ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「本気のしるし《劇場版》」

「本気のしるし《劇場版》」観ました。
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「その女、出会ったことが事故だったー」

 

星里もちるの同名漫画を映像化。深田晃司監督作品。

2019年10月からメ~テレ(名古屋テレビ)他で放送されるやいなや賛否両論の大反響を呼んだドラマ。その後劇場版へとディレクターズカット版として再編集。カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクションに選出された(今年5月のカンヌ国際映画祭自体が開催を見送られた)。

10月の映画館上映封切から「今年の邦画最高峰!」「やばいやばいやばい」「これを観ずに何を観る?」といった感想が(当方的に)溢れかえり…約4時間の上映時間とスケジュールの折り合いが付かない日々を送った挙句、当方の生息地域映画館の上映最終日に滑り込む事が出来ました。

 

昭:いやこれ…きつかったな(溜息)。

和:きつかった…232分もの間、一時も主人公男女に感情移入出来なかった。

昭:散々言ってしまっているけれどさあ。メンヘラ系女子、苦手なんですわ。

和:いやいやいや。これヒロインの浮世だけじゃなくて、辻くんも相当アレやからね。

昭:そうやねよなあ…『当方の心に住む男女キャラ、昭と和(あきらとかず)』の男女の立場から語る会話劇は多分成立しない…だって彼らの立場どちらにも立てないもん。

和:まあ…諦めんと。ざっくりあらすじ追ってみよう。

 

昭:花火をメインとした?子供玩具の卸しを扱う会社に勤める辻一路(森崎ウィン)。営業職をそつなくこなし、社内の女性社員二人と二股しつつ淡々と暮らしていた辻。

ある夜、立ち寄ったコンビニで出会った女性。他愛もない会話を二三交わした後、二度度と会うことなどないと思っていたのに。コンビニから帰宅途中、電車の踏切内で車で立ち往生している彼女に再び遭遇。

和:何とか踏み切り事故を回避できたのに…騒ぎを聞きつけてやって来た警察官に対し、辻のせいだと嘘をつくその女性。

昭:はいアウト。

和:早い早い早い。結局直ぐに誤解は解けたけれど。警察とのやり取りが終わった後も「お金が無いんです」と辻に金の無心。何故か(昭:何故だ!)言われるがままに金を渡し。けれどそのまま逃げられない様に彼女の名前と電話番号を確認した。彼女の名前は葉山浮世(土村芳)。

昭:けれど。案の定浮世からの連絡はなし。それどころか浮世がその時乗っていた車のレンタカー会社からレンタル料金の延滞の催促が辻の携帯に再三掛かってくるようになる。

和:何度かは突っぱねたけれど。結局延滞料金を支払い(昭:何故だ!)。そのまま泣き寝入りか?と思っていた矢先、営業帰りにベンチで寝ている浮世に遭遇。

昭:このペースであらすじ追ってたらいつまで経っても終わらんし、精神衛生上悪い…フラストレーションがたまりまくっておかしくなるぞ。

和:~とまあ、最悪の出会い方をした辻くんと浮世なんですがねえ。兎に角浮世がひどいんですわ。

昭:ぱっと目を引くタイプでなく、いかにも弱弱しい。二言目には「すみません」「私のせいなんです」と誤ってくる。一人では危なっかしい。この子は俺が付いていないといけないんじゃないか。

和:やっていけんだよおおおおお。こういう輩の方が男の庇護欲くすぐりながら逞しく生きていけるんだよおおおおお。

昭:でもなあ。浮世の脳内の読めなさは『そういう女性のしたたかさ』では説明出来ない感じがしたぞ。なんていうか…病気?…その場しのぎの嘘も行動もあまりにも突拍子が無さすぎて。正直、浮世に関しては「訳わからん。こいつとは絶対関わるべきじゃない」としか思えなかった。なので…寧ろ怖さを感じたのは浮世を全て受け入れていく辻くん。

 

和:二人が出会うきっかけになった踏切事故。この時点でもうアウトなのに。浮世の為に借金を肩代わりしたり。親しくもない赤の他人の借金120万円とか、普通払う?

昭:あいつはきっと実家の庭から石油が出るとか、働かなくてもいいのに社会を知るために労働して見せている高等遊民なんやろう。小さな卸し会社のアラサー会社員がポンと払える金じゃないよ。

和:そんな小さな会社内で堅物な先輩(石橋けい)と後輩のみっちゃん(福永朱梨)の二股をかけていた辻くん。しかも先輩とは半同棲状態だったのに…浮世の出現によって崩壊していく彼女達との関係。

昭:先輩…主人公二人の意味不明な世界観にフラストレーションが募る中、最も地に足が付いていたキャラクター。生々しくて最高やった。

和:源氏物語でも六条の御息所最推し派としては、嫉妬に燃えて朽ちる年増はご馳走やった…引き際も、その後も恰好良かったな。

昭:不気味な例え。傷ついたみっちゃんの取った行動は、社会人の視点からしたら解雇一択なんやけれど…。辻くんと結ばれなかった事で彼女たちは自分の幸せを見つけていく。彼女達にとって、辻くんは通過点でしかなかった。

和:ていうか、話が進むにつれ仕事しないよね。辻くん。

 

昭:232分という長尺故、2部に分けての上映。一旦休憩を挟んだ時に出た大きな溜息。

和:好きになれないヒロインと振り回されることに快感を感じる主人公。共依存のメンヘラカップルが社会からどんどん堕ちていく行程を見せられている事の苦痛と…何故かもうこうなったら見届けるしかないという不思議な決意。これが作中のヤクザ(北村有起哉)が言ってた「男と女が堕ちていく所を見るのが好きなんですよ(言い回しうろ覚え)」ってやつなんですかね。

 

昭:後半は後半で「おいもう一人メンヘラが増えたぞ」というポケットの中のビスケット現象に叫び出しそうになったけれど…散々大風呂敷広げておいて(体感)最後の20分くらいで意外な畳み方を仕掛けてくる。

和:散々周りを振りまわしてきた浮世がやっと誰かに縋らずに生きていける様になった…けれどそう見せながらずっと辻くんを探し続けていた浮世。

昭:「い~つでもさ~がしているよ。どっかに君の姿を」

和:気持ち悪う。一見まともに社会生活を営んでいるようで、ローラー作戦で辻くんを探している所や、久しぶりの親子の時間なのに辻くんに似た姿を見た途端走り出す所。最後の踏切のシーンも「心底アンタは変わっちゃいないんだよ!」と言いたくなってしまった。

昭:とことん俺ら主人公カップルに手厳しいな…。

 

和:232分のスケールでお届けされた壮大なメロドラマ。好きな人はとことん嵌る。こちとら主人公達に一時も感情移入出来なかったから、フラストレーションが溜まりに溜まった時間もあったけれど…何故か終いには笑えてしまって。とてつもないものを見せられたけれど、しかと見届けた満足感もあって気持ちはぐしゃぐしゃ。疲労困憊。

昭:それにしても、連続テレビドラマで10回放送をリアルタイムで追っていた人達のメンタルよ…だって…見れる?このドラマ。

和:いやいやいや。それは結構です!

昭:二人だけで生きていって欲しい。他人を巻き添えにせず二人だけで…ってこういうカップルは何かとお騒がせし続けるんやろうなあ~。

和:はい考えない考えない。きっと二人は幸せに暮らしましたとさ。見えない所できっと…もう見せてくれなくて結構ですよ!…走って逃げるぞ!