ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「レディ・バード」

レディ・バード」観ました。
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「これは…最近で言うと『スウィート17モンスター』や『勝手に震えてろ』等のこじらせ女子がもがく…。『げに恐ろしき自意識の壁よ!』映画」

 

watanabeseijin.hatenablog.com

 

2002年。カリフォルニア州サクラメント。片田舎のカトリック系高校に通う女子高生クリスティン。父母兄との四人暮らし。

クリスティンという名前があるけれど。自称『レディー・バード』(テントウムシ)。髪をピンクに染めて。

両親は荒れた学校を恐れて、育ちの良い子供が集まるカトリック系の高校にクリスティンをやった。けれどその学校はつまらなくて。

早くこんな所から飛び出したい。もっと大都会に出たい。NYの大学に行って華やかな世界を見たい。兎に角サクラメントでさえなければどこでも。

なのに。母親はクリスティンのNY大学進学に反対。「地元にもいい大学がある。」「うちにはそんなお金は無い。」

クリスティン家の暗い経済状況。病院勤務の母親は安定しているけれど、父親は低空飛行。遂には会社をクビになってしまった。兄もなかなか就職出来ない。母親は何かとクリスティンに「貴方の学校の学費が高い」と言ってきて。

 

「中々の閉塞感に包まれた主人公。クリスティン。」

 

「あの頃は良かった。」「何も考えていなかったあの頃に戻りたい。」くたびれ切った中年は時々、えてしてそう中高生、果ては大学生を指して言いますが。

「あの頃何も考えていなかったなんて事は無いし、それなりに閉塞感もあった。決して自由ではなかった。むしろ自身でお金を稼いでいる今の方が自由な部分もある。」同じくくたびれた中年の当方は静かに反論。

「ただ。責任だけは無かったな。」そう思いますが。

 

どうして学生時代がずっと続くような気がしたのだろうかと振り返る当方。

だって、高校生なんて三年で終わるのに。なのにひどくつまらない、単調な日々の様に思えた。あの頃は。

けれど何故か今『あの頃』を思い出すと、そうやってつまらないと斜に構えて痛々しかった自身が、何だか悶えを越えて終いには愛おしくなってしまう。

 

この作品のクリスティンを通して自身を見ている様で。なかなか心のやらかい所を締め付けられました。

 

まあでも。何だかんだ高校生活を満喫しているクリスティン。気の合う親友といつも一緒に行動。
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親友に誘われて行内のイベントで上演される劇のオーディションに参加。無事通過したクリスティンはそこで同級生のダニーと恋に落ちる。(後に悲しくも破局

その後、ちょっと毛色の違う女子とつるみ始め。その頃バイト先のカフェで同級生カイルを見掛け、後に交際に発展。

一年の間で二人を好きになって、付き合ってって、結構充実した恋愛生活。

まあ、当方的にダニーは好印象でしたけれど。カイルの奴…。「薄っぺらいなあ~。」THE少女脳が恋する男子。女性作家が一人称で書く少年…の小説みたいなやつ。「やれやれ。女の子って奴は。」「彼女とかいう関係は互いを束縛するから嫌なんだ。」

一見浮ついていなくて、皆が騒いでいる時も一人小説とか読んで。ケミカルなモノや安物を馬鹿にして。なのにその実態は薄っぺらい。ただのヤリチン(下品)。

震える…またそんなカイルをティモシー・シャレメって!!ベストアンサー。ぴったりでしたよ。(ややこしい言い方ですが褒めています。)

 

クリスティンの周りの大人達が皆良かった。学校の先生、シスターもジョークが効いていて寛大。高校生を決して下に見ていない、対等な感じ。

NYの大学に行きたいというクリスティンをそっと後押しした父親、ラリー。

そして何よりクリスティンの母親。マリオン。

 

「ママは私が嫌いなのよ。」時に母と娘はぶつかるけれど。母親が娘を嫌いなはずがない。そして娘だってその事は承知。

兎に角娘には幸せになって欲しい。だから学費が高かろうと安全そうな学校に入れた。トリッキーな性格やだらしない所に苛々するし、どうにかしてまともに育って欲しいと、ついやいやい言ってしまう。

どうしてサクラメントが嫌なの?良い場所じゃないの。何故そんな大都会に憧れるの?どうしてここから出ていきたいの?

 

「でもねえ。出ていきたいのならば、一回出て行かせるしかないんですよ。それから本人がどう判断するかという話で。」「彼女には彼女の人生を選択する権利がありますから」(何様だ。)

 

けれど。当然常にぶつかり合っている訳じゃ無い。一緒にパーティの洋服を選びに行って。そして「セックスっていつからして良いと思う?」なんて母親に聞いたりもする。(これ、当方なら絶対話題にもしない案件ですよ)

 

そしてクリスティンが旅立つ日。
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つまらない片田舎。貧乏な家庭。閉塞的な学校。唯一無二だけれど。ずっと一緒に居れる訳では無いと分かっていた親友。煩い母親。

 

なのに。一人になった時。クリスティンの心のオセロがひっくり返されていく。

馬鹿にしていたはずなのに。一人教会に入って泣くクリスティン。煩くて…でも全力で愛されていたと感じた時、クリスティンが両親にした電話。全当方が大粒の涙。

 

痛々しくて。なのに愛おしい。これはクリスティンを通じて自身に繋がる物語でした。