ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ハイ・ライフ」

「ハイ・ライフ」観ました。
f:id:watanabeseijin:20190509203139j:image

太陽系を超えた宇宙を進む宇宙船『7』。そこに集められた9人の男女。彼らは皆、死刑や終身刑の宣告を受けた囚人。

 

『"人間の性”にまつわる人体実験』。刑の免除を餌に。女医=ディブス医師の実験に参加した彼ら。しかし、宇宙という閉塞した空間とゴールの見えない日々。次第に彼らは精神の破たんを来していく。

 

フランスの巨匠、クレール・ドゥ二監督作品。

 

予告編が面白そうだったんですね。

「囚人たちの乗った宇宙船。俺たちは社会には不適合だったが、リサイクルされる事になった。」「宇宙で子を生す。」「私たちは地球の資源となる。」

「どうしてこんな事が出来るんだ!正気か!」「私は赤ちゃんなんて産まない!」「ここでは子供なんて育たない!」

終始不穏な画像と音楽。宇宙空間+宇宙船という完全な密室で行われる人体実験という名の人工授精。何故こんな場所で子供を宿し、そして誕生させるのか?そして何故被験者は囚人なのか?一体ここでは何が行われ…何を目的としているのか?

 

~という雰囲気。「これはぞくぞくしちゃうな~。」映画部部員の当方。「得意分野は変態映画部門です。」

『変態映画』。当方の造語ではありますが。これは決して『エロ・グロ』の事ではありません。(…そういうのも嫌いではありませんが。)万人には受けないかもしれないけれど、何だかマニアックな視点に拘りまくって、その作品にしかない異様な世界観を漂わせる…そういう作品が堪らなく好きなんですよ。

という期待を抱えて。映画館に向かったのですが。

 

「あああ。肩透かし食らった…。」

 

どんな作品にも「これは人生でベストの映画だ。」と思う人が居て。でも反面「う~ん…。」と首をかしげる人が居る。どちらに対しても、当方は否定も肯定もしない。何故なら感性というのは千差万別で、あれこれ言われる筋合いは無いから。

色んな受け止め方がある、それを否定してはいけない…って何をグダグダくだを巻いているのかというと、正直「思ってたんと違うかった。」からで。

 

閉鎖的な宇宙空間で行われる人体実験。そこには恋愛感情では繋がっていない、ただ男女という『合わせれば新しい命を誕生させることが出来る』個体が集められた。

男達から強制的に吐き出される精子。それを受精し、受胎する女達。しかし、この宇宙船では胎児が育たない。

一体ディブス医師の目的は何なのか。何故囚人たちが?そして宇宙空間という密室である事の意味は?

 

「地球自体が終末期なんですか?何らかの病原菌が蔓延しているとか?宇宙で新人類を増やし、地球に還元させるシステム?それが倫理観に反するから囚人を集めたって事ですか?で。資源ってどういう風に?…レプリカント?移植用臓器?それとも…食料として?」

一体どこの『ブレードランナー』や『わたしをはなさないで』だよと。ありきたりの発想だとお叱りを受けそうですが。どうしても『"人間の性”にまつわる人体実験』とやらの具体的な答えを欲してしまった当方。

 

これが…あんまり…詳細には語られなかった。

ネタバレすべきではない。そう思うので。今回はもうとっとと収束していくつもりなんですが。

 

「どうも全体的に…いくら何でも観ている側に丸投げ過ぎるやろう。という感じが否めなかった。結果、雰囲気オサレ映画になってしまった。そういう印象。」

歯切れの悪い当方。

 

主人公モンテと幼い娘。二人の宇宙船での生活を描きながら。『かつてここ(宇宙船)で起きた事』を回想していくスタイルのストーリー展開。集められた男女が次第に歪んでいく。朽ちていくさま。

 

「というかディブス医師。彼女のインパクトが強すぎる。そのせいで他の全てが霞んでしまった。囚人たちの背景もしかり。そもそもディブス医師の目的すら訳分からんし…。」

 

例の『ボックス』で延々見せられたディブス医師渾身のソロプレイ。あれ、何なんですか。「痛そう…。」でしか無かったし。一応ディブス医師の過去なんかもちらっと語られていましたが。こういう実験をする理由付けにはならん。結局当方には色情狂にしか見えず。

 

ところでこの宇宙船システムは何処が母体でやってる事業なんですか?宇宙船とか使っているという事はNASAが関わっているはずで。そういう巨大組織が本来やりたかった事が、便乗したディブス医師におかしな方向に乗っ取られた…風にも見えない。背景の思惑が分からない。囚人達が誰の何に振り回されているのか分からない。

 

「つまりは。舞台が宇宙空間である事の意味があったのかと。どこか全く分からない場所、で良いんじゃないんですか?ブラックホール云々の下りも結局よく分からんかったし…。一個人の狂った実験に付き合わされる男女なら、そういうコンパクトな空間の方がしっくりくるんじゃないかと。」

 

ただ。散々文句を言ってしまいましたが。これが終始トーンの抑えられた映像であった事と、不穏な音楽=派手な音は流れない環境でしたので。正直所々『睡魔』が襲ってきたことは否めない。つまりは「作中で語られていた事を当方が見落としている可能性」は大いにある。『お前!何観てたんだよ!』案件。ですが。

 

「ちょっと…思ってたんと違ったなあ~。観ている最中にあれ?これは?って突っ込み出したらもう世界観に嵌れない。酔えない…。」

 

ただ。映像の美しさは確か。そういう意味で、オサレなバーで流れていたら素敵なオサレ映画…当方はそう受け取りましたが。

癖が強いので、嵌る人にはとことん真逆の感想になるんだろう。そういう二極化が激しそうな作品だと思いました。