ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!」

「ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!」観ました。
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「北欧メタルバンド?」「そもそも音楽に精通していない、ましてやヘビメタなんて…。」

年明けから公開開始。何だかマニアックなヤツやってんなあ~。でもこれ当方には分からんやろうなあ~。ロックもメタルも全然知らんしなあ~。でも何だか凄く評判が良いなあ~。楽しそう…。段々気になってきたなあ~。ええい!やらん後悔よりやる後悔!

 

結論から言うと「メタル全然知らなくても十分に楽しめた!」「何やねんこいつら…好き!」当方お決まりのフレーズ、『全身の力を抜いて楽しめる作品』。

 

フィンランド北部の田舎町。25歳の主人公トゥロがボーカルを務める、4人組のヘヴィ・メタルバンド。メンバーは同級生で結成から12年。各自メタルへの愛に溢れており、当然ロン毛、ロックスタイル。そして日々の練習を怠らない。けれど…。

12年間。練習に練習を重ねたけれど、一回もライブを開いたことが無い。オリジナル曲も持っていない。

「なあ。俺たちもそろそろオリジナル曲で勝負しようぜ!」

遂に誕生した自信作。しかもそのタイミングでノルウェーの巨大メタルフェス参加のチャンスが舞い込んだ。

バンド名も『インぺイルド・レクタム=直腸陥没』に決定。

「おらが村から有名人が(そんな言い方していません)!」フェス参加を聞きつけて盛り上がる地元民。そして満を持して人前で演奏する機会を得たが。

 

「これ。チラシに情報書きすぎやろ(小声)…。」

映画感想文を書くにあたって、劇場予告チラシは何かと役に立つので大抵一枚入手するのですが。このチラシはちょっと…書きすぎている。当方は事前に読まなかったのでアレでしたが。まあ、語り出したら思わず勢い余ってしまうんですかね。分かりますよ。

 

兎に角。バンドメンバー全員が、好きにならざるを得ない、愛すべきキャラクターで。

主人公でボーカルのトゥロ。普段は精神科施設の介護職員。見た目とは裏腹に内気であがり症。花屋で働く幼馴染に片思い中。

ギターのロットヴォネン。実家のトナカイ解体業を手伝う。因みにバンドの練習場所はロットヴォネン宅の地下室。

ベースのパシ。図書館勤務。世界中のメタルに精通しており、ワンフレーズだけでどのバンドの楽曲か分かる。

ドラムのユンキ。豊満な体で過去に2回死を宣告されたが蘇ってきた。陽気な性格で、バンドのムードメーカー的存在。

メンバー皆(ユンキは…無職?)普段はどちらかと言えば地味な仕事をしていて。けれどよく見たら全然地味じゃない。長い髪を結わえないし、作業中の音楽は勿論ロック。髪型故に地元民から「おいホモ野郎!」「女の子かあ~。」なんて馬鹿にされていましたが。(「何をどう見たら、こんないかついアンちゃん達にそんなヤジ飛ばせるんだ。どちらかと言えば怖いわ。」当方ならばこういう出で立ちの彼らにはビビッてしまう。)

彼らの人となりを知っている者からは愛され。けれど大体の地元民からは浮いた存在だった彼らが、一躍有名人に躍り出た。

 

「まあ。そうなるのも分からんでもない。ないけれど…トゥロ。あんたの胃、どうなってんだ。」

初めて人前でパフォーマンスをする。遂に12年の練習の成果を見せる時が来た!なのにあがり症のトゥロの失態で散々な結果に。しかもメタルフェス参加も危うくなってきた。途端に手のひらを反す地元民。

 

「でも。そういう危機的状況でも、誰もメタルへの愛は捨てなかったじゃないか…。」

そもそも何故彼らは12年も練習だけに留まったんでしょうね?そう思わざるを得ない当方。だって。強引なまでの行動力を持つユンキと、冷静沈着キャラを匂わせていたのに突如コープス・ペイント(白黒メイク)を施したデスメタルへ変貌。名前もクシュトラックスに改名したパシ。(この下りは当方の心のやらかい所をギュンギュンに締め付けた。パシ最高過ぎる!)そんな熱いメンバーが居るんやから、本来ならもっと早くに世に出ただろうに!

 

ユンキの前向きな行動と悲しい結末。一旦はバンド消滅の危機まで陥ったけれど。

「行け!招かれていなくても行け!ノルウェーのロックフェスへ!」

そこで何故かポスターに書かれている「後悔するならクソを漏らせ!」が脳内に続くんですが。便秘をするくらいならって…溜め込む位なら撒き散らせって暗喩ですが…できれば然るべき所でしたいですよね。トイレとか。

またねえ。一人でグダグダしていたトゥロの背中を押した、インぺイルド・レクタム唯一の宣材写真。それが奇跡の一枚で。当方満面の笑み。こんなの見せられたら…そりゃあ走り出すわ。

 

兎に角この作品は「悪い人はいません」という世界なんで。(トゥロの恋のライバルはちょっとアレですけれど)トゥロが想いを寄せる同級生の父親なんかも、職業柄もあってかやたら突っかかってくるのに。最終的にはちゃんとその職業を生かした上で胸を熱くさせてくる。

そして、フィンランドノルウェー国境警備隊の面々とその攻防には思わず声を出して笑ってしまった当方。(ところで。40代女子は何故悪魔が好きなんですか?)

 

『苦しい事もあるだろさ 悲しい事もあるだろさ。だけど僕らはくじけない 泣くのは嫌だ笑っちゃおう 進め~/NHK人形劇 ひょっこりひょうたん島

言うならばこの精神。落ち込む事があっても、これはダメだと思っても、結局俺たちにはメタルがある!という前向き感。これは安心して全身の力を抜いて観ていられる。

 

最後に。当方は本当にロック…ましてやメタル系バンドには全く知識が無いので…完全に感じたままなんですが(歯切れの悪い言い小声)。

「彼ら。上手かったですね。」

うるせえ!とか、ましてや下品だなんて思わなかった。正直メッセージ性は分からなかったけれど。何故か笑顔になりながらも、ちょっと泣きそうになってしまった当方。

 

「いいもん観たなあ~。」全然メタルに詳しく無くても大丈夫。(でも知ってる方がそりゃあ絶対面白い)音楽の力ってホンマに…。思い出すだけで胸が熱いです。