ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「寝ても覚めても」

寝ても覚めても」観ました。
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柴崎友香の同名小説を濱口竜介監督が映画化。

 東出昌大が。麦と良平という同じ顔を持つ男の二役を。そして二人を愛し、愛された朝子を唐田えりかが演じた。

 

大阪。運命の恋に落ちた。

飄々とした恋人、麦を盲目的に愛する朝子。けれど。ある日突然麦は姿を消した。その後、朝子上京。

時を経て。東京。会社員良平は会社の横にある喫茶店の店員朝子と出会い、惹かれていく。

出会った頃はぎこちなかった朝子だったけれど。真っ直ぐ気持ちを向けてくる良平に、次第にいとおしさが込み上げてきて。

 

和)悪いけれど。私は朝子嫌いやで。

昭)早い早い早い。フライング。まだ俺ら紹介もされてないんやで。

 

大阪人の主人公の朝子、麦。そして東京で出会った良平も姫路出身と。メインキャラクターが軒並み関西人。そのよしみで。当方の心の関西人男女キャラクター、昭と和(あきらとかず)にだらだら感想を語って頂きたいと思います。

(出来る限りネタバレしないように進めますので、何時にも増して観た人にしか分からないような仕様です)

 

和)この作品を高評価する声は結構あって。嵌まる人にはとことん嵌まる。映画館で声を殺して泣いている姿もあったし。

昭)恋愛はままならない事だらけ。恋人に誠実でありたいけれど、自分の気持ちにも誠実でありたい。その結果とんでもない傷を相手に負わせてしまう。この作品は、そういう個人の『思い当たるふし』に刺さるんやろうね。

和)映画玄人達諸手の絶賛。これが分からないなんて不粋でお子様。そう言われてもやっぱり…やっぱり朝子が嫌い。

昭)嫌い…。フラフラ流されて、好きやと言われたら良い顔して。でも結局前の男を忘れていない。だから?

和)違う違う。朝子は一見流されているように見えるけれど、全然ふわついてないの。むしろ凄く自分の気持ちに整理を着けて行動したい人。元来ロジカルなタイプなんやて。

昭)どういう事?

和)かつて、ベタぼれしていた恋人麦が突然失踪した。そこに全然納得していないまま、麦と全く同じ顔をした別人良平に想いを寄せられて。初めこそ麦を意識してしまうからと良平を拒絶するけれど、結局は良平を受け入れる。

私はこの人と幸せになる。そう言い聞かせるけれど…ずっと納得してない。だから実は全然次のステップに進んでない。麦との関係の延長世界にずっと居るの。

昭)そして最後のあの行動。

和)自分の気持ちが今どこにあるのか。あれから何年も経って。もう気持ちは切り替わった。これからは良平との人生を、と信じていたのに。ここに来てその答え合わせをするチャンスが来た。

昭)飛び付くなよな~と思ったな。

和)自分の気持ちに誠実であろうとしたら、とことん周りを傷付ける事になった。私が朝子を嫌いなのは…気持ちは分かるけれど、相手に対する思いやりが一切無い自己中な所。所詮自分可愛さしか無いし。しかもその後の態度。ふてぶてしいにも程がある。

昭)どの面下げてノコノコ現れてんねん!と思ったな。

 

 

和)麦ってキャラクター。あれ、なんなんやろうな。

昭)冒頭の二人が美術館で出会う下りから。明らかなヅラ。目を疑うダサさのクラブ。友達宅での麦。そして最後の感じ。全てがホラーでしかなかった。あの一切の心がこもっていない話し方と表情も「あかん時の東出昌大やんか!」と思ったな。

和)ミステリアスと言うより『散歩する侵略者』の「何か」を取られた人みたいに見えたよ。朝子は一体麦の何に惚れたんやろう?麦の魅力が分からんのも、朝子の行動に理解が出来ん理由な気がする。結局は顔?

昭)そして何より朝子も麦も大阪人じゃ無さすぎる。大阪人はあんな喋り方せん。

 

和)喋り方から思ったけれど。朝子の大阪時代の友達。凄く喋りも演技も上手かったね。

昭)それを言うなら、東京に出て来てから出来た友達も上手かったし良かった。主人公達だけではふわふわしそうな話をしっかり脇が押さえてるの。

和)朝子が最後取った行動に、両極端の反応を見せた大阪と東京の女友達。

同じ女として、そしてどの時の朝子を見てきたのか。そして麦と良平どちらと一緒にいた朝子を見ていたかでで違ったんやろう。…でも。私もあかん…朝子とは絶交してまうやろうな。

 

昭)濱口竜介監督と言えば、前作の『ハッピーアワー』が印象的で。この作品を観ながらも、所々頭を過ったな。

和)5時間超えの超大作。37歳。同い年の女性4人のお話ね。

昭)あの作品でも、最終ある登場人物が取った行動に残りのメンバー達が揺り動かされるんやけれど。

和)あんな事するなんて!と憤る人物も居れば冷静に事態を整理しようとする人物も居た。作中の「だから貴方には相談しないんやで(意訳)」という言葉。…そうか。起きてしまった事に全員が同じ反応をする訳は無い。出来事をぱっと見ただけで一刀両断したらあかんな…。

 

昭)一見、朝子の取った行動は浅はかやし、下手したら誰からも許されないし、見放される。はっきり言って朝子には弁解の余地はない。自分の気持ちに嘘偽りの無い行動を、咄嗟とはいえ取ったんやから。だから…そんな朝子をどう受け止めるのか、受け止めないかの判断は良平に委ねられるんやと思ったな。

和)大人な昭さんは、朝子みたいな事をされたら許すんですか?

昭)許すかボケえ!人をバカにするんも大概にせえよ!猫は大切にするけれど、他のもんは全てほかすわ‼二度と現れるな‼

和)おいおいおい…。

 

二人の話に入りきりませんでしたが。『東北地震』という有事の絡め方も。「もし二度とあの人に会えなかったら」と込み上げる気持ちや、その後の被災地との関わり。「もし最終どうしても居場所が無くなったら朝子はそこに行くのでは…」と過ったり。

 

兎に角、纏まらないざらざらした気持ちになったこの作品。やっぱり今の時点では当方は朝子は嫌いやし、この話は苦手。

 

なのに…何故か話し出すと止まらなくなる。それからの物語を考えてしまう。

 

本当にねえ。困った作品ですよ。(誉めています)

 

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