ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」

「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」観ました。
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ダニエル・クレイグ主演。ライアン・ジョンソン監督オリジナル脚本作品。

 

NY郊外の館。そこに住む、世界的ミステリー作家ハーラン・スロンビーが首から血を流して息絶えている姿が見つかる。奇しくもそれは、ハーランの85歳の誕生日パーティー翌日の朝だった。

 

アガサ・クリスティーの様なミステリー作品を作りたい。」ライアン・ジョンソン監督が以前に語っていた言葉。満を持して。オリジナルキャラクター名探偵ブノワ・ブランにダニエル・クレイグを抜擢。その他もそうそうたる俳優陣で実現させた。

 

アガサ・クリスティーみたいな…ねえ。」中学生時代。ご多分に漏れず当方もクリスティーにハマった。「クリスマスにはクリスティーを読もう!」とは言えあまり安楽椅子探偵モノは好きではなくて…結局『そして誰もいなくなった』が一番印象に残っている。

 

大富豪のミステリー作家ハーランの突然の死。そこに居合わせた一族。けれどそれは偶然では無い。何故なら前の晩にこの館でハーランが主役の家族の宴が催されていたから。

ハーランの子供達とその伴侶、孫達。母親!そしてハーランの専属看護師。使用人。

そこに居たのは、誰も彼もが癖のある人物ばかり。各々の分野で成功しているはずの一族は「自殺したんだろう」とハーランの死については深追いせず。寧ろ遺産分配を気にしている。

「彼は自殺ではありませんよ。何故なら私の所に匿名の捜査依頼が来ましたから。」

地元警察の警部補と巡査を引き連れて、世間でも有名な私立探偵ブノワの登場。

関係者達にイチから話を聞いた後、ブノワは看護師マルタに目を付ける。

「嘘をつくと吐いてしまう」という特殊体質を持つマルタをワトソン役に抜擢し、スロンビー一族の闇に迫っていくが。

 

グダグダと同じような下りを説明するのもアレなんで…ばっさりと一言で感想を言ってしまうと「なんやこれ」と思っている当方。

確かに中学生位に読んだ、良質とされた古いミステリー感はあった。けれど。ちょっと現代でやるには粗が目立ち過ぎる。

 

勿論、どんな作品にも良い所はあるし、好きだと言う人がいるのは承知。だからもう…「この偏屈が!」と思って下さい。そして詫びるついでに開き直ってもう一つ。「今回、結構ネタバレします。」

 

当方が納得いかなかった所。上げればきりがないけれど。「時代設定はどうなっている」「医療監修が皆無過ぎる」「嘘をついたら吐くというマルタの職業倫理感はどうなっているんだ」

 

そもそもこの話、現代なんですよね?

少なくとも登場人物達がスマートフォンを駆使する程には。の割には科学捜査が行使されていなさ過ぎる。

「それこそ時代設定をクリスティー位まで昔に持っていったら良かったのに。」

 

ひと癖もふた癖もある一族の、ゴシップだらけの人物紹介タイム。さあこの中の誰がハーランを殺したのか?誰が犯人でもおかしくない。そう序盤で匂わせたのに、割と早い段階で真実はひょんな場所に着地してしまう。

 

はっきり言ってしまうと、ハーランの専属看護師マルタが行った医療行為が大きな鍵となる訳ですが。

 

「マルタは確か、組織には属さない個人訪問看護師なんですよね。ところでそれってどういう事ですか?」

沢山の患者を受け持たずに、イチ患者の専属看護師になる。それは分かる。そこではなくて。マルタはどこからその薬が入った鞄を入手しているのか。

アメリカの法律は知りませんが。あくまでも薬を処方出来るのは医者であって。薬剤師を介してそれを入手し、実際に患者に投与しているんですよね?

85歳にもなれば色々体にガタも来るから、確かに沢山薬は要るやろう。けれど…マルタがハーランに投与した例の薬がどうしても納得出来ない。

 

「だってそれ…!」

どういう扱いしてんだ。そして何て言い方して何て投与の仕方してんだ。大昔のヒロポン扱いか!そんなサイズ無い。そしてその薬は必ず余った分ごと返却しないと法に触れるんだよ!…ずさん過ぎる。何もかもあり得ない。そして人体がそんなに時間通りに反応する訳が無い。ましてや85歳。

えええ〜。心の中で大声上げすぎて、そこからのマルタのパニック状態からの切り替えの早さにも全然ついて行けなかった当方。

 

「嘘をついたら吐いてしまう」「マルタは良い娘」「不法移民の母親と妹と。女ばかりの貧しい生活」

嘘をついたら吐く…確かにマルタは嘘を口に出してしまうと吐いてしまう。でも、口に出さなければ普通にしていられる。

「それって随分な屁理屈じゃないか?」先述した内容から、マルタに俄然厳しい当方。

 

「だって。医療事故の可能性を胸に収めておけるって。それは自身の職業倫理に嘘をついているとは言えないのか?」

 

そして何故マルタが所属しているはずの派遣先、つまりは医療機関が何も言ってこない。

 

華麗なる一族の泥沼劇場で良かったのに。マルタの存在と行動の不可解さに偏屈な当方のアンテナが過剰反応。全く集中出来ず。

 

初めこそ気取っていた、金持ち一族の足元が掬われる。ハーランの遺言書開封の儀。

「まさかの遺産が手に入らない。マルタに全部持っていかれた!」

化けの皮剥がされた後の彼らのオタオタっぷりなんて。予定調和過ぎて笑みまで溢れた当方。

「遺産を貰おうとして取り入ってたんでしょう!」そりゃあそう言うよ。だってマルタはただ年寄の孤独を埋めていただけやから。当方だってハーランの気がしれない。

 

ハーランの遺体から分析されたサンプル?分析されんの遅すぎ。そして管理体制がアナログ過ぎる。

まさかのあの人が良い人?やっぱり悪い人?…その手のひら返しっぷりも想定内過ぎる。手口も小賢しい。

 

「あの。良い所無いんですか?」

あるある。キャストが豪華だし、美術も衣装も綺麗。つまりは見ていて目の保養になる。あんなにはっちゃけたダニエル・クレイグも貴重だった。

そして最後の小物オチは見事に決まっていた。

 

「ただなあ…そもそも…。」全然すっきりしない当方が目にした、先日執り行われた『第92回アカデミー賞授賞式』の脚本賞ノミネーション。これこそミステリー。

 

散々文句を言ってしまってアレですが。ライアン・ジョンソン監督の好きな世界観は分かった様な気がしましたので。

シリーズ化をするならば、出来ればその専門分野の監修を…そして当方はもうマルタは結構です。