ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「クラッシュ」

「クラッシュ」観ました。


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SF作家J・G ・バラードに依る同名小説をカナダの鬼才、デイヴィッド・クローネンバーグ監督が映画化した作品。交通事故で性的興奮を覚える人たちを描いた問題作。

1996年に劇場公開。そのインモラルな性描写は、当時のカンヌ国際映画祭でも賛否両論の嵐となった。

今回、長らく消失していたと思われていた35㎜オリジナルネガがカナダで発見されたのを機に、約3か月の月日を掛けて修復。クローネンバーグバーグ監督の最終承認を経て再上映に至った。

 

昭:はいどうも。我々は当方の心に住む男女キャラクター『昭と和(あきらとかず)』です。

和:嫌々感否めないな~元気出していこう!

昭:そりゃそうやろう。当方の奴…こういうR18案件には漏れなく俺たちを召喚して…。俺はもっと知的なキャラとしてアカデミックな会話を楽しみたいのに。

和:まあまあ。ところで昭さんは他人に言いにくいフェチズムってありますか?

昭:やめろ!俺を社会的に殺す気か!…あっても口に出すもんか。

和:そんな人には言えない特殊性癖。でもそれを共有できる仲間が居たら…最高やん。そういう「俺たち変態仲間」でキャッキャ。そんな話。

 

昭:主人公のジェームズ。映画プロデューサーの彼は、美しい妻キャサリンパイロット?航空関係のお仕事従事)が居ながらも互いにフリーセックス状態。しかもその様子を報告し合う日々。

和:モテない昭さんには妬ましいばかりの美男美女ハイスペック夫婦な訳ですけれども。

昭:どこの行間から俺の何を見つけたのか。一々相手はしないからな。

 

和:ある日。自動車で対面衝突事故を起こしたジェームズ。相手の男性ドライバーは死亡し、助手席に座っていたドライバーの妻ヘレンはジェームズと同じ病院に搬送された。

昭:全身打撲と足を骨折したものの、病院内を歩行出来るまでに回復したジェームズは、事故の相手ヘレンとばったり遭遇する。夫を失ったのに、何故か平然としているヘレンと、彼女の後をついて歩くヴォーンという奇妙な男。ヴォーンから事故の写真を見せられ、俄然彼らに興味が湧くジェームズ。

 

和:事故のことを思い出すと何だかムラムラする…退院後再会したジェームズとヘレンは速攻盛り上がりセックス!そしてヘレンに依って導かれた。ようこそ!マニアック・サークル『クラッシュ・マニア』の世界へ。

昭:『交通事故の体験で性的興奮を覚える仲間の集い。クラッシュ・マニア』ってこれ…俺、理解出来んわ。

和:『当方の心に住む男女キャラクター、昭と和』。同じ人間の心から派生しているんやから。たとえ男女の役割分担があろうとも根っこは同じ。勿論こんなフェチズム、私も理解出来んよ。

昭:つくづく思ったけれどさあ。当方は怪我とか病気に萌える気質が一切無いんやなって再確認した。

 

和:夜な夜な仲間で集い。有名俳優の死に繋がった交通事故を再現するショー(スタントマンを使って実際に車同士を衝突させるという危険なショー)を見るなど。クラッシュ・マニアの活動にどっぷり浸かっていくジェームズ。

昭:事故で負傷した傷跡や麻痺、装具などにエロを感じる人たち。衝突実験ビデオ(車メーカーが出している、車の中に人形を置いて衝突の衝撃でどうなるのかを見せるビデオ)鑑賞会でエクスタシーを感じる面々。

和:THEビデオテープ、という粗い画像なのに…「今の所!もう一度巻き戻して!」と息を乱しながらリモコンを握るルーシー。

昭:1㎜も共感出来ない性癖。こんなエロビデオ上映会があってなるものか。

 

和:クラッシュ・マニアを纏める、謎の男ヴォーン。誰よりも人体と車体の壊れていく様に興奮し、その現象をより求める…『ナイトクローラー』の時のジェイク・ギレンホールさながらに目を見開き、不気味な表情で車を走らせ、追いかけてくる。

昭:ジェイク・ギレンホールに謝れ。

 

和:「7人居た観客のうち2人が途中で出ていった」そんな書き込みも見かけた今作。逆にそのコメントを見た事で鑑賞意欲が沸いたけれど…賛否両論の理由、分かるよ。

昭:全編の内8割以上がセックスシーン。けれども、観ていてエロさもワクワク感も感じない。

和:ジェームズとキャサリンはフリーセックス夫婦だし、クラッシュ・マニアの面々も同様。しかも性にとことんオープンな彼らは異性同性の垣根もモラルもない。兎に角盛り上がる衝動はセックスで解決。

昭:まだクラッシュ・マニアの面々は分かるよ。彼らにとって性衝動開放のスイッチは交通事故関連って決まっているから。まあそれがフェチズムって奴なんでしょうけれど。でもあの夫婦はな~。元々色んなアブノーマルセックスでも楽しめる私たち、という上から(?)目線な夫婦生活に、件のフェチズム集団をスパイスとして取り入れた、というとっかかりが否めなかった。特に妻キャサリン

和:あなたももうすぐヴォーンとセックスをするのかしら。一体彼はどんな風なのかしら(実際のセリフは赤裸々で超下世話)。

昭:下品極まりない!目の前のセックスに集中しろよ。

和:何というパワーワード。(小声)ちょっと落ち着いて。アカデミックな会話どこに行った。まあ…結局ジェームズもいつの間にかどっぷりそのフェチズム沼から出られなくなってしまうし、キャサリンも高見の見物ではいられなくなってしまったんやけれど。

 

昭:交通事故。己が運転している乗り物が制御不能となる瞬間に感じるスリル。そして衝突。硬質な金属がもろくも変形していく様。そして傷つく体…うーんやっぱり何もそこにエクスタシーを感じない。共感出来ないな。

和:その恐怖も痛みも。それ以外には変換されないし体感したくない。ただ…それにエロを感じて集う人達が居るならそれはそれで結構。ただし。他人を巻き込まないで欲しい。

昭:本当にそれ。個人的な賛否両論の否は「いかなる性癖だろうが自由だけれども人様に迷惑を掛けるな!」ということやったな。

和:ペーパードライバーだけれど。想像しただけで震える危険運転の数々。シートベルト無し。あおり運転。割り込み上等。ガンガン車体をぶつけてくる。こんなのが目の前に現れたらパニックに陥って勝手に事故る。そんな当方の車を見てエクスタシーを感じられたら…。

昭:同じフェチズムを持つ仲間同士で、どこか遠くでやってくれ。別にアンタ達の性癖をどうこう言わないから。

 

和:原作者J・G・バラードもクローネンバーグ監督もそんな感想着地は望んでいなかったやろうな~。

昭:いやいや。こちとら分別の付くええ年した大人なんで。「特殊性癖結構。でもそれは迷惑にならない所でこっそりと!」と肝に銘じたよ。変態はあくまでも水面下でソロ活動!

 

和:(小声)そういう(たとえ特殊性癖が)あっても口に出すもんか。という所がこのハイスペック夫婦との決定的な違いなんよな…モテない訳だよ…。