ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「RAW 少女のめざめ」

「RAW 少女のめざめ」観ました。
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フランス・ベルギー合作作品。

「失神者続出」16歳の少女が。進学した獣医学校でカニバリズムに目覚めてしまう内容。

予告段階でそうはっきりとネタバレしていましたので。

 

映画部長と当方。たった二人の映画部でも「得意分野は変態映画部門です」と公言している事からも。これは当方の出番だと。颯爽と公開初日に観て参りました。

 

基本的に、この映画感想文はネタバレをしない方向で進めているのですが。

 

今回は初めて。はっきりと「ネタバレありき」で話を進めさせて頂きます。

 

「一体本国では。何を観て失神したのだろう?」冷静に呟く当方。

 

この作品を最後まで観て。途中から…と言うかかなり早い内から「何故この学校に進学したのか」それに尽きると思った当方。

 

主人公のジュスティーヌ。16歳。神童と呼ばれた彼女はとある全寮制の獣医学校に進学する。

両親も共に獣医。そしてその学校の卒業生。そして一つ上の姉もその学校に在籍中。

真面目な優等生。そんな彼女が他人と違う点。それは家族全員が厳格なベジタリアンだという事。なのに。

入寮したその夜。寝ていた新入生たちを叩き起こした、先輩たちの寮のしきたり。真夜中の狂った乱交パーティー。

そして。通過儀礼の『生肉を食べる儀式』。自身はベジタリアンであると一時は拒否したけれど。姉に押し切られ口にしてしまった『肉の味』。開眼。

初めこそ過剰なアレルギー反応が起きたけれど。抑えらえない肉食への欲求。そして遂に彼女は人肉の味を知ってしまう。

 

「何故彼女がこの学校に進むことを止めなかったのですか?」

 

と言うのも…彼女が女系カニバリズム家系だからですよ。(この作品を観た人ならばヒヤヒヤする発言ですが…一応ネタバレは3段階あるので。2段階までに留めるようにします)

 

同じ学校に進学した、一つ上の姉。アレックス。
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「お前の姉ちゃん変わってるよな」同級生からそう言われる、どこかファンキーなお姉ちゃん。

 

完全な上下関係。先輩は神。先輩の命令は絶対。おかしな学校のしきたりにすっかり慣れているお姉ちゃん。対して神童扱いで生真面目な主人公は学校でも浮きがちで。

「クラブに行くような恰好で過ごしなさい。それが出来ないなら、紙おむつでも履いていなさい」そんな意味不明な先輩の指示にうんざりしながらも。頼ればそれらしい服を貸してくれるお姉ちゃん。

喧嘩もするけれど。悩みがあれば聞いてくれる。そんな頼もしいお姉ちゃん。けれど。

 

とある不幸な事件。お姉ちゃんの指が切断されてしまった。お姉ちゃんは痛みとショックで失神。その時…何故か自身を抑えきれなくなってお姉ちゃんの指を食べてしまう主人公。そして…知ってしまった。人肉からの得難い多幸感を。

 

「また。いかにも『ジャーン』みたいな音楽よ」思わず笑ってしまった当方。

 

夢中で指にむしゃぶりついている妹の姿を見てしまったお姉ちゃん。絶望と嫌悪…と思いきや。『実はお姉ちゃんもカニバリスト』。

 

少し前。『肉』という映画がありました。
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変態映画部門を得意とする当方としては勿論抑えたカニバリズム映画作品。あれもまた『カニバリズム一家』の悲劇でした。

詳細は語りませんが…当方はどうしてもああいう『女の子が泣きながら嫌々食べる様』に心の柔らかい所を押されてしまう傾向がありまして。(変態発言)

 

そう思うと、この作品にはどうしてもじっとりとした要素が薄い感じ。

我を忘れて…そしてはっと気づいたら血まみれの自分。そういう『いつの間にやら獣になってしまう自分を抑えられなくて』という自我に戸惑う…確かに『少女のめざめ』。けれど。

 

変態映画マスター当方としては『自己嫌悪に襲われながら。けれどどうしようもない猛々しさからの生理現象。今まさに人肉を食べているけれど。こんなの嫌。気持ち悪い。けれど体は欲してしまうという本能』という所までいって欲しかったですね。(サラッと変態発言)だって。獣になっていた瞬間の記憶が殆ど無いって…(あってもその心境の描写は無し。ひたすら必死で食らいついている感じ)。酔っぱらって記憶無くしたのと大差無いですよ。(互いに共通しているのは『後から人づてにその所業を聞いて自己嫌悪に陥る』という点。その瞬間は無意識に気持ちよく好き勝手な事をしているだけなんですわ)

 

カニバリズム=食欲。とすると、三大欲求の中の一つ、性欲の爆発もしかり。

「本当にねえ。何であんな学校に行ったのか」溜息の当方。あんな乱痴気騒ぎが日常生活な上。ルームメイトが男子学生。アドリアン
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「俺はゲイだから」だとしても。普通男女を同じ部屋にしますかね?例え恋愛感情が起きないとされても。異性は異性。生活しにくいですよ。

そして案の定。「俺はゲイなんだぞ!」という事態。発情した主人公と、恋なんだか何なんだかの関係に落ちてしまう。

 

そんな二人に食らい付いてくるお姉ちゃん。そして怒涛の結末。

 

本当にねえ…4回目の「何故この学校に進学したのか」。そして。

 

そもそも何故この姉妹は獣医を目指したんですか?(両親が獣医以外で)

両親は何故この姉妹が獣医になりたいと言った時(あったのか知りませんが)止めなかったんですか?

せめて。何故自宅から通える範囲のまともそうな学校を進めなかったんですか?

両親とも、この学校の卒業生ならこの学校の校風は分かっているんじゃないんですか?

何のために一家ベジタリアンでやってきたんですか?

 

あかんあかん。そもそもの動機が弱すぎて。「それでも私は獣医になりたくて」が無いから。折角の良い環境が取り留めの無い、ふんわりしたものになってしまっている。

 

「少なくとも姉妹の父親。彼は完全なMだ…」震える当方。

 

ベジタリアンの秀才少女が。全寮制の獣医学校に入学して。その破天荒な校風から。生肉を食べ…そしてひいては自身のカニバリズム精神に気づいていく…立派な変態映画要素満開なのに。いまいち乗れない。『獣医』という夢と。その解離…の必然性の欠落故。

 

「病める獣たちを救いたい…なのに何故。彼らを診ていて…納まらない鼓動。気付いたら…彼らを食べている。これを抑えられるのは…そう。忘れられない。人肉。あのトップオブ生態系…」例えば解剖シーンで。そこまで行って欲しかったからですかね。

 

まあ。あの『青と黄色のペンキが混ざり合って。緑になるまで出てくるな』という絶妙なアートエロセンス。あれは非常にぐっと心に刺さるフレーズでした。
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