ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「COLD WAR あの歌、2つの心」

「COLD WAR あの歌、2つの心」観ました。
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冷戦下のポーランド。歌手志望のズーラとピアニストヴィクトル。

国営の音楽舞踏団のお抱えピアニストと養成所に入団希望として訪れた少女。

瞬く間に恋に落ちる二人。しかし、政府から監視されていたヴィクトルはとある公演の最中パリに亡命する。

数年後。パリで再会する二人。じきに同棲を始めるが、ある日突然ポーランドに帰ってしまったズーラ。後を追うが、ヴィクトルはポーランドを捨てた身で。

運命の二人が繰り返す、別れと再会の日々。激動の時代を生きた15年の歳月。忘れられなかった名曲『2つの心』。

 

という男女の機微を。当方の心に住む男女キャラクター『昭と和(あきらとかず)』に語ってもらいたいと思います。

 

和:いやあ、これ。上質なメロドラマでしたね!以上!

昭:早い早い。結論が早い。…お前…情緒とかどこにやった。

和:そんなもんは2世代前(昭和)に置いてきました。男女の機微?何それ食べられるやつ?

昭:団子じゃないよ。っていうかこんなしょうもない会話をするのも嫌やって。真面目にやってくれ。

和:だってさあ。正直な所、くっ付いたり離れたりを繰り返す、ど~うしても離れられない男女ってやつでしょう?しかも周りに迷惑かけまくる系の。

昭:オヨヨ~。ちょっと、今回だけのルール作っていいかな。会話が難しいと判断した時はオヨヨ~で代用させてくれ。

和:勿論時代背景ありきって事は分かってるよ。冷戦下のポーランドという窮屈な環境。音楽舞踏団で知り合った二人。所謂先生と生徒。

昭:とはいえ。別に現代のアイドルグループみたく恋愛禁止な訳じゃないし、そこは問題じゃない。オーディションで初めて見た時から、ズーラに一目ぼれ状態だったヴィクトル。彼女の入団を猛プッシュ。そしてあっという間に恋人同士の二人。

和:おおっぴらに付き合っている訳じゃないけれど。皆から隠れてキャッキャうふふといちゃつく二人…と見せかけて、実は政府にヴィクトルの素行を報告していたズーラ。

昭:結局真偽のほどはよく分からんかったけれど。ズーラには父親を刺したとかの容疑があって保護観察状態。だからスパイ行為を要請されても断る事が出来なかったと。

和:音楽舞踏団も、時代の流れの中で民族音楽やダンスだけではなく、次第に戦闘意欲が湧くような軍歌、政治家をたたえる歌なんかをしなくてはいけなくなった。最早政府のプロバガンダ。そこに不快感を露わにしていたヴィクトルは政府からマークされるようになってしまった。

昭:スパイ行為をしていたズーラに怒りも覚えたけれど。このままでは自分のやりたい音楽が出来ない。そう思ってポーランドを去る決心をしたヴィクトル。けれど、一緒に行こうと声を掛けたズーラは、結局一緒には来なかった。

 

和:ズーラがもう。ファムファタールっていうべきなんでしょうけれど…気が強くて我儘。黙って言いなりになんてならない。レア・セドウみたいなビジュアル…つまりは可愛い。それで今言ったような性格。しかも父親に傷害を起こすなどのミステリアスで危険な雰囲気もある。そしてエロい。

昭:そうだよ!こういう女性は無敵。男の心なんて野に咲く花のごとくむしり取られてしまうんだよ!男性無敵艦隊

和:オヨヨ~。男はホンマにあかんたれ。結局魔性の女に絡めとられてしまうんよな。

昭:そしてまた亡命先のパリで再会。

 

和:あれは…絶対ヴィクトルと再会する事を狙ってパリに行ったんやと思うけれど。

昭:そうやんな。そうとしか思えんかった。百歩譲ったとしても、結婚してパリに…ってなった時、ヴィクトルの存在が過ったはず。いつでも探しているよ。どっかに君の姿を。こんなとこにいるはずもないのに。

和:不貞もいい所やけれどな。だってズーラ結婚しているんやもん。やのに夫の存在感の無さ。

昭:ヴィクトルにも恋人が居たんやけれどな。でも結局二人の腐れ縁は断ち切れず。パリで共に暮らし始める。

和:二人のパートナーに対するサイドストーリーの無さ!バッサリ退場。これ、少女漫画やったら1作品出来るよ。

 

昭:まあ。この点に限らず。この作品って15年の月日を描いている割には88分という驚異の時間で仕上げているからさ。全く話に無駄が無いの。先述したポーランドの音楽舞踏団時代も、あっという間に二人は恋仲やし。このパリ編でもさっさと二人で新生活。でもこのシンプルで繋ぐ技法で進行するからこそ、間延びもしない。でも己の脳内引き出しで大体補てん出来るから、観ている側は不自由はしない。このテンポが絶妙。

和:後はやっぱり…ズーラの歌声。音楽舞踏団時代から何度も繰り返される『2つの心』という歌。それが皆で合唱していた時の民族調とパリに来た時のジャズテイスト。同じ曲が時を重ねるにつれて曲調も変わり。こちらの感じ方も違ってくる。面白い。

 

昭:新天地花の都パリで。二人でなら新しい音楽を作る事が出来る。そう思ってレコードも出したのに。結局その製作過程でギクシャクしたまま二人はまた決別。

和:ヴィクトルの元彼女が絡んでいる歌なんて気持ち良く歌えないわよ!そして私は当てつけで他の男と寝てやったわよ!…ってもう!メンヘラビッチもいいところやん!

昭:俺たちはそんなことでファムファタールを見捨てない。例え彼女が逃げ出したとしてもな!俺は追いかける!

和:それで亡命したはずの祖国に戻っちゃあ、そりゃあ捕まるわ。オヨヨ~。

 

昭:順を追ってネタバレするのもアレなんで…ふんわり風呂敷を畳んでいこうかな。

和:追いつ追われつ。片方が逃げれば片方が追う。どうしても諦められない。忘れられない人。確かに激動の時代ではあったけれど…正直、平和な時代であったとしてもこの二人はすったもんだ揉めながらもまた元の鞘に戻る男女。そんな気がしたな。

昭:まあまあ。でもそうやって離れていても、ずっと音楽は辞めなかったやん。同じ曲を、時を重ねながら変化させていく二人。己の置かれた環境は変化していくけれど、それでも忘れない。また寄り添っていく二人。

和:二人の巻き添えくった、一時的なパートナーたちからしたらいい迷惑なお騒がせ男女ではあるけれど。だって最後なんてさあ!

昭:オヨヨ~オヨヨ~!やめろ!二人が幸せに舞台から降りれたら良いの!…そしてどうやら最後に『両親に捧ぐ』とテロップを出した所を見るとパヴェウ・パヴリコフスキ監督のご両親に関係ありそうやし。そうなると何も言えないよ。

和:それな。まあ。兎に角終始上質なメロドラマやったなあと。以上かな。

 

離れてもまた引き寄せられる。そんな男女の運命。それを絶妙なセンスと構成でコンパクトに纏められた作品。モノクロ映像も相まって。非常にハイセンスで落ち着いた大人な雰囲気。そんあ上質なメロドラマを観た(言い方がアレですが。褒めているんですよ)。

出来ればお酒を舐めながら誰かと。そういう鑑賞をしたかった。観終わった後、一人で映画館を後にしている当方が辛い。そんな作品でした。オヨヨ~。