映画部活動報告「バーバラと心の巨人」
「バーバラと心の巨人」観ました。
アンダース・ウォルター監督作品。原題『I kill Giants』。ジョー・ケリーの同名小説の映画化。作者が脚本に参加。
主人公バーバラ。ウサギ耳と眼鏡がトレードマーク。けれどそのキュートなファッションとは裏腹に、変わり者でとっつきにくい彼女。
「いつか巨人がこの町を破壊しにやって来る」と、来るべきXデーに向けて研究と対策を講じる日々。当然友達もおらず。
ある日。一人で巨人対策の罠を確認している所をイギリスからやって来た転校生、ソフィアに声を掛けられる。つれない態度を取るバーバラなのに、くっ付いてくるソフィア。
ソフィアに巨人の話をするバーバラ。そして二人は親友になるが。
当方の疑問。「『怪獣はささやく』しかり『ルイの9番目の人生』しかり。海外の精神的に追い詰められた少年少女は怪獣とか化け物とか巨人とかを見るもんなんやろうか??」
あんまり日本でこういう話は聞かない。
そして。当方も御多分に漏れず思ったのは「邦題のネタバレ感」。そりゃあ『心の巨人』ですけれど。一応「まさかの~本当に進撃の巨人‼」という余地を残しても良かったと思いますよ。(もしそういう話だったとしたら神映画になりますがね)
なので。自分の中にある恐怖。受け入れられない現実。けれど時は有限では無い。いつかは必ず現実に飲み込まれる。そんな日が来る。渦巻く混乱した感情を『巨人襲来』に置き換えているのだと。そういう話だろうなという先入観で観ていました。
ならば。一体バーバラにとって何が『受け入れられない現実』なのか。
最後の最後、勿論明かされるんですが。
正直「それぇ~?」となってしまった当方。いや…分からなくは無いけれど…だとしたらバーバラちょっと幼すぎる。
(ネタバレしないようにすると、ふんわりするしかない。もどかしい。)
バーバラちょうど成長期。大人になっていく体に心が付いて行かない。子供でいたい。そして複雑な家庭環境の中でどう甘えたらいいのか、そもそもどうすれば自分の思いを伝えられるのか分からなくて。募り募ったフラストレーション。それが巨人となって…とかいう話じゃない。これは、たけくらべ案件ではない。(『たけくらべ』だってそういう話じゃ無いですけれど。)
「町に巨人がやって来る」そう騒いで。クラスでもはみ出し者、けれど構わない。いじめっ子に絡まれるけれど、やられたらやり返す。情緒不安定で。仲良しだと思っていたら直ぐ突き放してくる。結構暴力的。
「もうそんな奴、放っとけば良いのに。」そう思うけれど。スクールカウンセラーのモルもソフィアもバーバラを見放さない。何故?
スクールカウンセラーモルに関しては「まあ…ぶっちゃけた話お仕事やしな」とも思いますが。ソフィアに関しては何故?何故そんなにバーバラに尽くす?
人間関係にギブアンドテイクは無い。「私がこれだけの事をやったんだから貴方も返してよ。」は無い。そうは思いますが…にしてもソフィアとバーバラの関係性、ウエイトがおかしい。
(なので。最後の種明かしでソフィアが「だってバーバラは~!」と言った時。当方の脳裏に浮かんだのは『同情』の二文字でした。)
「と言うかねえ!この話の中で一番辛かったのはお姉ちゃんやぞ!」
姉カレン。銀行勤めで出世も見込めそうなのに。今は仕事を休みながら実家で歳の離れた妹弟の面倒を見ている。弟はゲームに夢中。妹はあちこちで問題ばかり起こしてくる。顔を合わせれば喧嘩。家事を誰も手伝わない。ご飯を作っても文句ばかり。挙句ぐちゃぐちゃにされ、食べない。しかもしょっちゅう職場からは嫌味な電話が掛かってくる。
第一子の立場である当方の目に涙。これはひどい。しかもこの一家がどういう状態だったのかが明らかになった時。全当方がカレンに再度涙。
(余談ですが。当方の妹は『となりのトトロ』がテレビ放映される度「最後の辺りで泣くよ~」と言うのですが。完全にさつきちゃん(第一子)視点で観てしまう当方からしたら「メイの奴。我儘が過ぎるやろう」「メイを見つけた時、当方なら殴るかもしれん。だって村人総出で池までさらってくれてるんやぞ」等々。泣くどころか、苛々して冷静に観ておれません)
そして。弟に対してバーバラが「ゲームばっかりして。」と馬鹿にしてプレイ中のゲーム機の電源を切る(!!)シーンが初めの方にあったんですが。
「いやいやいや。アンタのその巨人のビジュアルとか。それに対する武器とか。設定とか。ゲーム由来プンプンやぞ!」突っ込む当方。「もうついでに言うけどな!それ、そのビジュアル!女の子が思い付くタイプの巨人じゃないから!」
本当にやってきたXデー。巨人と対峙する時が来た。けれどそれがどうバーバラの現実にリンクしたのか…。
「時が有限では無い。ましてお別れがはっきり近づいているのなら尚更。そういう態度を取っていた事は後悔に繋がるよ。」
抗えない現実。それを受け入れて。やっと恐怖の向こうにあったものに向き合えたバーバラ。(バーバラの年齢を考えると幼いなあと思ってしまいますが)
「取りあえず神様。カレンを。お姉ちゃんを…。」涙声の当方。
協力者が皆無だった状況で。気丈に振舞って。しっかり下の子達の面倒も見ていた。何だか理解が得られない上司と職場な予感もするけれど。
「お姉ちゃんが幸せになりますように。」
正直バーバラよりカレンの。これらからのご多幸をお祈りしたい当方です。