ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「感染家族」

「感染家族」観ました。
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韓国発、ゾンビ映画

甘々のラブ、最早人間技ではないアクション、ノワール、エトセトラ、エトセトラ…そして昨今目立ってきた社会風刺モノ。兎に角全方位振り切ったテンションでお届けする(あくまでも当方の主観)韓国映画作品群。

今回はとあるゾンビと家族を通じて描かれた、パニック・エンターテイメント作品。

 

最早限界集落と言っても過言ではない田舎町。そこで細々とガソリンスタンドを営むパク家。

父親のマンドク。もうすぐ第一子が生まれる長男ジュンゴルとその妻ナムジュ夫婦。末妹ヘゴルの四人暮らし。

都会の製薬会社で働いていた次男ミンゴルも解雇通告を受け。実家に転がり込んできた。

 

ちょうどその頃。町に突然現れたゾンビ。ふらふらとおぼつかない足取りで歩くその姿は若い浮浪者。子供たちに笑われ、犬に追いかけられ。大人たちはアレはなんだと首を傾げ。

 

そんなゾンビにマンドクが噛まれた。「こいつはゾンビだ!親父は死ぬぞ!」ガソリンスタンドのガレージにゾンビを閉じ込め。一体いつマンドクがゾンビ化するかと震えていたけれど…マンドクは至って元気。それどころか若返ってしまった。

 

マンドクの変化に年寄り仲間は騒然。我も我もとガソリンスタンドに押し寄せる姿を目の当たりにして「ゾンビに噛まれたら若返る。これは金になるぞ!」と次男のミンゴルを筆頭に勢いづくパク一家。

噂が噂を呼んで。ガソリンスタンドでの『ゾンビビジネス』は大当たり。ゾンビにチョンビと名前も付けて。各々の役割分担も完璧な家族運営で大儲け、遂にはガソリンスタンドの改修も出来た。

 

ある日。若返りを果たした人たちに突如変化が始まる。

爆発的に発生したゾンビたちは人々を襲い、町を食い破っていき。突然のパンデミックに大都市も大混乱。

そして。パク一家の営むガソリンスタンドにもゾンビの大群が押し寄せる…。

 

「ああこれ。絶対面白いやつ。」

映画館で予告編を見て。そう思うのになかなか観に行くことが出来なかった。「これはもしかして見逃すんじゃ…。」ハラハラしたけれどなんとか上映終了には滑り込めた。『見逃し案件。』そういう危険性がありましたが(感想文を書いている現在、当方の通っている映画館では上映が終了しています)本当に観られて良かった、そう思った作品。

 

「兎に角全身の力を抜いて観られる作品でした。」

 

ん?そもそもの原因であったチョンビは一体どこから現れた?彼は元々は何者?皆どういうメカニズムで若返ってるの?

なんで時を同じくして一斉にゾンビ化するの?そこからの感染拡大…このドミノ倒しのスピードが速いのなんで?

そして妊娠中のナムジュ、一体何か月なの?一体どんだけの間産まれるカウントダウンのお腹してんの?

~なんて色々疑問は頭を過るのですが。それを深追いするのは無粋。

 

「ゾンビはどこから現れ。そしてどうなるのか。ゾンビ化した人間とその家族との哀愁。この怒りは一体どこに向ければいいのか。そして事態の解決策は!」なんて真面目な思考と展開は皆無。そういうのはどこかの餅屋に任せておけばよい。「俺たちはこのパニックをとことん楽しもうぜ。」そういうスタンス。

 

ジャンルは間違いなくコメディ。なのでサッパリと軽快で明るく。時々しんみりするところもあったけれど。泣くのは嫌だ笑っちゃおう。テンポよくサクサク進行する。

 

キャラクターが全員しっかり立っていたし、その掛け合いも軽妙で絶妙。

流されやすい長男ジュンゴルとお調子者で口八丁な次男のミンゴル。二人のわちゃわちゃ感。非常事態でも互いに責任と危険を擦り付け合い…けれど結局は逃げない。何だか愛おしくなってくる、パク兄弟。(あの。最後ゾンビの大群が襲ってきた時のガソリンスタンドでの車内での掛け合い、最高でした。)

長男嫁ナムジュ。気が強く金にがめつい。明らかに夫を尻に敷いているけれど…結局は夫を愛している。

「いかにもラブコメ韓国映画風」な胸キュン演出をあえて差し込んでいた、末妹ヘゴルとチョンビの甘酸っぱい日々。ニヤニヤする当方。

 

「結局主人公は死なない。」「どんな時も。どんな時も。」

世に在る大概の物語の原則と同じく。何だかんだ言ってこの家族は生き残るんだろうなと思って観ていたので。全身の力を抜いて鑑賞できた。

 

 

「あらら。ちょっと切なくなっちゃった。」

終盤。まさかの。甘くて酸っぱい着地をするのかと思ったら。早々に退散したと思っていた父マンドクの再来。そして大きく振りかぶって気持ちの良い所に着地。

 

「何だよ~。仕方ないなあ~懲りないなあ~この家族は。」

パニックエンターテイメント作品。そしてコメディ作品として間違いのない、パク一家の顛末。

終始全身の力を抜いて観ていて、気持ちよく幕が降りた。そして笑顔で映画館を後にした。

こういう軽快さ。時には必要です。