ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「7号室」

7号室」観ました。
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韓国。寂れた路地にある、潰れかけの個室DVD店。

元々店に思い入れがある訳では無い。なので店を立て直すつもりなんてさらさら無い。連日地元不動産屋に足しげく通い。この店を、自分が購入した時より少しでも良い条件で売り飛ばしたい。そしてその資金を基に別の場所で新しい商売を始めたい。そう画策する主人公の店長。そしてそのDVD店で働く学生バイト。

 

内見に来る相手に『繁盛している店』と思わせる為。新たにバイトを一人追加する店長。しかし実際には現在働いている学生バイトにすら賃金支払いを滞納している状態。

ミュージシャン志望の学生バイトは借金が膨らんで困窮しており。遂に以前やっていた麻薬の運び屋を頼ってしまい。そこで「10日程預かってくれ。そうしたらお前の借金はチャラにしてやる」と麻薬を渡されてしまう。

「あそこなら」

風水に拘る店長が「ここは風の通り道だから」と客には貸さずに神仏グッズで溢れさせている『7号室』。ここなら誰も立ち入らないと。麻薬を隠す学生バイト。

そんなある日。新人バイトが店の水漏れを掃除しようとして感電死してしまう。慌てふためく店長。しかし『事故物件は買い手がつかなくなる』と頭をふと過ってしまって。通報の手を止めてしまう。

「あそこなら」

とっさに『7号室』に死体を隠す店長。いったいどうしたものか。兎に角誰にも見られる訳にはいかない。絶対にこの部屋を開けさせる訳にはいかない。

7号室』の扉に幾つもの南京錠を付け。外から釘を打ち込んで。そうやって『7号室』を封鎖しようとする店長と、何とか『7号室』をこじ開けて麻薬を取り戻したい学生バイト。

お互い決してその訳は言えない。そんな二人の『7号室』を巡る攻防戦は~。

 

「おっとこのチラシと予告編、かなりネタバレしてるやんか。」

 

それでも観たい。面白そう。そう思って。観に行ってきました。

 

学生バイトを演じた、D.O.。『韓国の次世代グループアイドルEXO』なんですね。そういった事情は全く存じ上げませんでしたが。きゃっきゃしたおばちゃん集団の姿を見て「あ。これアイドル案件やな。」映画館でピンときた当方。

彼についてですか?「独特な髪型をしてらっさる。」そう思ったくらいですか。

 

寧ろ当方の映画館に向かう背中を後押ししたのは、店長役のシン・ハギュン。

『悪女 AKUJO』の。ある時には東山紀之にもなだぎ武にも見える、不思議なイケメン実力派俳優。その彼のコミカル演技目当て。

 

まあでも。主要二人の掛け合い。わちゃわちゃしながら結局はタッグを組んで行動を共にしてく~という下りが、定番ながら楽しく観られる作品でした。

 

「にしても『貧乏』というのはあかんな…。」

 

しんみりする作風ではない気がしますし、社会派と言うほど真剣なメッセージも感じませんでしたが。兎に角『金さえあれば』の哀しさ満載。

 

真面目な学生。ミュージシャンの夢だって捨てきれない。けれど。現実は借金まみれ。

バイトをしながら細々と生活と借金返済をしていきたいのに。バイト先の店は給料を払わない。仕方なく犯罪組織に身を落とす。哀しい。

 

対する店長だって根っからの悪人じゃない。バイトに給料だって払ってやりたい…払えるものならば。

どこにそんな金がある?客だって殆ど来ない。売上なんてたかが知れてる。それならばいっそこの店を売り飛ばして。その金で新しく仕切り直したい。どこか新しい場所で。

そうやって自身の現状をリセットする事に躍起な店長の最悪な判断。

(ところで。『日本の個室DVD店事情』だって当方は全く知りませんが。韓国の店って、店側がフロントデッキから室内にDVDを流すんですね?個室内にテレビとデッキがあって、客が自由に操作出来るものだと思っていました。そしてカップル御用達なんですね)

 

「誰よりも可哀想なのは新人バイトだ。間違いない。」

 

韓国に於ける、朝鮮族だの中国人だのの人種認識は一体どうなっているのか。(とてつもない地雷を踏みそうなんでここではスルーしますが。)「お前、不法滞在じゃないよな。」そんな事まで聞かれていた新人バイト。少し言葉はたどたどしくても。笑顔やし、良い奴っぽいし。なのに…なんだこの扱い。

 

コメディ映画なんやからこれで正解ですが。新人バイトのこれからの人生を思うと『厄介な死体』としてぞんざいに扱われる彼の不憫さよ。(一応最後の最後にそこに触れたりしますが…って触れないのかと思っていたからホッとしましたよ)

 

7号室』を巡る店長と学生バイトの攻防。背景に横たわる、貧しさゆえの哀しさ。とっとと店を売ってしまいたい店長と内見にやって来る客。そして明らかに怪しい『7号室』のビジュアルに目を付けた警察当局。学生を脅してくる犯罪組織。

全てが渦巻いて。一体どういう落としどころを見せるのか。

 

「若干もたついた印象もあったけれど。綺麗に落ちたんじゃないですか。」呟く当方。(何様だ)

 

この作品の中で。当方が一番溜息を付いた瞬間。

学生バイト「店長は何故この店をしようと思ったんですか?」

店長「何て言うか。金になるっていう話を聞いたから云々。」(言い回しうろ覚え)

 

「映画やDVD作品が好きやから、じゃないんや…。」

 

今回の騒動を経て。一体あの学生バイトと店長がどういう人生を選択して歩んで行くのかは分かりませんが。

 

彼らが今後好きな事を大切に出来たら良いな。彼らがその時している事を好きになれたら良いなと。

何故だかそう思ってしまいました。