ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「100日間のシンプルライフ」

「100日間のシンプルライフ」観ました。
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目が覚めたら文字通りの『裸一貫』。

所持品は全て倉庫に没収。そこから自分に必要なモノを一日に一つずつ取り戻していくルール。期限は100日。

 

ドイツ・ベルリン。幼馴染で今ではビジネスパートナーのパウルとトニー。それなりに成功しているアプリ開発企業の共同経営者の二人。

スマホ依存症でお勧めの商品は直ぐに買ってしまうパウルと、コンプレックスの塊なトニー。

自社のアプリが超大手IT会社との契約に繋がり。盛り上がりに盛り上がった社員総出のパーティでまさかの大げんか。酔った勢いで大金を掛けた勝負を提示してしまう。

 

『持ちモノ全てを倉庫に没収し、一日一つだけモノを取り戻せる。新しく何かを買うのは禁止。会社の食べ物は食べてよい。期限は100日。達成出来た方の勝ちで、負けた方はアプリの売り上げから自身の取り分全てを社員に分配する』。

 

元々モノに溢れた生活をしていた二人。裸一貫から彼らは何を選択し、そして100日後にはどうなっているのか。

 

とにかく主人公二人の関係性が観ていて楽しかった作品。幼馴染で家族同然に育った二人のキャッキャした感じ。裸だって恥ずかしくないし何なら茶化せる。掛け合いのテンポが速い。

けれどそんな二人にも苦い過去が…かつてトニーはパウルの彼女を寝取った事があり、それを引きずるパウルは新たな恋が出来なかった。

 

そんなパウルが開発したのが音声アプリ『ナナ』。いわゆるSiriの女性音声バージョン。恋人っぽい喋り方でユーザーの生活に寄り添ってくる。

超大手IT企業へのプレゼン。パウルは『ナナ』との生活に依る癒しを強調していたが、トニーはナナとの生活から得られたユーザーの情報が使えると説明。実際にナナを使用しているパウルが、購買意欲に駆られ、いかにナナに言われるがままにモノを買っているかを公表した。

確かにパウルの部屋はモノで溢れ雑然としていた。買った事で満足し封も開けていない商品。同じモノや同じようなモノ。

けれどそれをプレゼンの場で指摘されたパウルは機嫌が悪い。

プレゼン成功で盛り上がる社員総出のパーティーでも、苛立ちが収まらなかったパウルが吹っ掛けた喧嘩。おおいに買ったトニー。

そうして二人のシンプルライフが始まった。

 

「もし当方だったらどうする。何が必要だろうか」。

 

まあ…そんな「もし」は無いとしたいけれど。起きたら裸かあ…しかも季節は冬でしたよ。冬のドイツ…滅茶苦茶寒そう。

確かに一発目は暖かい上着や寝袋になるやろうな。でも…当方にはもっと必要なモノがある。『眼鏡』これが無いと生きていく事が難しくなる。

裸眼で生活出来る人には分からんでしょうがねえ。眼鏡が無いとあんまり見えていない人にとっては体の一部なんですよ。

なので。「眼鏡を掛けると幼くなる」みたいな理由で普段コンタクトをしていたトニーが同じコンタクトを数日使い続けて角膜炎になる、みたいなエピソードに震えが止まらなかった当方。トニーよ!目の病気を馬鹿にしたらアカン。その民間療法も止めろ!ちゃんと眼科に行って処置してもらって然るべき目薬をもらわんと、一生コンタクトなんか付けられなくなるぞ!(終盤眼鏡を掛けていたトニーの姿に安堵)。

 

完全に話が脱線してしまいました。

これは大きな契約になる。アプリの売り上げは凄い事になるぞ。しかもツートップが馬鹿な勝負を仕掛けた。こんなのあの二人が完走出来るはずがない。負けた方の手取りが我々に分配される。これは楽しみ。

おのずと士気が上がる社内。「どちらが勝つか」という賭けまで行われ、「買い物依存症パウルが我慢できるわけが無い」とトニー一強。

これがまた、仲の良い会社なんですね。こういうお仕事では無いのでよく分かりませんが…「この会社には住める」と思った当方。

社内の内装や共有スペースの面白さ。何?あのビニールボール一杯で体を沈める部屋。ワクワクしてしまう。

 

男前二人が裸でキャッキャして(言い方)、コミカルなテンポで進む前半。けれど話が進むにつれて「あ。これ結構しっかりした話やな」と考えさせられる。

 

二人が毎日通う事になった倉庫で出会った女性、ルーシー。彼女の倉庫にはぎっしりと衣装が詰め込まれていて。そこで様々な恰好を楽しんでいた彼女と仲良くなるトニー。

初めこそイイ感じの女性を口説きたいだけだったけれど。何も買えないトニーはいつもの様な気取ったエスコートが出来ない。けれど素朴なデートが愛おしくて。どんどん彼女に惹かれていく。

 

今は一人で暮らすパウルの祖母や、パウルの両親との関り。気になる彼女。仕事。そして何より主人公二人の友情、絆…。多方面から線を手繰り寄せて、けれどそれがしっかり纏まっている。

 

ずっとくすぶっていた過去のこと。お互いに対して本当に言いたかったこと。これをぶつけたら関係性が崩れるんじゃないか。そう思っていたことをしっかりぶつけあう、まさに泥仕合を微笑ましく感じる当方。いいなあ。こういう相手が欲しいよ。

 

100日経った時。過剰にそぎ落とされたけれど、スッキリとした表情の二人。そしてルーシーへの言葉とその姿に胸が熱くなった当方。こんな事を言えるようになったなんてな…。

 

基本的には明るく楽しくテンポの良い…けれど観終わみれば「人生で必要なモノかあ」と考えさせられる。身の回りがごちゃついていないか…心当たりがあり過ぎる。

 

「一気呵成には出来ないから。一年掛けて断捨離していこうか」。

そう思う当方…の先行きが不安なのはハナから「一年掛けて」とか言っている所です。