ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「あのこは貴族」

「あのこは貴族」観ました。
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東京。同じ都市に生きる、二人の女性。

東京生まれの東京育ち。医者家系のお金持ちで「結婚=幸せ」と育てられた箱入り娘の榛原華子(門脇麦)。

20代後半、結婚適齢期。なのに結婚間際の恋人に振られた。慌てふためいて探したお相手探しの結果…とんでもないサラブレッドを引き当てた。

義兄から紹介されたのは、良家の御曹司、弁護士の青木幸一郎(高良健吾)。

とんとん拍子に結婚へと話がまとまる中、幸一郎に見え隠れし始めた女性の影。

一方。富山から大学進学で上京した時岡美紀(水原希子)。

猛勉強した結果、入学に至った慶応大学。なのに経済的理由で学業を続ける事が出来ず結局中退。

大学時代の同級生だった幸一郎とは腐れ縁。中退後仕事に就くも、特にやりがいを見出せず東京に居続けた美紀。

華子と美紀。幸一郎を通じて交差した二人の女性の運命は~。

原作は山内マリコの同名小説。岨手由貴子監督作品。

 

昭:はいどうも。当方の心に住む男女キャラ『昭と和(あきらとかず)』です。

和:棒読み感半端ないな~。元気出していこう!

昭:おなじみ。「当方の心に住む男女キャラに、男女の機微を語っていただきたいと思います」「団子?団子?」「そのきびじゃねえよ!」の下りも省略。だって俺男性キャラやもん。この全編女性視点のお話に俺どうやって絡んでいけんの。

和:まあまあまあ。(溜息)…当方は平均的な経済能力の家庭に育ったし、生まれてこの方ずっと、地方住みだけれどそこまで田舎じゃない。「おら東京さいくだ」的な「東京で一旗揚げてやる!」なんて考えた事がない。だから結局ファンタジーの域を超えないの。主人公の二人どちらにも偏った感情移入は出来ない。この作品には女性が多く登場するし、彼女たちの生きざまが描かれるけれど、決して幸一郎という男性の存在抜きには語れない。そう思うから昭さんにも居て欲しい。

昭:うう…。

和:あと、こういう会話形式じゃないと我々の回は進行出来ないからね。はい、やっていきますよ。

 

昭:この作品は大きく分けると三部構成で。初めに華子、次に美紀。そして最後に二人が交差して羽ばたいていく様を描いていく。

和:華子は医者の娘なんやけれど。今日日こんな女子居る?というくらいのおっとりとした箱入り娘。

昭:「華子ちゃんて何してんの?」姉の紹介で一緒に食事した男性。現在無職の華子。それを「今は家事手伝いです」。「家事手伝いって何してんの?」「音楽を聴いたり刺繍をしたり(細かい言い回しうろ覚え)…」そりゃあ男性がああいう小ばかにした態度になるのも分かるよ。世間知らずでたいした事出来ないんやろうなって。実家に寄生したニートを体のいい言葉で繕うなよと。

和:金持ちで三姉妹の末っ子。エスカレーター制のお嬢様学校に通って、良妻賢母になるべく躾けられた。20代後半で同級生で結婚していないのは自分と友達の相楽逸子(石橋静河)の二人だけ。逸子はプロのバイオリン奏者で海外を拠点にしているからサマになるけれど…私は完全に行き遅れている。

昭:20代で必ずしも結婚、という時代ではなくなっているけれど…女性は…焦るよね(媚)。

 

和:早速お相手探し。手あたり次第に行動してみたけれど。結局義兄から紹介された相手が一番安心出来た。超ハイスペック男子登場。弁護士の青木幸一郎。一目ぼれ。

昭:政治家を何人も排出している一族。金持ちの中でもまた格が違う天上人。今は弁護士だけれど、いずれは政界進出間違いなしの御曹司。

和:何回もデートを重ねてクリスマスの夜にプロポーズされた。これで私も幸せになれる。安心安定の人生。そう思った日。眠っている幸一郎のスマホ画面に現れた「時枝美紀」からの親密なメッセージ。

 

昭:富山の田舎から上京してきた美紀。慶応大学に進学した彼女が目にしたのは「内部生」と「外部生」による慶応内格差社会だった。

和:小学部や中学、高校から内部進学で大学に進んだ生粋の金持ち(当然頭も良い)。ただでさえお金のかかる私学なのに、ずっとその学費を払える家庭環境の子供たち。同じ学校に通いながらも世界が違う。

昭:同級生の頃にちょっと関わった。それだけだったのに、社会人になった幸一郎と再会して以来、随分長い間ずるずると関係が続いている。町の中華屋で落ちあい、ビールを飲んで。時々体を重ね。パーティの場を華やかにするために幸一郎に呼び出されると、コンパニオンよろしく振舞う。

和:つまりはさあ。幸一郎は『華子』というトロフィーワイフをゲットして。けれど華子には出来ない穴埋めを『美紀』に求めている。そういう事ですよね?

昭:なんで俺に確認するんだよ。

 

和:華子と美紀。都会育ちの箱入り娘と田舎から飛び出してきてお疲れ気味女子。メインはその二人だけれど、二人の友達、逸子と里英も印象的だった。

昭:先述した、プロバイオリニストの逸子。サバサバした性格で、パートナーは居るけれど結婚にはこだわらない。それは自身の両親が仮面夫婦であったことも関係していると…けど俺…逸子の行動には矛盾を感じたな。言ってる事とやってる事が違う。

和:どういう意味?

昭:すみません。今回色々ネタバレしますけれど…幸一郎と美紀の関係にうっすら気づいていた。けれど何も言わなかった華子に幸一郎と美紀の関係を告げたのは逸子。華子と美紀を引き合わせたのも逸子。

和:待ち合わせより少し前に美紀と落ち合って、「今から幸一郎さんの婚約者が来る」「でも決して二人を戦わせたりするつもりじゃないの(言い回しうろ覚え)」そもそも美紀だって華子の存在はこの時が初耳。一方的な銃撃戦。

昭:結局逸子は何がしたかったんだ。「こんな男っているよね」という己の価値観を何故親友に押し付けないといけないんだ。…いやまあ…物語の展開として二人の女性が出会わなければいけないからやけれど…この会合の流れは個人的に不自然極まりなくて腑に落ちない。結局美紀に撤退させているだけやし。

和:華子は一見世間知らずだけれど、決して弱くはないんよな。自分と一緒に居る時の幸一郎は全てを見せてくれている訳ではないと感じている…だからこそ、自分とは違うタイプの女性が現れた時に「幸一郎さんてどんな人ですか」と聞ける。余裕がある。みっともなく取り乱したりしない。肝が据わっている。

昭:「幸一郎は悪い人ではない」美紀が華子に告げた少ない言葉の一つ。婚約者が居て。けれどずるずる関係を続けている女が居る。単純に言えば二股だし不誠実。けれど…その根底にあるものは狡さではない。俺はそう思う。青木幸一郎という人物のバランスを保つためには仕方がなかったんやと。

 

和:この作品は主に女性にスポットが当てられていて。都会。地方。お金持ち。平凡。既婚者。未婚者。エトセトラエトセトラ。色んなステータスを比較しながら、それらが交わったり交わらなかったり。苦しい時もあるけれど、決して苦しいばかりではない。

多くの人が集う東京という街で彼女たちがどう生きているのか。誰かに依存せずに生きていくということ。ふと視点を変えると、今まで見ていた馴染みの景色はガラッと変わる。

昭:スポットは女性が多いけれど。幸一郎もまたもがいて生きている人間の一人なんよな。彼は特別嫌な奴じゃないし奢った人間でもない。生まれ育った環境で固まった価値観の中で一生懸命に生きている。決して起用なタイプじゃない。しかも肝心な日は大体雨が降っている。ついてない。(女子がふんわり薦めてくるファンタジー映画…気乗りしなくても一応は観る価値ある。幸一郎よ『オズの魔法使』は名作やぞ)

 

和:どの登場人物にも少しずつ馴染めない部分があって。分かる部分もあるけれどどこかでふっと肩透かしに合う。そう思う中。どこまでも逞しくて好感が持てたのが、美紀の同郷の友人、平田里英(山下リオ)。

昭:慶応進学で一緒に上京した里英。彼女のガッツと行動力。あれこそ「サバサバした女子」だよ。俺一番好きやったね。

 

和:もうどこで幕が降りてもいいな。そう思っていた終盤。でもそう思っていたら…一番最高な瞬間にラストを持ってきた。最後に昭さん、あれどうでした?

昭:また君に~恋してる~。

和:坂本冬美!!