ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ 」

「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」観ました。
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主人公のケイラ。中学生活も後一週間で終わり。

同級生の間で行われた人気投票で「学年で最も無口な子」という賞に選ばれた。見た目も地味だし、から回ってばかりで人とうまく付き合えない。

何とか自分を変えたくてYouTubeSNSで自分を発信。けれどそこでも仲間は見つからず。

かつては友達だったケネディはイケイケで今やすっかり人気者。ケイラには見向きもしない。憧れの男子エイデンにもどうアプローチすればいいのか分からない。

一々絡んでくるパパはうっとうしいし、これから始まる高校生活も不安。

イケてない自分が憂鬱で。周りの皆はキラキラしているのに…でもどうにか変われるんじゃないかとジタバタもがく十代の少女。

 

そんな「うわああ知ってる!それ知ってるで!」。刺さり過ぎて心から血が噴き出してくる青春映画。

 

中高生。クラスの中に存在したヒエラルキー制度。

おしゃれだのカッコいいだの。何をやらせても様になる。そして彼らは総じて早熟で冷めていて。(時には無意識に)同い年の同級生を下に見ている。そんなトップは一握り。

以降、秀才等の「決して他人とつるまないけれどその事をアレコレ言われない奴」という面倒故に突っ込み不在な真面目人間や、いわゆる「モブ」という中間層が続く。

主人公ケイラは「モブ」かその下にいる「存在すら認知されない霊」か「奇人変人」の最下層に属している。そうカテゴリー付けした当方。

(学年投票。専門学校の卒業の際、当方は『奇人変人』という賞を貰いました。)

 

割り切って最下層を楽しむなんて、よっぽど達観していない限り中学生では無理。ましてやケイラは女子。私だって可愛くありたい。

 

この作品が新しいなと思ったのは「YouTubeSNSなどは中学生の身近にあるんだな~」という事。

ツイッターやインスタグラムで、気の利いた言葉やおしゃれな画像を上げる。自分の容姿に自信が無くても、画像はいくらでも加工できる。兎に角可愛く。輝いている私は毎日が充実している。

YouTubeで番組を持ち、どこかで聞いた事のあるような格言を語る。「ハーイ。ケイラよ。今日は~についてお話しようと思うの」そして〆は「じゃあまた。チャンネル登録よろしくね。グッチ~!」

 

「げに恐ろしき虚構。こんなの疲れて心がおかしくなってまうぞ。」

嘘。大げさ。紛らわしい。JYAROに通報されるレベル。

 

「気持ちいい気持ちいいって言ってたら気持ちよくなってくるよ。」どこぞのエロい何かみたいな言い回しですが。そうやって充実しているティーンエージャーを演出していれば、いつの間にか中身が伴ってくるんじゃないか。けれどそうは問屋が卸さない。

 

「だってケイラ。明らかに努力が足りんもん。」彼女が憧れるキラキラ女子。そこに己を持っていくには…体型もずんぐりむっくり。肌も荒れている。

「容姿をアレコレ言うんじゃない!成長期なんやし!」という非難には即座に謝りますが。「だとしてもプールパーティでのケイラの水着姿よ。あんなけろっぴ色のスクール水着を着たらあかん。そしてケイラ全体的に私服がダサい。」センスが皆無。

 

もうすぐ始まる高校生活。上手くやっていけるのか不安。一足先に行われた体験入学。そこでペアを組んだ在校生の先輩オリヴィアはまるで本当のお姉さんみたい。

そんなに年は変わらないのに。高校生って自由だし大人っぽい。サバサバしたオリヴィアに懐くケイラ。

「ねえ。これからショッピングモールで会わない?」電話越しにそう誘われて。舞い上がってショッピングモールに行ったけれど。そこで待っていたのはオリヴィアだけじゃなかった。

高校生の男女が仲間内にしか分からない話で盛り上がる。ちょっと話を振られたと思ったら、答えにくいような際どい話題だったり。気おくれして。挙句終いには危ない目にあいそうになって。(本当にあのシチュエーション…危なすぎるし、最悪。)残念すぎる。

 

片思い中のエイデン。イケてる男子。どうやったらエイデンに意識してもらえる?

どうやら最近彼女と別れたらしい。今がチャンス?そう思って精いっぱいのアプローチをしたけれど。「ねえ。口で出来る?」(完全におちょくられているな…)エイデンの言葉の意味が分からずとっさに見栄を張って。帰宅後ネットで調べて衝撃を受けるケイラ。

 

「ああもう。何やってんだケイラ。」

嫌いなバナナ相手にナニ練習しようとしているんだ。もう全方位痛々しすぎて…共感性羞恥が激しく心に刺さって失血死しそうな当方。けれど。

 

じたばたもがいているケイラよりも。もっと当方の心に沁みた人物、ケイラの父親マーク。

父と娘の二人家族。思春期の娘は最近全然心を開いてくれなくて。

一緒に過ごす夕食の時間。なのに娘はずっとイヤホンで音楽を聴きながらスマホをいじり。会話なんて成り立たない。他の時間も、部屋に閉じこもってネットばかり見ている。

友達の存在も感じられない。ただでさえ不器用な娘なのに…大丈夫なんだろうか?

 

当方は誰の親でもありませんが。年齢的に父親マークの方が近い(そりゃあケイラよりは)のもあって。マークの気持ちが分かり過ぎるくらいに分かる。

「ケイラが不器用なのは父親譲りなんよな…。」

思春期の娘に邪険にされ。心配だからと声を掛ければ怒鳴られ。けれど同級生の自宅パーティにもショッピングモールにもマークがケイラを車で送っていった(過保護)。

一体どこのどいつと会っているのかとこっそり付けて、娘に見つかったり。

「兎に角ケイラが可愛いし、心配なんよな。」(涙声)

 

かつて奇人変人枠に居た当方だからケイラに言える。それは「自分自身を認めてあげてくれ。」ということ。

無理して自分じゃない誰かを演出しなくていい。真似をしなくてもいい。

誰かと比べるから自分の価値が分からなくなる。

 

最後の焚火のシーン。父と娘のやり取りを見ていて。

見た目がぱっとしないとか。流行に乗っていないとか。どこかどんくさいとか。そういう自分自身に苛々してしまうけれど。ケイラの最大の強みは「大切に育てられた」という点じゃないか。

 

誕生日のホームパーティに招かれて。嫌々でも参加すればプレゼントやお礼の手紙も準備する。好きな相手に選ばれたくて見栄を張る。最悪な相手に押し流されそうになってもちゃんと断る。適当な対応はしない。大切に育てられたケイラは、人間関係に於いて不器用で上手く行かない事もあるけれど。一体真面目の何が悪い。

今のケイラのままで愛してくれる人が居る。味方が居る。だから大丈夫。そこからゆっくり変わりたい自分を目指せばいい。

「父親は偉大だよ…。」

 

卒業式でのケイラの言葉にすっきりした当方。

 

「ところで。こいいう拗らせ思春期モノあるある。よく見れば同じステータスに同様の仲間(異性)が居て、どうやらこいつとは今後ラブ的な展開が見込まれる…っていう匂わせ!現実では無いから!」

 

急にいきり立って騒ぎ始める当方。「ロンリーはロンリーのままだ!」

 

高校に進学しても。一足飛びに状況が変わる訳では無いと思いますが。けれど長い目で見たらいつか笑える時がくる。一生懸命だったなと愛おしく思える時がくる。

 

その時までお別れケイラ。「グッチ~!」。