ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ドクター・スリープ」

「ドクター・スリープ」観ました。
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「あの呪われたホテルでの惨劇から40年。再び奴らが目を覚ます。」

スティーヴン・キング原作。スタンリー・キューブリック監督『シャイニング』の続編。」(注:キングがキューブリックの映像化作品について非難轟々だった事についてはこの感想文では触れません。何故なら…詳しくないことを知ったかぶりしては語れないから。いつも通りの『ただ思った事を書く』感想文です。あしからず。)

 

「『シャイニング』かあ。正直、あんまりよく知らないんよな…。」

劇場公開された1980年。流石にリアルタイム鑑賞では無く。そして以降『何曜日かのロードショー』でも何回もテレビ上映されている作品。ですが。

「あれやろ?化け物ホテルに閉じ込められた母親とエスパー少年が、いかれたジャック・ニコルソンに追いかけれられるやつ。」「斧片手にさあ。後アレな、ジャックニコルソンの顔ハメドア映像。」

往年のファンが聞いたら、それこそ斧片手に当方を殺しに来るだろう。そんな浅瀬もいい所の『シャイニング』認識。

「でもなあ~気になる作品はネタバレ爆弾食らう前に観ておきたいからなあ~。」

そんなフワッとした気持ちで鑑賞した、劇場公開初日。金曜日の夜。

 

「一体当方は何を観たいと思っていたんやろう。」鑑賞後の帰路で。けれどあれやこれやと考えるまでも無く導かれる回答。

「当方は前回のような、化け物ホテルでのドタバタダンジョン劇が観たかったんやな。」(正直、予告の見せ方もそんな感じでしたよね?)

そういう前作の二番煎じを想像したら大間違い。これは確かに『あれから40年が経った世界』。

 

『シャイニング』で生き残った元少年、ダニー。愛らしかった面影は何処へやら。すっかりくたびれた中年男性。

かつては自身の持つ特殊な能力(=シャイニング)に依って苦しめられたけれど。その力で数多の化け物を封印し、今ではほとんど奴らに出会う事もない。

定職に就くでもなく、酒を煽る日々を送っていたが…このままではアルコール依存症で破滅した父親と同じだと、断酒会に参加。転居し、ある医療施設の看護助手としての職も得た。

ダニーの特殊能力は施設で発揮された。『命が尽きる時が分かる』彼は患者たちから『ドクター・スリープ』と呼ばれ。患者たちの臨終を穏やかに見届けた。

そうやって可もなく不可もなく日々過ごしていたダニーに、突然少女アブラの声が届く。

 

連続少年少女失踪事件。その事件に関与するカルト集団『真の絆』。

特殊能力を持つ少年少女から妖気を吸い取り生息する集団に中てられ、能力を増大させてしまったアブラ。

「立ち向かえ」というアブラの呼びかけに動揺し。初めこそ「目立たないようにしてやり過ごせ」とアドバイスしていたダニーだったが。

 

「これは…『たたんでおしまいZ』案件(もちろん当方の造語)やな(『へんなABC/みんなのうた1986年』より)」。

 

かつては並外れた特殊能力の持ち主だったダニー。それ故に幼かった時に受けた恐怖体験からトラウマを抱え。

「またあいつらが襲ってくるんじゃないか。」その恐怖を克服するため、ダニーは脳内にいくつもの箱を浮かべ。その中に化け物たちを封印した。

 

『ドクター・スリープ』

ダニーの新しい職場。終末期医療を扱うそこでは死は身近なもの。『患者の死期を看取る。』それはかつて化け物たちを箱に封印していったダニーにとっては、穏やかで優しい「たたんでおしまい」だった。

 

けれど。類は友を呼ぶ。遠くに居るはずの特殊能力を持つアブラ。まだ少女で…真っすぐで力も強くて正義感も強いが、決してダニーを見逃さなかった。

 

「そんな危ない奴らに関わるな。」「ひっそりと身を隠せ。」そんなダニーの忠告も空しく。アブラに押されていく内、次第に『真の絆』集団に立ち向かうようになっていくダニー。そして。

 

「アイツに勝つには、あのホテルを決戦の場にするしかない。」

 

まさかの。40年前の惨劇。ダニーのトラウマの根源である『オーバールック・ホテル』の前に降り立つ。

 

「色んなものを『たたんでおしまい』と看取ってきたダニーが。おかしなカルト集団のトップを。そして自身のトラウマとして封印してきた化け物たちを。父親への思いを。そして化け物ホテルそのものを。それらをひっくるめて入れ子状態にして、たたんでいく話なんだな。」「けれど。それはダニー自体も『たたんでおしまいZ』を意味する。」

「まさに『ドクター・スリープ』。」

 

忌まわしい、雪に覆われた化け物ホテルを本当の意味で消滅させるには火を放つしかない。その役目を担えるのは…ダニーしかいない。

 

古いものから新しいものへ。ダニーからアブラに引き継がれていく特殊能力者の生き方。

 

「~という流れ。非常に美しい続編かつ幕引きやったとは思うけれどさあ。」

暗い映画館で。終盤背後からの圧力を感じ。思わず振り返った当方。

後方座席に居られた男性が、文字通り『前のめり』で見入っていて(当方の座席の頭部に手を置いて前傾姿勢での鑑賞)。その眼の澄んでいる様よ。

 

「そういう往年のファンを思うとさ…化け物ホテルの尺が身近過ぎやしないか?行き着くまでも長い。しかもあの愛すべき奴らの扱いもざっくり過ぎるし。」

「あのホテルシーンで最も重要なのは父親との会話なんだよ!」そういう声、聞こえてきますが。(実際に背後の男性も声を上げておられました。)

「でもねえ…やっぱり期待しちゃったよねえ。奴らの大暴れをさあ(小声)。」

 

それこそ当方が語る事を封印した『スティーヴン・キングが望んだ続編』としては、至高の出来だったんでしょうが。『スタンリー・キューブリックの世界観』が好きな当方には若干の物足りなさも感じる。

 

「これはあれですわ。『シャイニング』を見直す事。後、キング版の『シャイニング』とキングの原作を読まないと何とも…。」

 

なんともまあ宿題の多い。

当方にとってはなかなか『たためない』作品です。