映画部活動報告「ゲット・アウト」
「ゲット・アウト」観ました。
NY在住のアフリカ系アメリカ人、クリス。付き合って約半年の彼女ローズは白人女性。
ある週末。ローズの実家に泊りがけで遊びに行く事になったクリス。「家族に彼氏は黒人だって言ってないの?」不安を抱きながら向かう道中。追い打ちをかけるような気の滅入る事故にもあって。でも。
不安とは裏腹に。実際には、ローズの家族に大歓迎を受けたクリス。拍子抜け。
でも何だか落ち着かない。過剰なまでのローズの家族の受け入れっぷりと、使用人の黒人二人の不気味な表情と動作。落ち着かない。何だか気持ち悪い。
翌日。ローズの亡くなった祖父を偲ぶ会が行われる。集まる、スノッブな白人たち。
彼等もまた、一応にクリスを受け入れ好意的ではあるけれど…。
そんな時。客人の中に唯一黒人男性を見つけたクリス。思わずスマートフォンで写真を撮ったところ。それまで温厚であった彼は鼻血を流し、クリスに殴りかかってきて…。
『ヴィジット』系映画。
2015年。M・ナイト・シャマラン監督作品『ヴィジット』。
「初めて会うけれど。お爺ちゃんとお婆ちゃん。ボケてるの?それとも…ヤバいの?」
「シャマラン復活」と言われたスリラー映画。当方も大好きお婆ちゃん。怖ええええ。
…という感じの流れ。
「初めて会う彼女の両親と弟。しかも白人一家。…そんな事あって欲しくないけれど、黒人である自分に偏見や嫌悪を抱かれたらどうしよう。そんな家族だったらどうしよう」彼らが白人至上主義だったらどうしようと。不安で。多民族国家に属さない当方にはピンときませんが…そういう無意識の差別に心を痛めた事があった主人公クリスの。憂鬱な彼女宅訪問。
「オバマを支持していた。彼に三期目があったらまた入れていたよ。」笑顔で。そういって握手を求めてくる。ローズの父親を初め。翌日集まった白人連中もこぞってクリスに近寄って興味津々。「凄い筋肉!!」「やっぱり…あっちの方も強いの?」何だか…馬鹿にされているのかと、うんざりしてくるクリス。
しかも。ローズの家の使用人が黒人という「典型的な古い白人家庭」という構図。一応の説明はなされるけれど。彼らの待遇をどうこう思う以前に、彼等は不気味で気持ち悪い。
(あのメイドの顔芸は秀逸)
「また。ローズの家族そのものも何だか気持ち悪いんよな。」
脳神経外科医の父親。精神科医の母親。そして医大生の弟。一見インテリな家族だけれど。
「禁煙したいなら彼女(母親)に催眠術を掛けて貰ったらいい。もうタバコを見ただけで吐きそうになるよ」
別に希望はしていなかったけれど。夜眠れなくて。何となく受ける羽目になった催眠術。そこで見た、果てしない闇の世界。
「彼女の家族も、使用人の黒人たちも。ここに集まった連中も。何もかも気持ち悪い!居心地悪い!帰る!」そうして立ち上がって出ていこうとした途端…暗転。
「持つべきものは、頭の切れる友達だよ…」呟く当方。
中盤以降。これまで積み重ねた『不気味な引っかかり』が。四隅を取られたオセロのごとくパタパタとひっくり返されて。一気に見せた『闇の世界』。
ああ~。でも。こういう風になるよなあ~。そう思う当方。ですが。
あの運輸保安局勤務の、クリスの友人。
(黒人で肥満男性)あの、ウィットの効いた友人のナイスキャラに随分と救われたこの作品。
「ところであの手術何なんですか」
それ以上はネタバレになりますんで。それ以上には説明しませんが…しませんが。
「ところであの手術何なんですか」
当方の隣に座っていた、見知らぬ女性が「わっ」と言いながら身をよじっていましたが。「あんな手術は無いぞ」と彼女に言ってやりたい当方。「ここは笑う所だ」と。
「自宅に手術室。どういう設備環境?そして誰が麻酔を?そして手洗いをして清潔になってからマスクを引っ張り上げるあの人。一気に不潔。そしてあのシャンプーハットみたいなやつ、何?…ああ。血よけか。実際そんなの無いけれどな。そして。」
そしてそして爆弾炸裂。それまではまだ大人しく観ていたのに。突如はじける当方。
「医療的に可能と謳った『ムカデ人間』を見習え!やるならきちんとやれ!(まあ、絶対にあそこだけは移植行為はありませんけれど。死にますから)」
黒人男性の主人公の。「彼女の白人一家にご挨拶」そんな気の重い案件を。どう転がすのかと思ったら思いがけない方向に話は転がって。とんでもない方向に着地。もう笑うしか無くて。
…こういう書き方は誤解を招きますが。あくまでも当方は好きなタイプのお話でした。
まあ。音楽も「いかにも脅かす感じの」やつがふんだんに盛り込まれていますので。きっちり驚くべき所にはびくっとさせられて。
「ともあれ。あのメイドの顔芸。それは観て損はしないかと」
今でも。思い出したらニヤニヤが止まらない、そんな当方です。