ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ロケットマン」

ロケットマン」観ました。
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エルトン・ジョンの半生をミュージカル映画化。主演はタロン・エガードン。」

 

近年、実在したミュージシャンを映画化する流れがあるなあ~と思う当方。

昨年大ヒットした、queenの『ボヘミアンラプソディー』。当方が思わずサントラとBlu-rayを購入した『ジャージボーイズ』。

(とっさに二つしか浮かばなかった…。)

 

洋楽に詳しくない当方でも流石に知っているエルトンの曲。ピアノを弾きながら伸びる歌声。一番好きなのはやはり『ユア・ソング』。

「中学生の時激ハマりしたAMラジオ番組があった。毎週日曜日夜22時からの二時間が楽しみで日付けが変わるのを指折り数えた。カセットテープに録音して、他の曜日に繰り返し聞いた。そんな大好きな番組が終わる…その最終回、最後の最後に流れたのが『ユア・ソング』。」

メインパーソナリティが、声を詰まらせながら語ったお別れのメッセージと相まって。未だに聞くと泣きそうになる曲。

「後、テレビドラマ『イグアナの娘』のエンディング曲だった。」(注:『イグアナの娘菅野美穂主演。母親(川島なお美)には高校の娘(菅野美穂)がイグアナにしか見えなくて…という奇怪な設定の伝説のドラマ。因みに父親は草苅正雄。)

完全に話がずれましたが。

流石の当方ですら少しは知っているエルトンの曲。でもそれよりインパクトがあるのがエルトン・ジョンその人。

 

「小柄でもう結構な年やのに、奇抜な格好でパフォーマンスするエンターテイナー。」「何か色々とお騒がせだった。」「確か同性婚された。」そういう認識。

 

なので。漠然とエキセントリックな人物像を描いていたエルトンに対し、今作品を通して初めて「そういう事だったのか。」と改めて知った塩梅。

 

イギリス郊外に生まれたレジナルド・トワイト(後のエルトン・ジョン)。祖母・父親・母親との四人家族。

「というか。完全に『アダルトチルドレン案件』やん。」

 

アダルトチルドレン。「アルコール依存症の親を持ち云々」という文言もありましたが、ことレジナルド少年に於いては「機能不全の家族で愛情を充分に与えれられずに育った子供」の典型的な成れの果て。(専門家じゃないのでアレな言い方ですが…)

 

祖母は穏やかに 彼を愛してくれた。けれど。

悪い人ではないけれど…その枕詞が却って辛い、残念な両親。

子供にどう接していいのか分からず、言い回しが冷たく、我が子を抱きしめることが出来ない父親。自分の事で手一杯で厳しい言葉を浴びせてしまう母親。

ピアノの才能を見出され、国立音楽院に推薦入学した。なのに喜んでくれたのは祖母くらい。

両親のどちらからも愛されている実感が無く。しかも母親の不貞をきっかけに両親は離婚。(また両親共、再婚した家族とはきちんと関係を築けているという皮肉)

祖母と母親と再婚相手と暮らすけれど。満たされないまま大人になった。

そして彼はレジナルドの名を捨ててエルトン・ジョンになった。

 

「愛されたい」いつも根底には誰かに認められ、愛され、抱きしめられることを熱望している…けれど手に入らない。

 

次第に自覚していくセクシュアリティ。「僕はゲイだ。」 

 

小さな音楽事務所に入り。そこで出会った運命の相棒、作詞家バーニー。

大好きな音楽の話で盛り上がり意気投合。互いの才能の隙間を埋めあい、高見を目指した。二人なら出来る、最高の音楽を作ることが出来る。そして生まれた名曲『ユア・ソング』。

「僕はゲイだ。」この感情は恋?バーニーへの想いは果たして友情以上のものなのか。けれど…決してそのラインを踏み越えなかったバーニー。

「お前はかけがいのない親友だ。」

(バーニーの態度って、異性愛者が同性愛者に求愛された場合の誠実な回答だと思いましたね。「俺は異性愛者でお前は恋愛対象にはならない。けれどお前とは違う意味でお前を大切に思っている。」つまりは「お前は性愛とは別次元に居る、大切な存在だ。」でもそれって…恋愛感情を持っている側からしたら終了のお知らせですけれど。)

曲が大ヒット。世界に進出していくエルトンの前に現れたプロデューサーとの恋。

刺激的でたまらなくて。刹那に求め、そしてボロボロに砕けて敗れさった恋。

 

今作品で思ったのが「結構時系列通りに展開するな」という点。

冒頭。「悪魔か!」みたいな出で立ちで登場したエルトン。一体彼は何処から現れ、そしてどこにやってきたのか。唐突に表れた奇怪な成人男性にあっけにとられる人々の前でこれまでの半生を語り始める…という演出で幕をあけていましたが。そこからは『レジナルド少年期』『若き音楽活動~バーニーとの出会い。才能が開花するまで』『プロデユーサーとの恋』『恋に破れ、自棄自暴になっていく様』『誰も俺を愛さない』と分かりやすく物語は紡がれていく。

 

まあ。ここ最近製作・公開されたミュージシャン伝記的映画作品群の中で圧倒的にこの作品が違う点。それは「エルトン・ジョンは今現在生きている」事と。「グループ活動ではないので、完全に個人を描いている。」つまりは『エルトン・ジョン劇場』。

(そしてこの作品の制作にエルトンが関わっているということも大きい)

 

「今でこそ穏やかで幸せに暮らしているけれど。ワタクシのこれまでの半生はこういう呈でございました。」

「知ってた?あの時俺変だったのはさあ。こういうことだったの。でも今は全然大丈夫!」

「酒って良くないよね。薬物も。ありとあらゆるものに依存していたけれど…もう今は一人じゃない。見て!ちゃんと自分の足で立ってるよ。」

 

そ、そうか。大変だったんですね。狂ったようにピアノを弾き語りしていた手を止めて。笑顔でじりじり近寄って。おもむろに肩を組んでくる感じに思わず恐縮する当方。見えざるエルトンの圧が強い。

 

そんな茶々はいいとして。やはり言い残してはいけないのが「タロン・エガードンのエンターテイナーとしての才能!」

キングスマン』シリーズでは私的にはどうしても周りのベテラン俳優の魅力に押されがちな印象がありましたが。

2016年公開の3Dアニメ『SING/シング』で窃盗団のボスの息子ジョニー(ゴリラ)を演じ、歌っていた時から思っていた。「タロン・エガードン、メッチャ歌上手いやん‼」

もうこの作品最大の見せ場。『歌って踊るタロン・エガードン』目が離せない。素晴らしい。

正直な事を言うと、物語の進行や見せ方にはあまり新しさは感じなかったけれど…とにかくタロン・エガードンを愛でる2時間1分といえば納得できる。そんな作品。

(多分当方は『ユア・ソング』をもっとしっかり聞きたかったという不満があったんやろうと後から分析)

 

ところで。今回この作品を観るにあたって、最近出来たばかりの『ドルビーシネマ』に行ったのですが。

作中の音質や画質もさることながら。何よりも本編上映前の『ようこそドルビーシネマへ!』というアナウンスと、映像・音響のサンプル予告編のテンションがいかにも「(今からまがまがしい事が起こる)近未来アトラクションへようこそ」感があって…その日一番萌えた瞬間でした。