ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「エマ、愛の罠」

「エマ、愛の罠」観ました。
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若く美しいダンサーのエマ(マリアーナ・ディ・ジローラモ)と、年上で振付師の夫がストン(ガエル・ガルシア・ベルナル)との結婚生活はとある事件をきっかけに破たんした。

家庭も仕事も失ったエマ。ある思惑を持って中年女性弁護士ラケルに近づき、親密な関係になっていく。さらにラケルの夫で消防士のアニバルも誘惑。そして別居中の夫、ガストンも挑発し始める。

エマを巡り、廻りまわる不穏な愛の渦…一体エマの目的は何なのか。

 

(とある場末のバーにて。カランコロンカランの入店を知らせる鐘から開始)。

昭:マスター!即座に脳を溶かす強い酒をください。

和:荒れてんな~。大丈夫かね。(昭の隣に座る)あ。マスター隣と同じものを。

昭:だって。だってこの作品の感想を当方の心に住む男女キャラ『昭と和(あきらとかず)』でって…あ、どうもマスター。てコレ、ストロングゼロですか。バーなのに。

和:せめてグラスを…(乾杯の音)。そうやねえ。嫌いやもんね、メンヘラ系女子。

昭:色んな嗜好の人が居る。色んな事情を抱える人が居る。精神状態がどうあろうと他人にとやかく言われる筋合いはない。そう理解しているつもりやけれど…どうしてもアカンねん。こういうタイプは!

和:まあまあまあ。ストゼロ飲みなよ。私だって同じ人間の脳内に住むキャラクターなんやから、根底は同じ思いですよ。脳が溶けきる前に語りきろう。明日も仕事やし。

 

昭:振付師のガストンとダンサーのエマ。二人の間に子供は生まれず。養子に迎えて一緒に暮らしていた息子のポロ。どうやら彼は取り返しのつかないオイタをして二人の手元から奪われてしまった。

和:金髪で派手派手しい母親。こんな事をしでかす様になったのは家庭の環境が悪かったから。そう行政に判断されてポロは夫婦から取り上げられた。抗議を唱えてポロの居場所を聞きに行くも、けんもほろろに追い返されるばかり。

昭:加えて夫は味方になってくれない。本当の親子でもないのに、ぎょっとするようなスキンシップを取っていたと非難されて…そもそもアンタが不能だから私たちの間には子供が居なかったんじゃないの。…って!それ、傷つくと思わんのかね?

和:『恋愛睡眠のススメ』ではあんなに可愛かったのに…ガエル・ガルシア・ベルナルがこんなくたびれた役をねえ。一回り位歳の離れた夫婦。夫はとある後遺症で性的に不能。ってこんなセンシティブな事を割とずけずけ言っちゃうんですよね。エマって奴は。

昭:ガストンに聞きたい!お前はマゾなのかと?まあ…そうなんだろうな。じゃないとこんなの耐えられるわけが無いよ。

 

和:公私ともにパートナーだったのに。私生活が破たんした上に、一緒に作り上げてきたダンスまで文句を付けられ始めた。とはいえ。それはおそらく、突然降って沸いたんじゃなくて滓の様に積み重なってきたモノが隠せなくなっていたんやろうけれど。

昭:「私たちがやってきたのは観光客相手の見世物よ(言い回しうろ覚え)」。これまで一緒にやって来たダンサーたちとのすれ違い。苛々した気持ちは互いに良いモノを生み出せず。

和:しかもエマは先頭切ってガストンを否定、ダンスグループから脱退する。仲間意識が強くてエマひいきのメンバー達は一斉にエマについていく。

昭:すみません!ストゼロお代わりください!…本当にねえ俺がエマに対して腹立たしいのはこういう所ですよ!

和:落ち着いて。マスター、私もお代わりを。チェイサーの水?要りませんよ頭が濁りますから。

昭:言いたいことがあれば面と向かって言えばいい。ちゃんと一人で言いに来い。何年夫婦をやってきたんだ。何年公私ともにパートナーをやって来たんだ。確かにポロが引き起こした事件は取り返しが付かないものだった。結果愛していたポロは取り上げられたけれど。何故その話がすっきりしなくて宙に浮いているからってこういうぶっ飛んだ行動に出るんだ。

和:含みを持たせた表情浮かべて、仲間たちを精神的に盛り上げて夫に歯向かわせて。そして己は虎視耽々と一組の夫婦を狙う。

 

昭:弁護士の妻と消防士の夫。何故この二人に取り入って関係を持っているのか。何だか廻りまわった描き方をしているので思わず「ただの暴走淫乱ビッチか~」なんて思ってしまったけれど。

和:何て品の無い言い方…まあ、確かに男女問わず。そして夫も仲間も他人夫婦も。ありとあらゆる人とまぐわうエマ。みたいなシーン、あったもんな。

昭:けれど。結局蓋を空けてみれば。至極分かりやすいエマの目的。強制的な「皆で幸せにくらしましたとさ」。やってられんわ。

 

和:エマが持つ魅力に見せられて、浮かれて行動した。けれど結局自分は持ち駒でしかなった。エマがどうしても手に入れたいモノ、そして手に入れた後逃げ出せなくなる環境を整えるための駒。って人を何だと思っているんだ。

昭:自分が何かを心底欲しいと思っても、誰かを利用するようなやり方は嫌いだ。その人にだって心があるんやからな。だから俺はエマを好きになれない。

和:予告編が随分扇情的やったからなあ~。ここまで気持ちの折り合いが付けられないとは思わなかったね。

 

昭:美しくてミステリアス。中性的で何だかエロい。全身を使って表現する妖艶なエマ。何を考えているのか分からない。けれどその内情は…愛する者を必ず手放さない。何が何でも捕まえに行く。そんな捕食者エマを…俺はどうしても好きになれなかった。

和:大丈夫。エマ側もYOUは眼中にないから。

昭:ナヌ。

和:「あなたが好まない美しきメンヘラ女子もまた、あなたを好まないのだ」。何様のつもりだ。身の程を知らんといかんよ。棚ぼた式にエロが降りかかる事なんてYOUにはこれからもずっと…。

昭:おいおいおい。何だなんだ。ちょっと…ちょっと!気づけばストゼロめっちゃ空いてない?足元にいくつも空き缶が!マスター!水!

和:水は頭が濁るから…。正気では居れないのなら…なりふり構わず何かを手に入れたいのならば…これぐらい狂った世界がお似合いなんですよ。

昭:ああもう。だから和とこういう話するのしんどいんやんか。ああ〜飲むな飲むな〜。