ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「チワワちゃん」

「チワワちゃん」観ました。
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東京湾から見つかった、バラバラ殺人事件の被害者『千脇良子20歳。看護学生』。それが私たちの知っている『チワワちゃん』の事だとは誰も気付かなかった。」

 

1996年に発売された、岡崎京子原作の同名漫画の映画化。二宮健監督作品。

 

ミュージッククラブで知り合った仲間達。突如現れた『チワワちゃん』。可愛くてキュート、人懐っこくて大胆なチワワちゃんはあっという間にグループの中心となる。一気に最高潮まで高まる仲間意識。けれど墜ちていくのもいくのもあっという間。

 

グループの一人、ミキ(門脇麦)。チワワちゃんの死後、ライターのユーコ(栗山千明)からチワワちゃんについての取材を受けたのもあって。「私は、皆はチワワちゃんの事をどこまで知っていて、どう思っていたんだろう。」と思い始める。

チワワちゃんの彼氏で、かつてミキも思いを寄せていたヨシダくん(成田凌)。チワワちゃんと一番仲が良かったユミちゃん(玉城ティナ)。カメラマンアシスタントでいつも皆を撮っていたナガイくん(村上虹郎)。グループを纏めていたカツオくん(寛一郎)。その他色んな人にもチワワちゃんの事を聞いて回ったけれど。

 

チワワちゃんと笑って。キスして。セックスして。恋して。憎んで。

 

チワワちゃんがその人に見せた断片は知っているけれど。チワワちゃんの名前や身分、どういう考え方の持ち主なのか。そういう全体像を知る人は誰も居なかった。

 

岡崎京子漫画は一部しか読んでいないし、正直この原作も未読やけれど…当方の中でこれまでの『岡崎京子漫画の映画化』で一番好きやと思う。」

「どうせオサレ映画なんやろうな~と思って観に行ったら。これがこれが。」

 

映画館で流れていた予告編。そして本編も。まるでミュージックPVみたいなオサレテンポと映像も多いんですが。追うべき本筋が浮ついていなくてしっかりしている。寧ろ「ひと夏しか持たない、儚いあいつら。コンビニの入り口の上部にある灯りに吸い寄せられてたむろって、そして力尽きたり熱に当たって死んでしまう羽虫」なんかも想像させて。はしゃいでいる彼らは幸せそうなのに、何だか切ない。そういう印象を受けた当方。

 

「まあ。当方はすっかり歳を取ったからな…。こんなパーティピープルじゃ全然なかったけれど、20歳前後位の全然大人になりきれていない感じは覚えがある。」

ロッキングチェアーにどっかり腰を沈めながら。ゆっくりゆっくり椅子を漕ぐ当方。

 

作中ミキが語っていたように、チワワちゃんは『私たちの自爆テロ(言い回しうろ覚え)』だった。若くて、まだ何者にでもなれる私たち。でもそのリミットは近づいている。そんな時に現れたチワワちゃん。「今しかできない事をやろう!」「楽しい事を皆で!」チワワちゃんの破天荒な行動力は魅力的で。皆どっぷり酔いしれたけれど。けれどそれは大爆発のトリガーを力強く押してしまった。(物語の後半。まさに911テロを連想してしまうシーンがありましたね)

 

チワワちゃんがミキに言った「今が最高で、もっと遊びたいな~と思っている瞬間から、人の心は離れていくの(言い回しうろ覚え)」。一見おバカで尻軽で無神経。可愛いだけが取り柄に見えたチワワちゃんこそが、誰よりも現実が見えていて。けれどそこから目を背けたくて、一連の行動を取っていたという可能性。

 

仲間に乗せられて始めたSNSが一気に火がついて。世間からも注目されて。モデルの仕事なんかも舞い込んで。すっかり有名になったけれど。前ほどにはグループで集まらなくなった。

 

「お前だってわかってるんだろう。皆が上辺で付き合ってくれてるって。お前は10年後、20年後どうなってんの。愛されてんの。」終盤。モデル撮影で撮ってもらっているチワワちゃんに、グイグイと辛辣な言葉を畳みかけた、年上のカメラマン、サカタ(浅野忠信)。

 

「追い込まれてるなあ~。」ゆらゆらさせる当方。

 

「そんな刹那的にならなくたっていいのに。皆から愛されなくたっていいのに。」

 

ヨシダくん。男前で手癖が悪くてだらしなくて。けれど。想像以上に実はチワワちゃんを好きだった。(余談ですが。成田凌を見ているとどうしても『20代前半の窪塚洋介はもっと凄かった』と連想してしまう。クラスの女子全員が彼を好き、そんな総攻め無双。天性のプレイボーイ。)切ない。

 

「ヨシダよ。これを教訓にと言ってはアレやけれど。人って本当にどうなるか分からんねんから。きちんと気持ちはマメに伝えなあかんよ。」

 

「チワワちゃんよ。皆から愛されて。楽しくて。そんなめくるめく毎日だったら面白いけれどさあ。日々ってもっと地味でやりたくもないルーティンワークの積み重ねの部分が一杯あるの。そういうの本当にうんざりするけれど。でも歳を取った今、改めて積み上げた物を見てみたら…あながちしんどいばかりじゃなかったと思う。」

 

って。そんなつまらない説教をしてしまいそうになりますが。

 

その時を生きている若者からしたら「うるせえ!」っていう話で。「私たちの事を何も知らない癖に、勝手に薄っぺらいとか言うんじゃないよ!」「繋がりは嘘じゃない!」

結局自分たちで体験して、傷ついて、次の世代に若さを明け渡していくんだからな。溜息。

 

ただ。『その時を生きている』という切り取られた若さから、二度と出る事が出来い。次に進めなくなった。チワワちゃんだけが。

 

この作品はキャラクターと役者さんも非常にマッチしていて。

狂言回しのミキこと門脇麦の流石な演技。あかんたれヨシダくんの成田凌。その他メンバー。けれど、何よりこの作品にリアリティーを持たせたのは、チワワちゃん役の吉田志織。

さとう珠緒の顔とキャラクターってやっぱり可愛いんやなあ~」と思ってしまった…もう『リアルチワワちゃん』そのもの。

可愛くてビッチ。どんどん墜ちていくのにそれでも下品にはならない。これは凄い。

最も重要なチワワちゃんがしっかりイメージ通り。これが『岡崎京子漫画の映画化成功』勝算の最強の鍵。

 

最後。チワワちゃんへのメッセージと花を手向ける仲間達の姿に胸を熱くしながら…。

「すみません。やっぱりどうしても納得出来ないんですが。」ロッキングチェアーの動きをギッと止める老体当方。

 

「20歳前後の看護学生さんって。あんな暇ないよ。」

正直チワワちゃんの正体が20歳看護学生であったことに冒頭からひっかり続けた当方。クラブに通い詰めるチワワちゃんもモデル活動をするチワワちゃんもその後墜ちていくチワワちゃんも全て看護学生身分との併用は不可能。(大学生でも厳しくないですか?)

「その他は大体飲み込めた。でもその設定だけは無理やろう。キャラクター設定に関係なさそうやし、省けば良かったのにいいいい~。」

 

再びロッキングチェアーを漕ぎ始めた老体当方の収拾がつかないので。

ここいらで終わらせて頂こうと思います。