞬間も骨になったのも見届けたのに、不在である事に違和感を感じた日々。

18年。明らかに老衰でしたし、天寿を全うした。白猫との関りは、最後に体が弱っていく姿は辛かったけれど…何故か「こうしてやれば良かった」と思う所がない。白猫との思い出は、全て柔らかくて暖かい。

だから。いつも白猫を思い出すと、笑えて、懐かしくて…もう会えない事に寂しくなる。

 

5年前。6人の中の一人が死んだ。

ところで。予告編から既に「死んでるって誰が?!」とかを一切隠していない感じではありましたが。一応明示せずに進めていきたいと思います。

 

友人の結婚式の披露宴に呼ばれた。しかもこのメンバーで余興を頼まれている。

(あの。これって寧ろ「彼らに余興を頼んだ新郎新婦と会場に居た同級生たちは全力で盛り上げるべきでしょうが‼」と憤慨する案件だと思うんですがねえ。だって6人全員を呼ぶ共通の友人ってのが新郎新婦で、なおかつこのメンバーに余興を頼むって、やる内容をリクエストしているようなもんでしょうが。)

案の定。色んな世代と立場の人が集う社交場=披露宴で、成人男性の低クオリティの赤ふんダンスが盛り上がる訳もなく。泥水飲んだみたいな気持ちで終了した結婚式披露宴。

 

二次会までの空白の時間。けれど苦々しい気持ちだったからこそ、しけた感じの思い出がぽろぽろしたんだろうなと思った当方。

 

中盤以降。吉尾がかつて片思いしていた同級生(前田敦子)と再会した所から、物語の歯車の回転速度が上がっていく。

 

一緒に歳を重ねていくと思っていた。住む世界も場所も随分離れてしまって。家族が増えたり社会生活も違う。けれど、流れる時は同じ。またいつだって会える。

 

6人が最後に過ごした夜。その別れが余りにもあっさりしていて。どうしてもそこから起きた事が飲み込めなかった。

『訃報』を聞いた時の5人の姿が余りにも辛くて…ただボロボロと涙を流した当方。

 

飲み込めない。どうしても信じられない。アイツが逝くなんて。あの別れ…まさかあれっきりなんて。

 

正直、そこからの展開に関して若干取っ散らかっているなと思ってしまっている当方。あの畑のシーンに至っては「う~ん」と唸ってしまうくらい。ですが。

 

「おそらく。優柔不断なアイツだからこそ。5人の気持ちがちゃんと整理出来るまで付き合ってくれていたんだろうな。」無理やりそう思考を着地させた当方。

 

「アイツは逝ってしまった。会えないのが寂しいけれど…楽しかったよな。」

彼らがそう思えるまでの。披露宴から二次会までの弔いの時間。きちんと別れを告げた。暮れなずめ。

 

ところで。アラサー男性が高校生時代にウルフルズの『それが答えだ!』で文化祭の出し物ってちょっと渋いな~。いい歌ではあるけれど…。

(当方のベストウルフルズは『きみだけを』ですがね)

 

「あ~なかなか暮れないな~。」

やっと区切りをつけられた6人に、優しい夜が訪れますように。

…そして。二次会では振り切った『それが答えだ!』を踊れますように。