ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「永遠に僕のもの」

「永遠に僕のもの」観ました。
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1972年。ブレノスアイリスで逮捕された20歳の青年がいた。

35件の犯罪。その内訳は殺人、強盗、性的暴行、誘拐など。ありとあらゆる犯罪を犯していたカルロス・エディアルド・ロブレド・プッチ。その姿は天使さながらの美形。

『ブラック・エンジェル』『死の天使』。そう呼ばれた彼をモデルに作られた今作品。

 

「まあ美しかったですね。」

ひとこと。それで終われせてもいい位ですが。

 

主人公カルリートスを演じたロレンソ・フェロ。近年こんなに華々しい映画デビューがあっただろうか。「南米のディカプリオ」なんて言われていましたけれど。(あの、レオ様とか言われていた頃の…あんなひょろっこい時より今のデカプーの方がよっぽどレオ様と呼ぶにふさわしいけれどな!余談ですが。)

 

少年のようなぽちゃっとした体つき。

物憂げな表情をするけれど、どこかあどけない。けれど可愛いと近寄ったら突然剛獰猛に襲い掛かってくる。なんの躊躇もなく罪を犯し、あっけらかんとしている。

 

作品では17歳という設定にしていましたが。この年齢位の者に時折見せられる、奇跡の美しさを体現。無垢な悪魔。

 

現実のカルロスは1972年に逮捕。終身刑を言い渡され、47年経った現在も服役中。そんな彼が今は一体どういう塩梅なのか。全く想像も尽きませんけれど。

 

「労働者階級の両親の元。慎ましく育てられた少年が何故シリアルキラーになったのか。」「一体彼の心中にはどういう思いがあったのか。」

確かにそんな話だとは期待していませんでしたが…想像以上のエモーショナル仕上げ。

 

カルリートス、17歳。(少年院から服役後)新しい学校で出会ったラモン。ラモンの持つ荒々しい魅力に惹かれ。そして意気投合する二人。

また、ラモンの一家が結構な犯罪家族で。薬中の父親をボスとして、カルリートス、ラモンの三人で組んで強盗稼業を始める。

これまでも息するように窃盗を繰り返していたカルリートス。といっても目に付くものを手に入れるだけで金品に執着は無く。盗品は誰かにプレゼントしてきた。

大胆な手口。並外れた行動力。ラモン親子は嬉々としてカルリートスを仲間として受け入れる。

彼らと組んで犯罪を重ねていくカルリートス。けれど心は満たされない。

何もかも手に入れられる。そのはずなのに…。

 

まあ。平たく言えばカルリートスが本当に欲しかったのはラモンだったと。

 

死の天使とも揶揄されたカルリートスを演じた甘々ビジュアルのロレンソ・フェロ。彼と対照的だった、ラモンことチノ・ダリン。

「バタ臭い…こんなに男男したビジュアルで17歳設定て。」(実年齢では30歳。ロレンソ・フェロとは10歳違い。)

 

実際のカルロスがどうだったのか分かりませんが。この作品ではカルリートスはすっかり恋する子猫ちゃん。周囲には荒ぶって威嚇するのに、ラモンには内心メロメロ。けれど。

「あのおカマ野郎が。」美術品を裁く為に利用している人物をバカにするラモン。異性愛者のラモンにとって同性愛者は気持ちが悪い。

ラモンの気持ちを知っているから。この想いは内に秘めるしかなかった。

 

「恋する女は綺麗さあ~」ラモンと一緒に居たい。そしてラモンも薄々カルリートスの気持ちには気づいている。美しい天使に惹かれる自分もいるけれど…。そして二人の関係の終焉。

 

どうなんでしょうねえ。

一体当方は何を期待してこの作品を観に行ったのか。「美しい少年が世界を手に入れられると錯覚し。気づけば独りぼっち。みじめに崩れ落ちていく様。」だったんですかね。そう思うとそういう内容ではあったのですが。

 

「多分。カルリートス役のロレンソ・フェロが全方位画になり過ぎた。」贅沢な話ですが…その画に身を任せ過ぎたんじゃないかと。上手く言える気がしませんが。

 

「どうしてこんな事になった?」

実在する事件を描く作品に於いて、どうしてもその事件の背景、きっかけを探そうとしてしまう当方。「何故こんな考え方をする?」「ああ。こういう負の連鎖が。」

『死の天使』は何故生まれたのか?そもそもラモンと出会う前から手癖が悪く、少年院に入ったりしていた経歴があったカルリートス。堅実な両親から何故?確かに裕福では無いけれど貧しそうでもなかった。平凡で幸せそうな家族なのに…何故?

ラモンへの恋心故に悪に堕ちた?そんな風には見えなかった。カルリートスが良心の呵責にさいなまれたシーンなんて無かったし。殺人だって。むしろ引き金を引くカルリートスの判断にラモンの方が驚いていたくらいで。

 

つまりは。当方には、どこまで行ってもカルリートスの人となりが見えてこなくて。行動の裏付けがイマイチよく分からん。

ラモンが好きなのも…ある意味「目に入った美しいものは手に入れたくなる」という衝動と同じように見えた。ただラモンはモノじゃなく意識を持った人間で、決して手に入らない。だからこそ深みに落ちてしまう。その姿はエモーショナルだけれど…カルリートスの人格を説明するまでには至らない。

 

「グダグダ言うなよ。全てを説明しないといけない訳ないやろう。考えるな!カルリートスを観て。そして感じろ!」

そのカルリートスがねえ。あまりにも画になり過ぎたんですよ。終始一枚絵みたいな画面を見過ぎてしまって…見惚れたんですが…結局中身が想像出来なかったですね。

 

美しすぎた死の天使。けれどその実態はふわふわしていて、結局夢のような存在。一体彼は何だったのか。

 

ただ。無音にしてオサレバー(狭くて薄暗い照明のカクテルばっかり出すお洒落なバー)で流れていたら完璧な、オサレバー(当方の造語)作品。

美しい少年が動く様を愛でるならばお腹一杯。胸一杯。

 

ところで。当方の一押しオサレバー作品も出揃った感があるのですが。そろそろ脳内でオサレバー開店となりそうな勢いです。