ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「クワイエット・プレイス」

クワイエット・プレイス」観ました。
f:id:watanabeseijin:20181016075852j:image

「音を立てたら、即死。」

 

訳の分からない奴らに平穏を乗っ取られた世界。新たな世界開始から約80日。そこから物語は始まる。

とある一家。夫、妻。子供三人。変わり果てた世界を何とかサバイバルしていたのに。思いがけない失態から末っ子を奴らに殺された。そしてまた一年後。

 

「シンプル・イズ・ベスト」

 

単純な設定であるが故に勝つ作品がある。

直近で思い出すのはやはり、「それはゆっくり。けれど確実に殺しに来る。」「回避するにはセックスするしかない。」「セックスしたら相手に被害者の役回りが感染する。」という『イット・フォローズ』。

この作品もその類。「なんだかよく分からない生命体に捕食される人類。」「相手方が圧倒的有利。」「奴らはほぼ盲目で。けれど聴力が著しく発達しており、それで獲物を発見する。」「音を立てたら終わり。」そのトントン拍子のレギュレーションが観ている者に直ぐ様入ってくる。

 

冒頭。ゴーストタウンと化した街から音のなるおもちゃを持ち出してしまった末っ子(未就学児童)。抜いたはずの電池を入れ、スイッチを入れてしまった事によって奴らに捕食されてしまった悲劇。その一部始終を目の当たりにした事で、観ている側もどういう世界観なのか理解。

 

「さあ一体どうやってこの一家は奴らから逃げられるのか。そして奴らと対峙できるのか?」そう構える訳ですが。

 

まあ…結構ツッコミ所はあるんですね。

 

まず最大の案件。もうこの作品を観た全ての人が口にだしたであろう発言。「何でこの有事に妊娠?」

愛のあるセックスの末妊娠。ましてや夫婦。全然おかしくないんですが。ですが。やっぱりこの「音を立てたら」のレギュレーション世界で赤ちゃんは厳しすぎる。あの末っ子の悲劇があったのに。大人なら。そして子供でも意思疎通の取れて言う事がきける相手なら。「音を立てるな」は伝わる。けれど。赤ちゃんは無理。

「声を出すんじゃないぞ。」プレイですか?末っ子を失った悲しみから寄り添う二人…分かるけれどさあ。ちょっとご両親よ…。

(身も蓋も無い言い方をすると『無音であるべき世界での出産シーン』を撮りたい故であるという事は分かっていますよ。)

まあ、昨今の『子育て支援不足故云々』以上の不安な世界。出生率ダダ下がりの中で妊娠、出産するって相当の覚悟が要ったでしょうけれど。そしてあの妻、専業主婦として描かれていましたが一体元々は何者?医療従事者?背後の棚に注射シリンジとか並んでいましたし。酸素ボンベは何処から調達した?経産婦の知恵?そんな…。

 

「意外と音を出してもOK」

奴らは一体何処に普段潜んでいるのか。「この辺りには三体居る様だ」なんて言ってましたが。あんなだだっ広い荒野で。終始風は吹き草を仰ぎ、轟々と鳴る滝もある。奴らだって、普段屋外待機やったら家の中で立てた音なんて聞こえない気がするのに。郊外ベットタウンの真夜中の方がよっぽどシンと静まり返っているから音は響くのに。なのに奴らはちょっとした生活音で直ぐにすっ飛んでくる。けれど。

そうかと思うと「大きな音の傍では大丈夫だ。」

滝の直ぐ傍なら大声を出しても大丈夫。赤ん坊が大泣きしようが、結構な水の音にはかき消される。注目の出産シーンだって、何だかいつの間にか終わっていた。

こうなったらもう『奴らは人類の立てる、吐息以上の物音には必ず反応する。』位の厳しいラインを引いていたら。なのに結構そのボーダーはあやふや。

 

「家族間コミュニケーション」

夫婦は繋がっている。何だかんだラブラブ。なのに。どうも父親が子供達と上手くいってない。

長女。聴覚障害があり無音の世界に住む。(実際に聴覚障害のある少女を配役したという妙)聡明で、行動力と決断力を備える彼女だけれど。冒頭の末っ子の悲劇。件のおもちゃを弟に渡してしまった引け目。そのことから父親から避けられている、愛されていないと感じている長女。

臆病な長男。狩りに行こうと父親に誘われても、出来れば行きたくないとゴネ。物語が盛り上がる中も「そんな音を立てて走るな!」「騒ぐな!」と観ている側をハラハラさせて。

 

「あのさあ。普段以上に『明日はどうなっているか分からん世界』やんか。気持ちこじらせていないで、言いたいことはちゃんと相手と話し合いな。後悔先に立たんよ。」

渋い顔をして呟く当方。

 

父親が長女を愛していないはずがない。狩りに長男を誘うのは「男として家族を守っていく事。」を教えたかったからで…って、分かるけれど…言わんと伝わらんよ。

 

そして聴覚障害がある長女に補聴器を作り続ける父親。でもそれは長女にフィットする完成度では無く…苛立ち、父親に突き返す長女。

「補聴器をハンドメイド⁈あの母親といい。この父親は何者なんですか?エンジニア?そういや家の内外のあれこれも作っていたし、秘密基地みたいな通信基地も作っていたし。」

しかもただ耳に引っ掛けるだけじゃない。何やらハイスペックな補聴器を作成。でも…元々音が無い世界に住んで、そこに違和感がない、しかも子供に補聴器って。そして父親作補聴器、多分パワーが強過ぎるんですよ。これは確かに辛そう。

 

まあ。結局「いやいやいや。もっと上手いやり方あったやろうし、アンタたちの報連相の仕方によっては誰も傷付かなかったと思うぞ!」という悲しい顛末を以って、親子愛は完結。

 

「奴らの弱点と長女」

「ああ。こういう弱点できたか。」「聴覚障害という設定が生きてきた。」そう思う反面「まだ人類が沢山居た時に、誰かかしこい人が気づきそうなのに。だって年寄りはこのアイテム所持率高いぞ。」そう思う当方。そして長女よ。あんた聡明な設定じゃなかったの。一度や二度では無く起きたその現象、点と線で繋がらなかったの。

 

なんて。散々ツッコんでしまいましたが。基本的には「来~る。きっと来るゥ~。きっと来るゥ~」なので。終始ドキドキして鑑賞した当方。

御多分に漏れず。当方も「隣のカップルの男よ!たかだか90分台の作品で途中でトイレに立つ位ならそんなでっかいドリンク買うなよ!あとバケツサイズのホップコーンも煩い!そして暗いのを良い事にいちゃつくな!お前らは直ぐ様捕食されろ!万死に値する!」なんて憤ったりもしましたが。

 

後。最後に一つ。「お母さん。その釘は今日中に危なくないように処理しときな。じゃないといつか誰かが破傷風で死ぬで。」抗生剤が無い、大した栄養も摂取出来なさそうな世界で。奴ら以外の要因で死に至る訳にはいかんやろうと思うと。心配です。