ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ダンケルク」

ダンケルク」観ました。


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いつだって妥協を許さない。そんなクリストファー・ノーラン監督最新作は…第二次世界大戦当時フランスダンケルクで起きた、イギリス軍撤退作戦『ダンケルクの闘い』。

当時の船や戦闘機を使って。臨場感が半端ない映像を作り上げた!!

(失礼ながら。今後ノーラン監督で表記させて頂きます)

 

…みたいな予告をばんばん打って。兎に角「ノーラン映画ここに極まれり」と言わんばかり。

いかほどのものかと。戦争映画なのにどこか期待に胸を膨らませて。公開初日に映画館に向かった当方。そして鑑賞後。

 

「これまでのノーラン監督のやり方を意識し過ぎていた」これは予習して観るべき案件であったと反省した当方。

 

1939年。当時イケイケだったドイツがポーランドに侵略した事で、イギリス・フランスが宣戦布告し第二次世界大戦は勃発した。その後ベネルクス三国(ベルギー・オランダ・ルクセンブルク)もドイツに飲み込まれ。フランスも追い詰められ。

1940年。英仏連合軍40万人の兵士はフランス北部の港町ダンケルクにまで追い込まれる。

この時。イギリスの当時の首相チャーチルはイギリス兵士に対し「戦う」のではなく「撤退」を命じた。とは言え。ドイツ軍の脅威は凄まじく。逃げ場などどこにもない。

陸海空。各々の時系列を変えて。兵士たちに共通するのは「祖国に帰る事」

そしてイギリス国民の取った、「彼らを連れ戻す」勇気と行動。

イギリスに今でも語り継がれる『ダンケルク・スピリット』

それをノーラン監督が圧倒的な迫力と映像で描いた作品。

 

2008年の『ダークナイト』間違いなくノーラン監督の出世作。そして脂がのったまま発表された2010年『インセプション』そして近年2014年『インターステラ―』

御多分に漏れず。当方も『ダークナイト』でノーラン監督を知って。一番好きなのは『インセプション』先日も自室を真っ暗にしてブルーレイ鑑賞をしておりました。

 

「でも…正直、その二作以外はそんなに嵌っていなくて…」

そもそもバットマンが好きな当方。なのであれこれ文句は言いますが一応『バットマンモノ』は観てしまう。

バットマンの持つ暗さ。そしてDCのやたら陰気な感じは確かにノーラン監督の持つ「生真面目さ」にマッチしていた…『ダークナイト』は。

「でも…ノーラン監督て生真面目で理屈っぽいから。ダークナイトは『ノーラン版バットマン三部作』の真ん中で。丁度いい感じに説明も省かれていたし、明らかに盛り上がるピーク内容やったからみやすかったけれど。その前後の『バットマン・ビギンズ』と『ダークナイト・ライジング』なんて鬱陶しくて観ていられんかったよ」当時の。そして今でもそう思う当方。

インセプション』に関しては波長が合ったからとしか言いようがない。ノーラン監督の提示するレギュレーションにすんなり共感出来たから。だから好きなだけ。あの設定に乗れなかったら、全く箸にも棒にもひっかからない。

「でも。ノーラン監督は決して受け手個人のインスピレーションに任せている感じはしない」

「兎に角俺の世界はこうなんだと。何重にも重ねてレギュレーションのご説明をする」「その為にも。登場人物のセリフだけでは無く。映像で納得させようとしてくる」「それこそが、ノーランクオリティーの『あくまでも本物』に拘った映像」

 

今回。イギリス人は知っているのかもしれないけれども。正直世界中では知らない者も数多いる『ダンケルクの闘い』を。そんな史実をどうノーラン監督がみせてくるのか。

 

「これまでのノーラン作品とは全く違う。説明しないノーラン作品」青天の霹靂。

 

陸海空。各々の時間軸を変えて。共通点は『ダンケルク』のみ。

 

波止場で。援護船を待つ若い兵士達。絶え間ない砲撃。やっと無事船に乗り込めたと思ったらすぐに沈められてしまう。そして再び海岸へと戻される。その繰り返し。

海で。母国イギリスから「兵士を助けよ」と民間船までもが船の貸出要請を受ける。そんな中。政府には任せておけぬと、自ら操舵して救助に向かった民間人。その親子と友人。

空で。形勢不良ながらも飛び出して行った空軍パイロット。

 

彼等について、殆ど説明は無し。兎に角「生きるか死ぬか」の非常事態の連続。逃げ惑い。時には仲間も押しのけて。「生きて帰りたい」「死にたくない」必死。

 

「俺…国に帰ったら結婚するんだ」「馬鹿野郎!お前が死んだら国の母親は!お前の幼い妹は!!」なんてデフォルトは無し。「今な…こういう事が起きているんだ」と説明してくれる年配のキャラクターも無し。そういった説明ファクターを一切排除。圧倒的な現場主義映画。説明なんかしないから。よく見て付いて来いと。

 

なので。観ている側はひたすら画面を追いながら「今はどういう事が起きていて」「助かって…いない!」等と頭をフル回転しなければいけない。これはこれまでのノーラン監督には無かった傾向。

 

「でも。確かに有事の最中とはこういうものかもしれない…。非常事態の中で何もかもを把握している人間なんて一握り。末端の人間は訳も分からず必死に動き回るだけで…」そう思う当方。何があったかなんて。随分経ってからしか分からないのだろうなと。

 

比較的分かりやすかった民間船のパート。「私たちが戦争を起こしたんだ。だから私たちが息子たちを助けなければならない(細かい言い回しうろ覚え)」キングスマンかと思わんばかりの英国紳士。あのきちんとしたシャツとセーターのご老人の、シャンとした佇まい。「危ないから戻れ!」始めに救助された兵士が怯える中。絶対に譲らなかった強い意志。

 

そして「祖国だ」のシーンに唯一目頭が熱くなった当方。

 

IMAXでは鑑賞しませんでしたが。それなりにハイスペックな映画館で鑑賞した当方。それでも十分に見応えのある映像でしたが。

どこかで聞いた「IMAXじゃなかったから全部を受け止められなかったんじゃないか」というご意見に眉を顰めた当方。だって。だってIMAXが無い地域だってあるやないの。画面のサイズやら見切れるやらで理解が変わる云々はナンセンス。

今回。ノーラン監督が新境地にチャレンジしたのは分かるけれど。バランスが悪かったかなとは思う当方。

 

いつにもまして説得力のあった映像体験。でも…言葉での説明を一切排除したのならば、いっそ無声映画にすれば良い。なのにに最後差し込まれた「ダンケルク・スピリット」

それは…下手したらプロバガンダになりかねないじゃないかと。そのスケールに落とし込みたかったんじゃないやろうに。なんだかなあ。

 

とは言え。これまでで完成されていたと思っていたやり方を。がらっと変えたノーラン監督には敬意を表しますし(何様だよ)、これからも付いて行こうと思った。そんなターニングポイントとなったノーラン作品でした。