ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「29歳問題」

29歳問題」観ました。
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香港。2005年初演。キーレン・パン作、演出、主演(一人二役)舞台『29+1』。

その後13年に渡って再演され続けている作品を。彼女自身が脚色、監督。

キャリアウーマンのクリスティと、夢見がちなティンロ。

2005年4月3日に。同じく30歳を迎える29歳の女性の一か月を描いた。

 

2005年3月。29歳のクリスティ。美容系の会社でバリバリ仕事をこなし。長年の恋人も居て。一見充実した勝ち組キャリアウーマン。

仕事ぶりを認められ、まさかの会社を任せられるという大抜擢。舞い上がるけれど。

昇進した事での仕事量の多さと責任の重さに精神は追い詰められ。

恋人とはすれ違い。言い合いの日々。遂には「俺が2週間出張の間、互いに頭を冷やそう」と距離を取られ。

離れて暮らす両親。父親の認知症が進行している事は気にはなるけれど。忙しい最中、お構いなしに電話をしてくる父親には苛々してしまう。

そんな中。一人で暮らしていたマンションを「良い値段で買ってくれる人が見つかったから」と大家に無理やり追い出され。

途方に暮れる中。大家が「次の家が決まるまでの仮住まい」として紹介してくれたアパート。

元々の住人は現在旅行中で、空いている間ここを貸してくれると。

実際に引っ越してみて、住人が生年月日が全く同じ女性である事を知ったクリスティ。

「こんにちは。私はティンロ」

笑顔がチャーミングなティンロからのビデオメッセージ。タワレコ&雑貨屋みたいな小物で溢れた部屋と、残されたティンロの日記。

 

「29歳かあ…」

 

はっきり言って29歳はとっくに過ぎて。寧ろ『39歳問題』の方に足を突っ込みつつある当方。正直「29歳の時ってどう思っていた?」というと思い出せず。

 

「20代という年代がふわふわしすぎて。結局若造やし。いっそ早く30代になりたいと思っていた気がする。」

「20代で結婚!」「子供!」という縛りも当方に無く。それは今でもそう。ですが。

 

確かにかつて「もう30になってしまう‼」と焦っていた学生時代の友人(女性)が居ました。

「女に生まれたからには子供を産みたい」「この人とは進展しそうにないから次だ次」その猪突猛進振りに次第に当方とは距離が離れていきましたが。『女30』というパワーワードはこうも人を変える力があるのだと強く実感。

 

「でもあれですな。生き方って正解は無いしな。」ぼんやり呟く当方。

 

いつだって一生懸命。向上心に溢れ。仕事はきちんと。日々のスケジュールをこなし。

アフターファイブは女子会、恋人との時間。見た目もいつも綺麗に。手を抜かない。

今は結婚する時じゃない。だらしないところのある恋人との生活なんて考えられない。

憧れの女社長。一代でこの会社を立ち上げ、大きくした。そんな社長に認められた。「この会社を大きくするために私は新天地を開拓するから、今の会社は貴方に任せる。」嬉しくて。

けれど。一気にのしかかる重圧。迫りくる企画。なのに上手くいかない。不安と苛立ち。

上手くいかない。これまでの様に上手く立ち回れない。

その苛立ちは恋人にも向けられ。喧嘩。挙句距離を置く事に。

しかも邪険にしていた父親に新しい局面が起きた。
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「いくら何でも。たった一か月で問題が起き過ぎやろう。」険しい顔の当方。

 

「水を差して申し訳無いんですが…。一か月かそこらで、昇進。住宅の退去。仕事の暗礁。恋人との別れ。親との別れ。仕事との離別って…詰め込み過ぎやろう。」

 

年代的に起きそうな事柄をてんこ盛りに盛り込んで。どれにも漏れなくオチを付けて。確かに幾つかは切なくツンときましたが。…きましたが。

 

「あの女社長は全然凄腕じゃないな」「元々クリスティがどういうポジションだったのか分からないけれど、いきなり支部長?的なポジションに抜擢って。無茶過ぎるしせめてサポートを付けてやれよ。あんたの会社はあれか。あんた(社長)以外は管理職不在で、他は20~30歳代の若者でワイワイやっている部活か。会社潰れるぞ。」「案の定一人できりきり舞い。」「そんな大役を貰って、たった一つのプロジェクトで傷付いて。一か月で降りるって。ある意味クリスティ潰しやないか。それで去るときにはああいう声掛けって。納得出来るか。」「後進育成の出来ないワンマンカリスマ経営者。」「そして一体どういう衣装をモデルに着せるつもりやったんやろう。」

主にクリスティの仕事について。リアリティが無さ過ぎて…モヤモヤし続けた当方。

「その会社。変すぎるから。辞めて正解。」

 

いつだって一生懸命に頑張ってきた。なのに。グイグイと袋小路に追い詰められる。

仕事。恋人。家族。どれもこれも歯車が狂いだして。

 

「まあでも。ティンロパートの圧倒的ポジティブ感と、それが一転する切なさ。そして疾走感。」

 

クリスティが仮住まいする事になったアパートの住人。ティンロ。『ジェーン・ス―』さんにしか見えないビジュアルの彼女の天真爛漫さ。

小さなレコード店に勤めて10年。底抜けに明るい性格。いつだって笑顔。コロコロ笑って。幼馴染の男友達といつも一緒につるんで。遊んで。
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そんな日々が続くと思っていた。

 

今は憧れのパリに旅行中。そんなティンロのはじける様な日記を読んで。同い年の彼女に思いを馳せるクリスティ。

 

愛嬌はあるけれど。お金がある訳じゃない。幼馴染だって恋人では無い。なのに。

ティンロの住んでいたこの部屋。ビデオレター。そして日記。溢れんばかりの多幸感。

どうして?どうしてそんなに楽しそうなの?どうして笑っていられるの?

何処で私は間違ったの?ねえティンロ。貴方は私みたいに一人でやるせない気持ちになった事がある?泣くクリスティ。

 

「そうか。そうかティンロ…。」

(その落としどころに、正直モヤモヤともしましたが。)

 

「兎に角笑えれば」

いつだってポジティブに。そうやって生きてきた。けれど。人生に有限を感じた時、目の前の景色は全く変わった。

年齢は関係ない。今。今を悔いなく生きる。自分を大切にする。見たいものは今見に行く。やりたいことは今する。今すぐ。

誰かと自分を比べない。いつだって変われる。でもそれなら今。今すぐ変わる。

 

(後ねえ。あの夕日の中の。幼馴染とのモダモダしたやり取り。全当方が悶死。「頼む!もうヤッテくれ!」そしてあの年齢でそのステージはシビア過ぎるし…女性にとって後のボディイメージの変化は許容しがたいと思うし。それこそ今だよ今‼)

 

29歳問題』そのタイトルから想像するような「焦った女性のドタバタコメディ」なんかとは全く違う方向性。途中訝しく思う所もありましたが…非常に爽やかに着地した作品。

 

「これ。29歳の時に観たらどう思ったやろう。」

そう思って今、ふと身近(職場後輩)に29歳の女性が居た事を思い出した当方。

ちょっと薦めてみたいと思います。