ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ようこそ映画音響の世界へ」

「ようこそ映画音響の世界へ」観ました。
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「何年か前(2016年)に公開された『すばらしき映画音楽たち』。あのドキュメンタリー映画、凄く良かったんよな~。何となく似た感じの題名…同じ感じなのかな~」。

 

そんな風に思って、公開から少し二の足踏んでいた己を叱咤したい。確かに『映画音楽』に携わる人々を題材にはしているけれど。前述作品とは全く違う(どちらも良い)。

 

視覚から得られる情報。それは多くを占める。こと映画というジャンルに於いての画力は圧倒的。けれど。感情を持っていかれる時、それは音楽の力に導かれている場合は大いにある。

 

近年新しく誕生していく映画館。それらの謳い文句は概ね『大迫力の大画面』『体験型映画館』『高画質は当たり前』。けれど、実際にそういう映画館での映画鑑賞体験を経た当方がまず感動するのは大抵「音が凄い」。

座っている座席が揺れる振動。四方八方から湧き出る音。当方にとって、目の前にある世界とシンクロする為には音と音楽は必須。

 

この作品は1877年、トーマス・エジソンが蓄音機を発明した所から現代までの映画音響の移り変わりを描いていく。

映画の歴史というと、白黒のサイレント映画からトーキー、そしてカラーへと想像していた。サイレント時代を愛していた人々や、映像に声を当てていた活動弁士、楽団などの映像や映画も観た事がある。時代の流れなんだ、俺たちはじき不要になる。映画は映画だけで完結する時代が来る。そう彼らは語っていた。

 

そういった、出来上がったサイレント作品に後から命を吹き込んでいた人たちの悲喜こもごもは…話が脱線しますので割愛させて頂きますが。

 

映画に音を付ける。自然のまま、撮影したままの映像では迫力が足りない。そこで付け足される臨場感。戦場で大勢の兵士が行き交う様。ジェット機のモーター音。しかもそれには元々無い音をドレッシングし味を足す。その技術の進化と、実は変わっていない部分。

「私たちに作れない音は無いわ」。そう技術者は語っていたけれど。当方が「なるほど」と思ったのは『音を消す』という技術。

屋外で撮影する時、必ず入ってくる風の音。近くにある何らかの施設や交通機関から聞こえてくる音。そんな『ノイズ』を先ずは消す。それから映画作品の世界観に沿った音で整えていく。

 

映画を撮る現場なんてそうそうお目にかかった事はないので想像ですが。監督の頭の中に描かれている世界をそこに居る皆で体現して。そこから持ち帰えって音や画像編集を付けて仕上げていく。

ド素人故、幼い言い回しで恐縮ですが。数々の監督たちが音響技師に「音で助けて欲しい」というように、監督たちは音や音楽が映画作品を盛り上げる大きな要素であると知っている。

「~監督の最新作」「俳優の何某氏が出ている話題作」それらは映画館に足を運ぶきっかけにはなるけれど。その映画に映らぬ、多くの職人めいたスタッフ達の力の偉大さ。

そして彼らのワクワクした表情。

 

「子供の頃、録音したカセットテープを切り刻んで後ろから再生したんだ」何その面白いやつ。どうしたら音が作り出せるのか。それをずっとワクワクしながら探している。

 

またもや脱線してしまいますが。三谷幸喜映画作品の『ラチ”オの時間』。

生放送のラジオドラマなのに、大物女優の我儘でどんどん内容が変更されてしまい製作スタッフが四苦八苦する内容(うろ覚えな挙句雑)でしたが。確か夜警のおじさん(おヒョイさん)が実は元音響製作の人で。終いには彼も駆り出されて、小豆の入った箱を揺らして海の音を再現する。

時代は変化し、最早「作れない音はない」と言っていたけれど。それでも水中のじゃぶじゃぶという音を足すのに、実際に水に布を浸して動かしてる技師たちを観た時。ラチ”ヲの時間を思い出した当方。結局、どれだけ技術が進化しても廃れない分野ってあるんだな。

 

最後の最後。お馴染み映画音楽作曲家のハンス・ジマー登場で「出た出た」とにやつく当方。彼を初めとする作曲家たちの物語は、冒頭に既出した『すばらしき映画音楽たち』で散々見せつけられている(当時、鑑賞後思わずハンス・ジマー作品のCDを借りたくらい)。彼らのうんちくは幾らでも聞いていられる。

 

一つの映画作品を観る時。その監督の世界観や好きな俳優。映像の美しさやスケール、迫力。色んな楽しみ方がある中の一つ、音響。そこを切り取って観せてくれた。

勿論衣装や道具など…他にも多くの人たちの手で作品は出来上がっているんだなと、当たり前だけれどあまり考えない事を改めて実感した当方。

 

映画が観られている事に感謝。作っている人たちに感謝。「映画が観たい」のほほんと映画を観ているけれど。全力で作っている人たちがいる。映画を観る環境を作ってくれている人たちがいる。何だか全てに感謝してしまう…このご時世も相まって。

 

ともあれ映画好きなら観て損はしない。それどころかこれからの映画鑑賞に大いに影響を与えそうな作品。

今後もこういった映画関連お仕事作品はチェックしていこう。そう思っています。