ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「スペシャル アクターズ」

スペシャル アクターズ」観ました。
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カメラを止めるな!』去年社会現象まで巻き起こした映画作品。上田慎一郎監督の劇場長編第二弾長編映画作品。『スペシャル アクターズ』。

 

売れない役者、和人。警備会社で働きながら細々と役者活動を続けていた。

ある夜、数年ぶりに再会した弟宏紀に誘われ、『スペシャルアクターズ』という俳優事務所に入る事になった和人。そこでは映画やドラマなどの仕事以外に、「依頼者に応じて演技をする事によって日常生活で困っている事を解決する」何でも屋を営んでいた。

事務所に所属する変わった面々と、おかしな仕事に駆り出される日々。

ある日、事務所に女子高生が訪れる。「両親が亡くなって姉が引き継いだ旅館がおかしなカルト教団に乗っ取られそうになっている。助けてほしい。」

明らかにヤバい。うさん臭さがプンプンするカルト教団『ムスビル』。彼らを倒すべく立ち上がった『スペシャルアクターズ』たち。その中心に据えられてしまった和人の秘密。それは…。

 

「緊張し過ぎると気絶してしまう体質。」

今作の主人公、和人。ただでさえぬぼ~っとした出で立ち(また独特な風貌の役者を見つけたものよ!)。おどおどとした話し方。役者志望…?って何故?と思ってしまうけれど。どうやら彼は幼いころに繰り返し見た、超能力ヒーロー特撮ドラマを忘れられなくて、役者の道を諦められないらしい。

またもやオーディションで落とされた。しかも働いていた警備会社からもクビを言い渡された。住んでいるアパートの大家からは家賃の滞納を問い詰められる。崖っぷち状態の和人の前に現れた、もう何年も連絡を取っていなかった弟、宏紀。そして誘われた俳優事務所。

映画やドラマやCM、エキストラ。そんな普通の仕事の他。「葬式で泣く女」「飲食店でのトラブルに店側はどう対応するのかをテストするべく、クレーマー」等々。演技をする事で依頼に答える便利屋も兼ねていた。

(同じ内容を繰り返して書いてしまった…。)

 

崖っぷち俳優が背水の陣で飛び込んだ俳優事務所。そこで見つけた自分の居場所。と思いきや。息つく間もなく大きな敵(カルト教団)と立ち向かう事になってしまう。逃げ出したい、立ち向かうにしても何とかモブ的なポジションに留まりたい。なのに。

控えめにしているはずなのに。何故がぐいぐい表面に押し出されてしまう。駄目駄目。俺は緊張が高まったら気絶してしまうんだ…。

 

おかしすぎて笑えてくる。こんなうさん臭い集団に一体何を求めているのか。そう言いたくなるカルト教団『ムスビル』。

傀儡の教祖。明らかに詐欺師っぽい教団トップ。軽~い広報。けれどこういう自信満々な輩が、疲れ切った人々の気持ちに寄り添ったら…まあ、現実にも「何それ」みたいなモンにお金を出す人っているからな…。

(余談ですが。平日昼間のカフェで時々見かける「おい。それネズミ講ってやつやぞ!」っていうグループ、何なんでしようね?あまりにもベタな会話故に「もしかして役者とかが当方をおちょくる為に演じている茶番か?」なんて疑ってしまうくらい。)

 

スペシャルアクターズ(=以降スペアク)』VS『ムスビル』。依頼者の実家である旅館を守るべく、「台本」「配役」「演技指導」の後、教団に潜入する和人と宏紀。そして数名のスペアクメンバー。

まずは信者になってから。内部から切り崩していく部分を探していく。

 

カメラを止めるな!』昨年公開され、最早社会現象まで起こした作品。無名俳優ばかりを起用。そもそも上田慎一郎監督自体がほぼ無名。低予算。明らかにチープなのに。そんな事どうだっていい。不安を感じた前半部分から怒涛の巻き返し。「昼間のパパ〜はちょっと違う」恰好悪くたっていい。誰も見ていない?関係ない。「今ここに居る皆で、限られた時間とアイテムと知恵と経験でベストのモノを作るんだ!」そういう叫びが観ている側の心に突き刺さった作品。当方もご多忙に漏れず、這う這うの体で映画館を後にしましたが。

 

「はっきり言うと…二匹目のドジョウはいなかった。」

 

無名俳優ばかりを起用。ほぼ当て書きだというのも頷ける、生き生きとしたキャラクター陣。上田慎一郎監督は本当に役者を魅せるのが上手い。

今回も。話が進むにつれ、「役者の。演技の持つ力は無限だ!」という叫びは大いに受け取った気がしたし、小さな伏線も漏れなく拾っていくカタルシスもあった。けれど。

「…この歯切れの悪い言い方をするのは…正直オチが気にくわなかったから。」

流石に書きませんが。「ああ。これで良かった。」という大団円からのあの展開。何というか…「そこまでひっくり返さないとあかんもん?やり過ぎやろ。」う~ん。

 

前作の『カメラを止めるな!』。当時類似作品がどうこう言われていましたが。当方が感じたのは「初期の三谷幸喜作品っぽい。というかこれ、『ラジヲの時間』だ」。

限られた時間で関わる人たちが全力を尽くす。そこにまつわる悲喜こもごも。そしてドタバタ感。内容では無くて。その雰囲気が似通っていた。

 

今回も同じ雰囲気。主人公は冴えないポンコツで。周囲を固めているのは奇人変人たち。けれど立ち向かう相手だって完璧な悪ではない。

互いの持ち味を生かして闘い、そして無事旅館と経営する家族を守る。主人公をヒーローに押し上げる。あくまでも主人公は和人で。勿論和人自身も己を変えるべく奮い立たせるけれど。そんな和人を支え、盛り上げる周囲の姿がまた熱い。

 

という構図なのは理解しているけれど。いかんせん、既視感が…。1990年代~2000年代。三谷幸喜宮藤官九郎を初めとする、舞台出身劇作家が書いてきたドラマ、映画。深夜ドラマ枠。『ケイゾク』『トリック』など。まだテレビ一辺倒だった時のバラエティー番組。その他サブカルと呼ばれたマニアック作品なんかを散々吸収した当方の脳にある引き出しが。話が進むにつれて「こういう展開で進みますか?」「こういう笑いに持ち込みますか?」と自然にアンサーを出してしまう。そしておおむね正解する。奇想天外な展開にならない。

 

「うん。まあよかったよかった。そうなるわなあ~。」と勝手にほっとしていたら。「それはやり過ぎ。」という、お調子者が滑った感じが否めなかったラスト。

 

あまりにも高評価過ぎた前作。そこから一体どういう作品を作るべきなのか。勿論前作は越えなければならない。そのプレッシャー。一体何様だという視点で恐縮ですが。その重圧は計り知れなかっただろうと思う当方。その苦しみみたいなものが溢れだしていた感じがしたし…観る側も正直『カメラを止めるな!』に囚われてしまって、この作品そのものを切り離して素直に観られなかった。

 

なので。この作品についての純粋な感想が未だピンと来ていない当方。和人に対する宏紀の兄弟愛。役者たちが盛り上げる世界観。そしてマクロがミクロに集約されるラスト…(それについてはやっぱり解せない)。ただ、とにかく疾走感が凄い。

 

今後も、上田慎一郎監督にはどんどん新作を出して欲しいと思う当方。どこか既視感を感じる時があっても、やはり彼の持つパワーは目新しくて熱くてワクワクする。そうしていくつも作品が出揃った時に、落ち着いて「この作品は…。」と整理出来る気がする。次回作に期待。(何様だ。)