映画部活動報告「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」
「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」観ました。
タイ。小学生の時からずっと成績オールA。これまで数多の天才子供コンテストを総なめしてきた、女子高生リン。
父親が教鞭を取る高校に在籍していたけれど。「留学の機会もあるから」と進学校に特待奨学生として転入。そこで知り合ったクラスメイトのグレース。
「夢は女優」確かに顔は可愛いけれど。頭は空っぽ。そんな親友グレースを救うため、ついテストでカンニングさせてしまったリン。これはリンとグレースだけの秘密のはずだったのに…。
グレースの彼氏、パット。お金持ちだけれど…似た者カップル、おバカなパット。グレースのカンニングを知って。パットがリンに持ち掛ける。
「カンニングさせてくれたら大金を支払う奴は沢山居る。」「これは親たちが学校に払っている賄賂と同じだ。」「特待生?リンの親だって、学校に賄賂を払っているんだぜ。」
「これはビジネスだ。」
割と直ぐ気持ちを切り替えるリン。これはビジネス。そうして高度な手口を使ってカンニングビジネスを開始するリン。瞬く間に噂になり、群がる同級生達。
リンと同じく特待生として学んでいたバンク。母親と二人暮らし。貧しい洗濯屋の息子として苦労を重ねてきた生真面目な彼は、学校で横行する集団カンニングを知って妨害。
そうしてリンと仲間達のビジネスは一旦とん挫した。そしてフェードアウトするはずだった…のに。
アメリカの大学に留学する為、世界各国で行われる大学統一入試『STIC』。
そこを舞台にリンに再びカンニングを持ち掛けてきた、グレース&パットのバカップル。そして懲りずに乗っかるリン。
けれど。この難関には流石のリンも一人では太刀打ちできない。
そこでバンクを仲間に引き入れようとするが。
「この作品は中国で実際に起きた集団不正入試事件を基に作られた。」「高校生版『オーシャンズ11』だ。」「カンニングをテーマに作られた、スタイリッシュかつスリリングな作品。」
「カンニング・エンターテイメント映画…カンニング大作戦ですか。」
(正確には『That's カンニング!史上最大の作戦?』/主演:安室奈美恵 山口達也他 1996年製作)
1990年代のあれこれ。最近引退した安室奈美恵にとって恐らく消したい黒歴史。皆様にとっては恰好良い安室ちゃんで居れば良い…ですが当方はこういうの、キッチリ覚えて居ますよ。『ポンキッキーズ』のウサギちゃんだって、『スーパーモンキーズ』時代だって。
閑話休題。早くも完全に話がズレましたので。軌道修正しますが。
「カンニングって。そうやって下駄履かせて上の学校や社会に行ったって、結局は自分に跳ね返ってくるやん。実力伴っていないんやから。」「と言うか罪悪感は?」
そういう倫理観は取りあえず棚に上げといて。「だってしょうがないじゃない。馬鹿なんだから。」「なのに下手に金持ちの家に生まれたからさ。親に期待されちゃうの。」
努力を金で買うボンクラ達。そしてそこに乗っかってしまう、哀しきリン。高校で唯一出来た親友の頼みだし。そしてお金にも目がくらんでしまう。
そして。どこかゲーム性も感じてワクワクしてしまう…所詮は高校生。
『リン先生のピアノ教室』。テストの回答はマークシート方式。選択肢は四つ。四曲のピアノ演奏の指の動きに準じて回答を表すと。
「それ。難しいな…。」
グレースに初めてカンニングさせた時。手段は『消しゴムに答えを書いて渡す』と至極単純だった。けれど。金を取って、一斉にカンニングさせる時。リン先生の手段は何段も高度なモノにグレードアップした。
テスト中に離れた席に座るクラスメイトの指の動きを見る?視力に難がある(眼鏡)当方はまず見えない。(当方は名前の性質上、テストでは教室の中でも最後列の角に座席を置かれる事が大半だった)それならまだリズムを聞く方がまし…。ただ。監督教師だってテスト中盤からやたらリズム取る生徒が居たらマークすると思うけれど。
口では強気。けれど。実際のテストでは緊張が隠せないリンと仲間達。(結構毎回スリリングに仕上げていました)いつだって汗だく。けれど結局はリンは金持ちのボンクラ達を救ってきた。自身の信用を失ってまで。
中盤。バンクの告発に依って、学校と父親に同級生にカンニングをさせていた事がバレて。期待の特待生から『留学資格失格』まで降格したリン。
しかも学校から留学生を出せる枠は一つしかなく。最も近い所に居るのはバンクのみとなった。
「曲がった~事が~大嫌い」(この原田泰造ネタは一体どこまでの方が分かるのか)そんなバンク。「何がカンニングだ」そう眉をしかめていた彼が。どうやったら終盤のSTICカンニングチームに加入してしまうのか。まあ…ネタバレしませんが。
「おいおいおい。リンよ。一回懲りたんじゃなかったの。」
学校と父親にばれて足を洗ったはずなのに。結局は博打打ちな性分なのか(お話も進みませんしね)結構ノリノリでSTICカンニングプランを立案するリン。
「はああ~。金持ちが金に糸目を付けなかったらこんな事が出来るのか~。」そんな町工場と合体した、さながらS町ロケット作戦。
『クライマックスは28分に及ぶ手に汗握るカンニング・シーン!』
確かに半端ない緊張感でしたけれど。そんなにあったのか…海外でのSTIC会場、リンとバンクの終始汗だくの緊張感。(よくよく考えれば、あれ結構ずさんなで綱渡りな計画。そもそも会場でずっとぶつぶつ言って、休憩時間になった途端トイレに入りびたるって。分かりやす過ぎる)そして二人から答えが送られてくるのを今か今かとタイの工場で待ち構える、グレースとパットのバカップル。
「そこまでするくらいなら、勉強して普通に試験を受ければ良いのに。」思わずつぶやく当方、THE正論。
当方も学生の時は指折りの馬鹿でしたがね。人様の答えを写そうだなんて、そんな不埒な考えは無かったですよ。…だって、意味ないもの。
どんなに頭が良くたって。その使い道がこんな事ならば。それは無駄遣いでしかない。
勉強が出来て。学生自分なら。可能性は無限にあったのに。
「まあ。どんなにお勉強が出来たって。社会に出たら使う所、そこじゃないしな。」そう呟く、くたびれ切った中年当方。
当方の近しい教育者も言ってましたがね。「学校で最低限学ぶべき学問は今でも読み書きそろばん。人間関係や社会性やマナーを知る事が最も重要なんだ。」それは社会に出たら嫌でも学ぶだろう?そう思いますか?そういう新人が毎年春に組織をかき回していませんか?
「結局、金持ちの彼らが得たモノは何やったんやろう。」
リンやバンクに危ない橋を渡らせて。そうして得た点数。けれど彼らは『友達』を失った。リンとグレースは元々親友だった。親友だから、彼女を助けたかった。なのに。彼女達の関係性は途中から『友達』では無くなった。
そして最後。リンとバンクの導き出した答え。
「ああ。こういう決断をするのか。」
それで良かった。良かったんだとリンに言い聞かせながらも。
二人…それどころかこの四人にはもっと違う青春だってあったんだろうにと思うと、苦い気持ちで閉じた幕引きでした。