ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「スパイダーマン:スパイダーバース」

スパイダーマン:スパイダーバース」観ました。
f:id:watanabeseijin:20190313080416j:image

「OK。一度しか言わないから聞いて。俺の名前は…。」

 

2019年米アカデミー賞長編アニメ映画賞受賞作品で、尚且『スパイダーマンシリーズ初のアニメ作品』

 

アメリカ。ブルックリンに住むマイルス。地元から離れた全寮制の進学校に通う高校生。警察官の父親と看護師の母親を持ち。所謂優等生。

頭は良くても余所余所しい同級生達。実はマイルスはストリートグラフィティに夢中だけれど…その趣味を共有できる仲間は居らず。馴染めなくて。

父方の叔父、アーロンがマイルスの心の友。ある夜、二人は秘密の場所でグラフィティに興じ。そこで得体の知れない蜘蛛に刺されたアーロンは不思議な力を手に入れる。

驚く程の躍動感。手から出てくるベタベタした物体。何かに触れるとくっ付いて取れなくない。何これ。

一人秘密の場所に戻ったアーロンが見たもの。それはスパイダーマンの最後だった。

 

「13歳の少年。新しいスパイダーマンの誕生」

あれ?スパイダーマンって確か成人男性じゃ無かったっけ?そして見た目も全然違う。確かすらっとした白人の…少なくとも黒人のひょろっとした少年じゃない。

 

スパイダーマンが存在する世界が幾つも連なって。決して交わる事が無いはずの平行世界に横穴が空いた。その元凶となったのが、マイルスが住む世界だった。」

「秘密の場所のすぐ近くで。キングピン(悪者)が異次元の扉を開くため、加速器という装置を使って実験を行っていた。けれどその装置の負荷が掛かってブルックリンの一部の次元が歪み。各々の世界に居たはずのスパイダーマンがマイルスの世界に飛ばされてきた。」

 

「まさかのパラレルワールド案件!」

 

パラレルワールド:ある世界から分岐し、それに平行して存在する別の世界を指す。(中略)パラレルワールドとは我々の宇宙と同一の次元を持つ。(ウィキペディア先生より抜粋)

 

筒井康隆著『時をかける少女』。あの文庫本に同時収録されていた『果てしなき多元宇宙』。(余談ですが『悪夢の真相』も面白かったです)

当時中学生だった当方の、初めてのパラレルワールド作品。「本来交わるはずのない縦軸の世界。そこに横軸が掛かる事に依る、取返しの付かない悪夢。」…今現在該当小説が手元に無いのでうろ覚えのままですが。以降SFの中でもタイムリープ、リターンと並ぶメジャーでワクワクする題材。

 

13歳のマイルス。ある日突然おかしな力を手に入れてしまった。それが何なのか、答えをくれたのはピーター・ベーカー=スパイダーマン

「君は僕と同じだ。スパイダーマンになったんだ。」「戸惑うよね。でも大丈夫。僕がどうしたらいいか教えてあげる」「取りあえず、この場を切り抜けてから。」

 

先述の、加速器実験を行っていたキングピン。それを阻止すべく戦っていた。そんな有事の最中に出会ったマイルスとスパイダーマン

 

先導者が居る。ホッとしたのもつかの間。キングピンの前に敗れたスパーダ―マン。

 

スパイダーマンこと、ピーター・パーカー氏が死亡しました。」

悲壮な雰囲気で包まれるブルックリン。スパイダーマンの最後を思い。彼に託された加速器を阻止できるアイテムを握りしめ、一人佇むマイルス。

「僕には力がある。けれど…それを上手く使う事が出来ない。」

 

そんな時。異世界に住むピーター・パーカー(ピーターB/くたびれた中年)が現れた。

 

一応ネタバレはここまで。後はふんわりしていこうと思いますが。

 

「つまりは『スパイダーマン誕生物語』なんですな。」

 

不思議な力を手に入れた少年。とは言えいきなりその力を活用できるはずが無い。なのに。その力を得た事で突然訪れた理不尽な別れ。無力な自分。

「この力があれば、彼を救えたんじゃないか。」「こんな思いをしなくてよかったんじゃないか。」

また、13歳という『子供から大人へ』変化していく年頃。父親とのわだかまり。距離感。

どう考えても自分には合っていない学校での、気詰まりな日常。本当にしたいことはここには無い。学校を辞めたい。でも父親は「選択肢が広がるじゃないか」とマイルスの主張を聞き入れない。(選択肢云々に関して、つまらない大人になってしまった当方はこの父親の考え方が非常によく分かります。勉強が出来なかった当方からしたら、勉強が出来るのなら、色んな未来を選べる所に居たらいいじゃないかと。まあ…無理強いはしませんけれど)

自分に厳しい父親と、何でも話せて親友みたいな叔父のアーロン。

 

「でもねえ。自分にとって都合の良い人が必ずしも良い人とは限らんし。」ポツリと当方。

 

色んな考えを持つ人が居る。人は皆事情や背景を持つ。そんな中で自分が芯を持ち続けなければならない事は何処か。大切な人とは誰か。そしてそんな人を失った時、自分はどうするべきなのか。誰と諦めずに分かり合える努力をするべきなのか。

 

異世界から飛ばされてきたスパイダーマン達。彼らは『おかしな蜘蛛に刺されて後天的に不思議な力を得た』という共通点こそあれ、誰一人として同じ人物ではない。人種や性別、果ては動物までいたけれど…けれど彼らは皆『スパイダーマン』として同じような苦悩を通過してきた。

 

「分かるわ。私の場合は誰だれだった。」「救えない時はあるさ。」そうやって。マイルスに寄り添うスパイダーマン達。

 

~なんて。しんみりしたトーンで書いてしましましたが。

117分。冒頭から最後までノンストップの超特急。全編に於いてテンポが速い早い。しかもリズミカル。緩急の感覚も早いので、主人公マイルスは殆どもがいて苦しんでいるけれど、観ていて同調している暇など無い。

 

「そして異世界からやってきた、ピーター・パーカー(ピーターB)。最高。」

 

中年太り。スパイダーマンの全身スーツを着てはいるけれど、お腹は弛み、それを隠すため暫くは下だけスエットを着ていた。

なにもかもが上手くいかなくなった40代中年男性。もう感情移入しすぎて他人事には見えなかった当方。

「僕に何でも教えて!」食らい付いてくるマイルスを初めは適当にあしらっていたけれど。やっぱりそこは人情派、放っておけない。

他のスパイダーマンも良い味出していましたが。やはり彼との掛け合い、動くさまも観ていてワクワクして。スパイダーマンの中で一番好きなキャラクターでした。

 

絵面に関しては「確かにこれは斬新なアニメだ。」「CGアニメはここまで動くのか。」「何だこの映像は。」流石賞レースを制した作品だと舌を巻いた当方。(でも…何故か最終決戦の雰囲気に、今敏監督作品『パプリカ』を思い出していた当方。)

 

「でも。どれだけ新しい事をして、斬新な映像で見せても結局着地はシンプル。『新しいスパイダーマンの誕生。』ぶれていない。」

 

「OK。一度しか言わないから聞いて。俺の名前は…。」

 

MARVELの作品全てを観た訳ではありませんし、正直スパイダーマンシリーズもコンプリートしていない。けれど。

 

「これは。スパーダ―マンシリーズどころか。これまで観てきたMARVEL作品の中で一番好きなんちゃうやろうか。」

 

とんでもないアニメ作品が出てきました。