ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」

「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」観ました。
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フランス版ウォーターボーイズ(ボーイ⁉)。

おのおのの問題を抱え。ぱっとしない日常を送ってきた8人のおじさんたち。

地元公営プールが主催する『男子シンクロナイズド・スイミング』。そこで知り合った彼らに芽生えた友情、連帯感。ノリで申し込んだ世界選手権。フランス代表としての威信をかけて、幾多のトラブルに見舞われながらもトレーニングに励んだ日々。そしてその戦いの結果は。

スウェーデンに実在する男子シンクロナイズド・スイミングチームをモデルにした作品。

 

うつ病を患い、会社を退職。家で引きこもりがちの生活を送っていたベルトラン。妻は理解ある態度で接してくれるけれど。子供達からは軽蔑され、義姉夫婦からはちょいちょい嫌味を言われ。現状を打破したいと思っていたある日。地元公営プールで『男子シンクロナイズド・スイミング メンバー募集』の広告を目にする。

突き動かされるように向かった練習場所。そこでのアットフォームな雰囲気に惹かれ、即チームに入ったベルトラン。

怒りん坊。現実に向き合えない会社経営者。驚異の老け顔。夢追いミュージシャン等々。一人残らず濃いメンバー。

仕事・家庭・将来…社会でやっていくには皆何かしらの問題や悩みを抱えているけれど。シンクロチームでは力を抜いていられる。時々けんかもするけれど、概ね皆仲良し。ゆるゆるな練習をして。皆でサウナで汗を流して。その後飲みに行ったりして。

そんな仲良しおじさんたち。ノリで『男子シンクロ世界大会』に申し込んだけれど。

「自分たちのレベル分かってんのか!いい笑いものになるだけだぞ!」メンバーの一人がそう吠えた事から、大会の過去動画を確認する面々。けれど時すでに遅し。

まさかの『フランス代表』として参加する事になったボンクラチームの行く末は。

 

「ああ。やっぱり『ウォーターボーイズ』系のお話って面白いなあ~。」
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2001年公開。主演妻夫木聡矢口史靖監督作品。冴えない男子高校生たちが男子シンクロチームを立ち上げ、練習し、文化祭で披露する。もう…言わずと知れた2000年代青春映画の金字塔。以降テレビシリーズなんかも続きましたが。実際に映画館で鑑賞し、大いに沸き立った点でどうしても初代を押す当方。(蛇足ですが。当方的2000年代ベスト青春映画は『ピンポン』です)

 

国際水泳連盟は2014年に『男女ミックスデュエット』を新種目として導入する事を正式発表。2015年世界選手権が最初の実施大会となった。また2017年には『シンクロ・ナイズドスイミング』から『アーティスティックスイミング』に種目名を変更。(この感想文ではシンクロ・ナイズドスイミング。又はシンクロで表記させていただきます)

音楽に乗せて、技の完成度や表現力を競う競技はかつて『女性のもの』という印象があったけれど。

華やかでたおやか。女性が持つ、そういう柔らかさとはまた違う。力強くエネルギッシュな印象を持つ男子シンクロ。(当方比)

男達が一糸乱れぬアクロバティックな演技を披露すれば…それはそれで圧巻ではありますが。当方がこれまで目にしてきた男子シンクロというのは「ちょっとおふざけも入れる」「これまで女子シンクロで見てきたやつ、やってみました」というコミカルな要素も入っていた…気がする。

 

『THEシンクロ』と言わんばかりの技の数々。スケキヨポーズ(正式名称を知らないので…すみません。何しか、あの水面から足だけVの字に出すやつ)からの足技。リフト。ジャンプ。フォーメーションを組んで水面をぐるぐる回る。それらを音楽に合わせどこまで動きを合わせられるか。そこに柔らかさはないけれど…男子は兎に角パワフル。水面から飛び出す高さ。動きの力強さ。

 

「地元の趣味サークルから世界大会に出場するレベルまでって。それ…相当な練習を経て身も心もシュッとしたおじさんへ変貌やん。」ところがところが。全然。少なくとも見た目に関しては全く変わらない。

 

ポスターでも「⁈」と思わず二度見するレベル。気持ちいい位揃いも揃ってメタボ体型、一切のくびれもない彼ら。(監督からダイエット禁止令が出ていたらしい)地元プールで、演技とも呼べないお粗末な出し物をしていた時ならまだしも…例え短期間でも水泳の練習をしたら引き締まりそうなもんやのに。

 

「まあ。乗りかかった船やし。俺たち俺たちらしくやろうぜ。」世界大会にエントリーした後ものらりくらりしていたのに。

男子シンクロチームを指導していた女性コーチの不調~からのコーチ交代。「お前たちのやっている事は遊びだ!」鬼コーチのスパルタ指導に地獄を見るおじさんたち。

けれどそれがチームのターニングポイント。怒鳴られ、へとへとになるまで追い込まれ。けれど分かり合えば、チームとしての結束はより深まっていく。

 

『誰も悪い人などいない』という世界線。精神を病み無職。倒産寸前の会社社長。愛されたいのに…なかなか上手くいかない家族関係。夢を未だ追う事は恰好悪いのか。メンバー各々が抱える事情。それが一々世知辛くて…もがいている姿は無様ではあるけれど。一刀両断にはそう切り捨てられない。だって人間だもの。

シンクロパートとメンバーたちの事情。その配分が絶妙。そして鬱々とした展開は続かない。彼らが抱える問題は決してライトではないけれど、どこかで希望の光が見えてくるんじゃないかと思わせる。

 

『地元プールの趣味サークル。ボンクラメンバーが紆余曲折あって、そして迎えた世界大会』ここまでの流れは何処かしら既視感に満ち溢れていたけれど…気持ち良く観ていた当方。となると…ここからは文句が出てしまうのですが。

 

「世界大会の競技シーン。はしょりすぎ。もうちょっと具体的な演技が見たかったかなあ~。」

世界大会ともなると幾つものチームが存在して。それら全部に振り付けを付けたら大変な事になる。分かってはいるんですが。

「~国の選手登場!」→わ~(歓声)。→プールサイドで揃ってポーズ、又は何かの技を披露。→電光掲示板に表示される得点と順位。

その繰り返しはちょっと…結局どういうレベルの大会なのかが想像が付かない。

そして『フランス代表』の演技と順位。

 

「いやいやいや。確かに彼らがよく頑張ったっていうのは伝わるけれど…その結果はちょっと~。」苦笑いしてしまった当方。しかもドミノ倒しさながら。何故かおじさんたちの問題にも軒並解決の糸口が…。

 

「進研ゼミの漫画じゃあるまいし。そこまで全てが好転するのは流石にご都合主義じゃないのか。」

思わず突っ込んでしまう。そんな結末ではありましたが。

 

誰も悪い人などいない世界線で。冴えないボンクラおじさんたちが頑張って何かを成し遂げる。少なくとも、ウォーターボーイズ好きならば楽しめる。

明るい気持ちで観られる作品。万人受けするので安心して薦められそうです。