ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「アス」

「アス」観ました。
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ジョーダン・ピール監督作品。

 

1986年アメリカ。サンタクルーズ

夏期休暇。一家でバカンスに訪れたアデレード。まだ幼い少女。

父母と三人家族。夜の遊園地に訪れたアデレードは、両親が目を離した隙に姿を消した。

両親が再びアデレードを見つけた時。アデレードは、何らかの強烈で精神的なショックを受け錯乱状態。

その後カウンセラーから何度かカウンセリングを受けたけれど…トラウマからか、暫くアデレードは言葉を発する事も出来なくなっていた。

 

それから30年後。

結婚し、一男一女をもうけ。幸せに暮らしていたアデレード

夏期休暇。別荘に家族で遊びに来ていた時。夫ゲイブが「サンタクルーズに行こう」と言い出す。

絶対に行かないと言い張るアデレードだったが。「昼間のビーチだけ」そう約束して渋々向かったサンタクルーズ

 

家族ぐるみで付き合いのある友人、タイラー一家と現地で落ち合い。家族は皆一応に楽しそうだけれど。

「今でもあるのか…。」アデレードが苦々しくやる、目線の先にある遊園地。

その片隅に佇む不気味なミラーハウス。そこは30年前のあの夜、彼女が迷い混んでしまった迷宮。何もかもが変わってしまったあの館。

 

長男ジェイソンが気持ちが悪い現象を目の当たりにした事からも、居てもたってもおれず即座にサンタクルーズを後にした一家。

 

「もう自宅に帰りたい。」

子供達を寝かしつけた後、ゲイブに涙ながらに訴えるアデレード

かつてサンタクルーズを訪れた事があること。そこで起きた事件とトラウマについて話すけれど…いまいちゲイブに伝わらない。

 

そんな時。別荘に訪問者がやって来た。

 

前作『ゲット・アウト』と同じく。

冒頭の少女アデレードが遊園地で両親とはぐれ、不気味なミラーハウスに吸い込まれて行く下り。そしてそこで起きた事件…。

「ぎゃああああ。」心の中で絶叫案件。演出の仕方が怖い怖い。いかにも「出るで出るで~。」の禍々しい雰囲気に体を強張らせる当方。本当に掴みが上手い。

 

30年後。少女から大人になって。今度は母親となったアデレードの前に現れたドッペルゲンガー

まただ。またあのミラーハウスを見てしまったから。あそこからドッペルゲンガーが出てきた。しかも今度は自分だけじゃない。

 

夫ゲイブ。娘ゾーラ。息子ジェイソン。自分の愛すべき家族がそっくりそのまま。写し絵の様な連中が訪れてきた。

 

我が物顔で家に乗り込んでくるドッペルゲンガー家族。怯え。逃げ惑う一家を易々と捕まえ。

「私たちはお前たちだ。」「今日のこの日をずっと待っていた。」

家族を一人残らず殺し、自分達が入れ替わると。

 

アデレード一家VSドッペルゲンガー家族。

生死をかけた椅子取りゲーム。負けたら死ぬ。取って変わられる。けれど。

 

一体彼等は何者?どうして現れた?

 

「これは現在のアメリカを象徴した作品だ。」そんな感想をふと見かけて「ファッツ?!」と声に出してしまった当方。

 

いつまでも元気で長生きしたい。その願いはどうすれば実現出来る?

もし病気になったら?もし自分の体の何処かが駄目になったら?そこを発端に全身が蝕まれ、いずれは死に至る…いずれ…ならば間に合う間に駄目な部分だけ取り換えられたら?

人体のパーツ交換。他人では合うか分からない。下手したら倫理的にも問われる。けれど自分自身なら?

自身自身なら問題無くない?誰が責める?

…というサイコパス理論で作られたクローン達の下克上物語。

 

公開からわりと月日が流れたのをいい事に。ばっさりネタバレしている当方ですが(これ以上はネタバレしませんよ!)。まあ概ねそういう流れなんですよ。

 

似たような設定と言えば『わたしを離さないで』。カズオ・イシグロ著の小説では哀しくも運命を受け入れていたクローン人間達。あの世界観が堪らなく好きな当方ですが。

 

この作品ではクローン人間達は大爆発し、実際の世界に住む人間達に襲いかかる。

 

「でもさあ。これ自分のクローンが作られているなんて誰も知らんかったやん。始めに流れていたCMがヒントやろうけれど、結局一体誰が何の為に?」あかんあかん。そう思うのに。どうしても当方の中に住む中学生が理詰めの説明を求めてこようとしてくる。

 

「現在のアメリカの縮図ってどういう事

ですかあ?利己的で、何か不都合があれば切り捨てて代替え置けばええやんって事?そうやって切り捨てられた不文律といいようにされてきた代替え達の逆襲って事?」

 

「うるさい早く寝ろ!」わあわあ言う脳内中学生に対して、THE理不尽な畳み掛けで退場させた当方。センシティブな内容に触れようとするんじゃない。

 

「これ。ホラーじゃなくてコメディやん。」

映画部部長の感想コメントに深く頷く当方。

 

結局。現代社会に対するアンチテーゼ的な何かを匂わせているし、きっと監督には意見があるんでしょうが…どうしてもそう思ってしまった当方(と映画部部長)。

 

子供の時にあった禍々しい恐怖体験。それが30年経った今また再現されている。しかも今度は家族を巻き込んで。

かと思えば。友人家族を。そしてどこかしこでその現象は拡大していた。

文章で書くとすっきりしていますが。ドッペルゲンガー家族との攻防はなんともコメディやし、何なら途中から「長い…」とさえ感じてしまう。(同じ様な戦いを繰り返しますので)ジョーダン監督、良くも悪くもサービス精神がありすぎるんですかね。

 

それならば、「一体彼等は何者なのか」「どうして襲ってくるのか」「彼等の目的は?」に焦点を当てまくったらいいのに。そう思ってしまった当方。

(まあ。前作『ゲット・アウト』もトンでもオペレーション開始というずっこけ展開かましたからなあ…/心の声)

 

最終。怒涛の大風呂敷畳み。けれど「はっ。まさかの!」「そうか。だから彼女は言葉が…。」「うさぎ!」…なんて思わなかった当方。心の中学生が冒頭の時点でしっかり見抜いていたので。「でしょうな!」と答え合わせにご満悦だった中学生当方。

 

何だか元々は色々気が合いそうな監督なのに。いかんせん、演出が上手くサービス精神旺盛が故に無駄が多い印象。

枝葉を切ってテーマを深掘りしたらとんでもない作品が生まれそうなのに。

 

「何様だ!」という謎視点で観てしまいましたが。

とりあえず。隣でずっと手を繋ぎながら観ていたカップルが一体どう思ったのか。どういうつもりで観に来たのか。

彼等の感想が知りたい。無言で去っていった二人の後を追いたい。そう思いながら…ぼんやり歩いていると。いつの間にか二人を見失っていました。