ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「新感染半島 ファイナル・ステージ」

「新感染半島 ファイナル・ステージ」観ました。
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ソイツに噛まれたが最後、瞬く間に己も狂暴なゾンビと化してしまう。

謎のウイルス感染に韓国が飲み込まれてから4年。命からがら脱出できた元韓国人たちは難民となった。

 

パンデミック初日。姉一家と共に韓国から脱出した、元軍人のジョンスク(カン・ドンウォン)。日本へ向かう船に乗り込めたのもつかの間。船内で発生した集団ゾンビ化により姉と甥を失い…残された義兄チョルミンと共に、流れ着いた香港で廃人同然で暮らしていた。そして4年後。

ある日。アウトローな連中に引っ張り出され。「お前たちの国に大量のドル札が詰まったトラックが置きっぱなしになっている。3日以内に取ってこればそれ相応の分け前をくれてやるぞ」と持ち掛けられる。連中と共に韓国へ渡り「湾岸に船をつけて3日間待っているから車で当該トラックからドル札を運んで来い」とのミッション。

残り二人の仲間と共に。まだ夜の明けない韓国に上陸したジョンスクとチョルミン。

視力の無いゾンビは暗闇では活動が低下する。夜のうちにとっとと回収してしまおうとしていた彼らだったが。

 

 『新感染 ファイナル・エキスプレス』

2017年公開作品となると、実際にも約4年前。当方の『マブリーことマ・ドンソク(ラブリーとかけている可愛いあだ名)』へのリスペクトがさく裂した…「ガムテーププロテクター!」「マブリー!マブリー!」香ばしさ満点のパニックムービー。

watanabeseijin.hatenablog.com

 

「しっかりと着地した前作から。まだ続編の余地があったか。」

監督は前作同様ヨン・サンホ。キャストは前作からガラッと一新して。

 

「まあ。一言で言うと別モンでした。」

 

先に鑑賞を終えていた映画部部長からの「韓国版『マッドマックス怒りのデスロード』ですな」という感想に頷いた当方。

前作は「未知のウイルスに突然侵された人々が陥った恐怖。逃げ惑う中で、愛する者を守るためにはどうすればいいのか」…その心は「イコール自己犠牲」の連鎖。

普段は冷たく利己的、けれど愛する娘をどんな形でも守ろうとした父親。お腹の子供と愛する妻を守ろうとした男。高校生のカップル。三者三葉の視点が交差しながら、とにかく悲劇が連なったドラマパート。

 

今回。主人公ジョンスクは姉と甥を救えなかった痛みを胸に抱えては居るけれど。そこに固執し過ぎる事は無い。

4年前。逃げる道中で出会った親子を見捨てた。時を経て、舞い戻った祖国でその時の親子に再開したけれど…ちょいちょいそのエピソードも差し込まれるけれど。お涙頂戴で引っ張り過ぎる事もない。

 

「とにかく、カーチェイスがやりたかったんやな。」

 

思わずそう思ってしまったくらい。この作品の印象は『怒りのデスロード』。

 

4年ぶりに戻ってきた祖国はゾンビで溢れかえってはいたけれど…決して人類が死に絶えた訳では無かった。

廃墟と化した町を跋扈していた631部隊。最早狂気と化した軍人たちが集結したそれ。捕らえられた弱い者たちは集められ、夜な夜な631部隊の娯楽としてゾンビたちとの死闘を見世物にされていた。

 

ノコノコ車で上陸したジョンスク達。ゾンビたちと631部隊によりあっけなくチームは解体(モブキャラのいかにもモブ然とした扱いよ!一緒に乗り込んだ仲間二人ここで退場)。義兄チョルミンは631部隊に捕まり、ジョンスクは謎の幼い姉妹に拾われた。

 

改造車を巧みに操り。ゾンビも631部隊もかわして、ジョンスクを自らが住む秘密基地に運んだジュ二とユジン姉妹。彼女らの母親ミンジョンを含む三人は、かつてパンデミック初日で混乱状態だった時にジョンスクが見捨てた親子だった。

当時行動を共にしていた夫を亡くし。今は元師団長であったキム軍曹と行動を共にするミンジョン親子。とはいえ高齢のキム軍曹はうっすら認知症を患っていて、夢のアメリカ軍高官との無線通信に余念が無く戦力にならない。

 

かつての非道を詫び、再会にしんみりするのもつかの間。

「その大量のドル札ってやつを運べば、船に乗って韓国から脱出出来るってことか」

 

そこに気づいたミンジョン家族。そして、捕らえられたチョルミンから得た情報から同じことに思い至ったとある631部隊上官。

 

かくして。押し寄せるゾンビと631部隊との死闘を織り交ぜながら。果たしてジョンスクとチョルミン、ミンジョン親子は韓国から脱出する事が出来るのか。

 

「一体何を見せられているのか」

思わずそう思ってしまうほど。カーチェイスったっておよそ「こんな動きは実際には無理!」の連続。どれほどの高性能カスタムが出来るんだという変幻自在の車に、それをいともたやすく操る十代の少女。多分…当方がキッズな世代ならワクワク出来たんでしょうが…いかんせん、汚れちまった当方には「漫画か!」という突っ込みしか出来ない。

(そもそもねえ。無粋を承知ですが。世界中から孤立して4年も経つ廃墟でどうやってガソリンを得てるんですか?あの車のメンテナンスは?電気は?清潔な水は?食料は?どこかの備蓄倉庫から食べ物を調達するったって、賞味期限の問題も資源の枯渇も考えられる。どうやって彼らが生きてきたのかっていう描写が無さすぎるんですよ)

 

そしてあまりにも「主人公は死なない」が前提過ぎて…。

全速力で。しかも集団で追いかけて襲ってくるゾンビに対しても、631部隊のハチャメチャな攻撃にも銃弾にも「主人公及び主要キャストは死なない!」というあまりにもあからさまなご都合主義展開。(けれどモブは何処までも雑、脇役も概ね退場の扱い…)

 

まあ。「何があっても彼らは困難を切り抜けて生きていく!」というベクトルが一切ぶれないのは余計な心配が無く鑑賞出来るという利点があるか。

 

前作との関連は設定のみ。今回は随分エンターテイメント満載な方向に振り切った印象。ごった煮感が強いので戸惑いましたが…これは別モノだと割り切って身を委ねるしかない。

「まあ。『そもそも彼ら=ゾンビは何故韓国の地で異常発生したのか?』みたいな謎解きを始めなかっただけでも良かったとするか。」

本当にねえ。そういうシリーズ化だけは勘弁してほしい。ここまでで十分です。