ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「音楽」

「音楽」観ました。
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大橋裕之原作漫画『音楽と漫画』のアニメ映画化。

岩井澤健治監督が7年の月日を掛け、40000枚超の作画を全て手書きで製作した。71分。

 

「何だか凄いやつが来るなこれ。」

劇場予告編で観て気になって。「ヴィレッジヴァンガードとかのオサレブックショップで置かれている、サブカル大好きな人たちに支持される系の。」という先入観はありましたが。でもまあ「気になったら、観ない後悔より観る後悔!」という主義ですので。いそいそと映画館に向かった当方。

 

昨今の疫病の関係で「観たくても映画館に行けない。」という方も多く居られると思いますが…「これは映画館で観るべき作品だ。」と大きくない声で叫ぶ当方。(そもそもどんな作品だって、映画は映画館で観るのがベストだとは思いますが。)

 

研二(坂本慎太郎)。朝倉(芹澤興人)。太田(前野朋哉)。三人の不良高校生が。リーダーである研二の「おい。バンド組もうぜ。」の一言でバンドを結成。何も分からない彼らは、学校の音楽室からベース2本とドラムを持ち出し、研二の家で練習を始める。「何か良かったから。」と語感で決めたバンド名『古武術』。練習を重ねるにつれ、バンドが楽しくなってきた三人。

ある日。同じ校内に『古美術』というバンドが存在すると知り、会いに行く三人。そうして知り合った森田(平岩紙)との交流から、ますます音楽の世界にはまり出す太田と朝倉。

「今度、坂本町ロックフェスティバルがあるんだ。参加しない?」森田に誘われ、地元のフェスに参加する事になったが。

 

絵柄もさることながら。ストーリーもすこぶるシンプル。楽器なんて触った事も無かった不良三人組が、思い付きでバンドを組んで。楽しくなっていくという。

 

当方はこの原作漫画を未読なんでアレですが。漫画を読んでいる側の、脳内で再生されていた世界をはるかに超えた映像化だったんだろうなと推測。

「好きすぎる漫画が映画化されると聞くと、期待する半面それよりももっと不安が大きい。」「おかしな感じにならんやろうか。」当方はそう心配する人種で。(実際に残念な結果に終わる事は往々にしてある)因みに、そんな当方にとって最も良かったマンガからの映画化作品は松本大洋の『ピンポン』(2002年/曽利文彦監督)。(松本大洋作品は『青い春』『鉄コン筋クリート』も良かった。)

話が脱線しましたが。要は映画製作をした側の、原作に対する溢れんばかりの愛情。そういうのが伝わってくるのが当方の考える『良い映画化』。(例外もありますが。)

 

原作漫画を読んで感じた世界観を。岩井澤監督が持てるだけの技術と熱量で映画として昇華した。そいう印象。

 

楽器を持って、研二の家に向かう三人。

「いくら何でも、いきなりそんなセッション出来へんやろう~。」「そもそもどうやったら音が出るのか。音程すらも分からんぞ。」本当に楽器に疎い当方の、無粋な茶々は横に置いておいて。

初めてなのに。「せーの」でめいめいが好きに音を出してみたら上手く噛み合った。「俺たち、いいんじゃねえ?」淡々とした口調ながらも、ワクワクしている気持ちが伝わってくる。

 

「似たような名前のバンドが居る。」同じ校内に前から存在していたバンド『古美術』。

 

「というかねえ。森田!…森田よ‼」 
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 「この作品には悪い人は居ません。」研二を敵対視する他校の不良、大場(竹中直人)だって。結局おとぼけで憎めない。誰しもが愛すべきキャラクターだけれど。

 

「でも違う。森田は他とは違う…(震え声)。」

 

初見からぶっちぎりの存在感だった森田。森田から目が離せない…なにこれ、恋ですか?

地味なビジュアル。「絶対に潰される。」と突然現れた不良たちに震えたけれど。

「お前らの曲を聞かせてくれ。」と乞われて歌ったフォークソングがもう…1960年代にタイムスリップかと思う位の渋さ。

そして「俺たちの曲はこんなだ。」と不良たちが奏でた音楽には「ミスター味っ子か!」というほど表現豊かに感動する。

不良と地味系。決して交わるはずが無かった彼らが、音楽を通じて友情を深めていく下り。しかもきちんと互いにリスペクトしている感じ。好感が持てる。

「そして。フォークソング一辺倒かと思いきや。根底に流れるロック魂。堪らん。」

おそらく金持ち。そんな森田の自宅。アンタ、滅茶苦茶音楽好きやんか…。

件のフェスのチラシ配りで見せた、森田の変貌。そして何より、フェス当日のあの森田…(胸熱)。

 

古武術』の三人。練習風景ではベース二人+ドラムという、流石に音楽に疎い当方でも「ドドドみたいなリズムばっかりになってないか。」と思っていたけれど。

最終のフェスで『古美術』が交わった事で生まれた、曲としてのクオリティ。爆上がり。

 

研二の…唐突なあの心変わりは「ん?」と違和感を感じましたし、最後にあの楽器を持ったのも、正直唐突さは否めませんでしたが。

 

「ああでも。結果が良ければいいじゃない。」

そうやって強引にねじ伏せてくる。だって。演奏が最高やったから。

 

フェスのシーン。実際に実写で撮影したモノをアニメーション化したというだけあって、見ごたえのあるライブたち。こんなにシンプルなのに。何だか涙が出てきた当方。

「畜生。これが音楽の力だ。」

 

岡村靖幸がどこかで出演している…ってここか!」岡村ちゃん大好きな当方が。無言で頷いた瞬間。最高やな。

 

奇跡のステージを経て。きっと彼らはこれからも音楽を続ける。

「だって…バンド=女子にモテたい。亜矢(駒井蓮)が居る限り、研二は音楽から足を洗えない。」

 

確かに「オサレサブカル系の人たちに支持される作品」ではありますが。音楽にも楽器にもバンドにも詳しくなくても大丈夫(詳しいに越したことはなさそうですが)。

「あ。これ、好きやわ。」という思える何かを見つけた高校生のお話。何となくつるんでいた友達が同じ趣味を共有出来る仲間になる。一緒に居たら楽しい。

「彼らにとっては、それが『音楽』だったという話。」

 

微笑ましいし羨ましい、胸が熱くなる。そして圧巻のライブシーン。これはねえ、本当に映画館で…(段々小声でフェードアウト)。
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