ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「夜明けの祈り」

「夜明けの祈り」観ました。
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1945年。12月。ポーランド

第二次世界大戦終結。もう戦争が終わる、そんな冬。

赤十字。フランス人を対象に医療活動を行っていた女医のマチルダ。

そこに。決死の勢いで転がり込んできた、ポーランド人のシスター。

担当外だと一旦は断ったマチルダであったが。必死なシスターの姿に、彼女の元に行ってみたら…。

「これは、若きフランス人医師の、心揺さぶられる真実の軌跡」

一体何事かと。観に行って来ました。

 

「これは…」そして。早速心を痛める当方。

 

つまりは。女人ばかりのその場所で。ソ連兵士が数日乗り込んできた悲劇。

 

結果。数日に渡ったレイプ事件に依って、7人が妊娠。そのショックも冷めやらぬまま、妊娠後期になってしまった彼女達。始めての妊娠。勿論心の準備は出来ぬまま。

 

そんな彼女達とはまた別に。少し前に妊娠し、出産を迎えた「修道院が匿った少女」に先述のシスターが外部の手助けを求め。それがあの雪の日の出来事で。

 

それをきっかけに、この修道院の悩める妊婦たちを見つけ。

そして彼女達と、件の女医は。そして彼女達のお腹の命は。

 

といった事をしていました。

 

「そうか。1945年当時」国境のない医師団とは言い切れない。前線に居ながら、言葉の通じない者に対してどういう対応をせざるを得なかったのか。ましてや赤十字が。

そして。「母国の医療機関にこそこの内情を話せない」と有事でありながら母国のポーランド医療機関をはじいて外部に助けを求めた教会側。

 

数か月前。教会は恐るべき事態に陥った。そこで行われた、忌まわしい行為。

 

どんなレイプだって、勿論許されない。でも。殆どが処女で。神に永遠の純潔を誓っていた彼女達が。男達に汚された。そして今。彼女達はその子供を産もうとしている。

 

「神の意のままに」でも晴れない。どんなに神に祈りを捧げたって、心は晴れない。

 

「で。私にどうしろと?」(マチルダ)

 

始めこそ。出産間際の妊婦の元に連れてこられ。(素手で!!)という帝王切開を施行して。そういった悲劇が教会に起きたと聞いて。それはどうにかしなければと思うけれど。

じゃあ彼女達を診るといったところで。彼女達は心も脚も開かない。

 

そんな中で。互いの橋渡しをしてくれる修道女、マリア。

 

ポーランド語とフランス語。それを通訳してくれる、修道女の彼女。

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「彼女は本当にありとあらゆる意味での通訳だな」そう思う当方。

 

「私。此処に来るまでは彼氏が居たの」

そんなマリアが語る、凄惨な教会でのレイプ被害と、冷静な視点を持って修道女達の混乱に対応出来た彼女。

 

宗教とは。祈りとは。

一つの存在に対して絶対の純潔を誓ったのに。それが破られた時。どうしたらいいのか。

 

「かと言って。死ぬ事も、堕ろす事も許されていないんよな…確かカトリックって」そう溜息を付く当方。

 

「神は乗り越えられる試練を下さった。そう思いたいけれど…」何故。私は。私は。

 

「私は医療者だから」自由に恋愛して。修道女とは違う。レイプ?強い気持ちがあればどうにかなったんじゃないの?…でも。実際自身も移動中に怖い目に会って。ただ恐怖しかない。ねじ伏せられるしかない。敗北と無力感。

 

「どこまでこういう診療が効くんやろう」初めから。そう思っていた当方。

 

勿論患者家族の守秘義務は守るべき。かといって緊急患者優先とされる部署で働くマチルダ。今ほど専門性もない中。特殊な「周産期医療の患者」。

しかも一人では無く。少なくとも7人。しかも同時。そして特殊な事情。秘密。

通常勤務と同時進行。

絶対一人では診れない時期が来る。

 

これは美談とするべきなのか。本当にそうなのか。

 

 果たして現場とその状況は合っていたのか。

 

最終。マチルダは然るべき選択をした。(その発想と提案に関しても「それでよろしい」と言うしかない。表向きには。でも…)

 

「あくまでもメンツにこだわった院長」

 

ここは教会だぞと。ここに居るのは神に絶対を誓った者ばかりで。例えそれを無茶苦茶にしたのはとんでも無い無法者であったとしても…私たちは決って汚れてなんていない。見せたくない。隠したい…哀しいけれど。分からなくはないですよ。

 

「汚れてなんていない」「私たちは踏みにじられたけれど。汚れてなんていない」

 

けれど。

 

戸惑っていたけれど。宗教の力は大きいけれど。結局彼女達は子供を産んだ。

 

その子供の行方について。驚くような措置はあったけれど。

 

「宗教が。医療が。思想が。メンツが。各々何を持っていたって。結局強いものは」

 

戦時中で。憎むべき粗野な相手の子供を宿した。自身の尊厳を奪われた。信じるべき相手を失った。何を信じていいのか分からなくなった。でも。

 

お腹の子供が愛おしくて。忘れたい記憶の末に得たのに。なのに結局は大切で。

 

 

「信仰だって医療だって同じ。生まれてくる子供の前には」

 

 

「信じるべきモノはなんだ」

 

かと言って。最後に車に乗って来た若い女性も否定はしませんが。

 

「これは。真っ暗な夜の。確かに『夜明けの祈り』」

 

あの雪景色の。澄んだ声が届きますようにと。祈った当方。